著者
南野 佳代
出版者
日本法社会学会
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.77, pp.107-133, 2012 (Released:2021-04-19)

This paper tries to explore how we can cope with Japanese Judiciary, for the fair administration of justice, to learn from the experiences of U.S., Canada, and Australia in perceiving, sharing awareness of, and trying to eliminate gender bias in the courts. First it goes through the efforts of Japanese Federation of Bar Associations to improve the gender bias in the courts. Second it takes up the NGO, first to develop programs for judicial education on gender, established by NOWLDEF, NJEP’s achievement in cooperation with the courts, to find and eliminate gender bias in the courts and legal profession in U.S. Then it moves onto Canadian movement to institutionalize judicial education concerning gender for the judges, which were led by feminist lawyers, scholars, and judges. Canada’s NJI and its educational programs for fair administration of justice known as “social context” of is now one of the leading judicial education models. Lastly, it looks to Australian judicial education and bench book as assisting system for the judges with gender fairness in administering justice. Referring to the Australian bench book on “the Equality before the Law: section7 Women,” it reviews gender bias in a recent Japanese employment discrimination case. In conclusion, it points out the conditions shared in three countries to consider viability in the Japanese context.
著者
澤 敬子 南野 佳代 江口 聡 岡野 八代 藤本 亮 渡辺 千原 中山 竜一
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、日本のロースクールにおけるジェンダー法学教育のあり方を模索する基本資料として、アメリカロースクールの著名なジェンダー法学教育担当者に対し、ジェンダー法学がロースクールで教えられるようになるまでの軌跡、現在の教育においての課題等をインタビュー調査することにある。主たる調査結果は、「ジェンダーの視点を法学教育に生かすための諸課題-米国フェミニズム法学教育者インタビュー調査から」(『現代社会研究』8号、pp.49-66、2005)で発表し、本科研報告書においても、この研究をもとに、日本における課題を検討している。調査により、アメリカにおいてジェンダー法学教育は、現在、ロースクールにおいてほぼ制度化され、特化されたジェンダー科目として、および/または実定法学の授業での論点として教えられていることが明らかになった。調査における注目点として、ジェンダー科目を最も習得するべきである学生が、ジェンダー科目が選択科目である限り履修しないこと、特化されたジェンダー科目と実定法学での論点として教える二方法のバランス、学生の多様なニーズにどのように答えて授業を行なうか、教育担当者のエンパワメントや研究推進など横の連携の方法などであった。本研究では、これら課題に対する米教育者らの対応についても調査している。とりわけ、教え方のバランスと選択履修の問題は、日本のロースクール教育においても既に重要な論点であり、米国での取り組みは、ロースクール授業に限らない「大学におけるジェンダー法教育」全般を視野に入れた教育としての取り組みの必要性を示唆している。
著者
澤 敬子 手嶋 昭子 藤本 亮 TEJIMA Akiko 藤本 亮 FUJIMOTO Akira 南野 佳代 MINAMINO Kayo 三輪 敦子 MIWA Atsuko
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.131-150, 2004-11

本稿は、科学研究費補助金基盤研究(C)( 1 )「ジェンダー法学のアカウンタビリティー ―アメリカの先駆者たちに見るその軌跡―」の2003年度の成果の一部であり、現実の法実施状況のなかで、ジェンダーをめぐる理念、法理論、問題設定などが持ちうる具体的な射程、可能性、問題性について、法社会学研究者を中心とした研究者らが各人の研究領域に引き寄せて検討し確認するための予備的研究である。第Ⅰ章は、女性の地位の向上やジェンダー平等に向けた取り組みのなかで、条約が大きな役割を果たしている状況を概観する。第Ⅱ章は、日本における強姦罪の問題点のうち、被害者の「抵抗」の問題を取り上げ、日米を比較しつつ検討する。第Ⅲ章は、労働規制法が暗黙に想定する労働者像を明らかにしたうえで、「人たるに値する生活」の現代的意義の考察の基礎づけを行う。第Ⅳ章は、アファーマティヴ・アクションが持つ一側面を米国大学スポーツのあり方を手がかりに検討する。
著者
江口 聡 澤 敬子 藤本 亮 SAWA Keiko 藤本 亮 FUJIMOTO Akira 南野 佳代 MINAMINO Kayo 望月 清世 MOCHIZUKI Sawayo
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-114, 2004-01

科学研究費補助金基盤研究(C)(2)「ジェンダー理論の法学教育への統合的モデル構築にむけた現状と課題の実践的研究」の2002年度研究経過報告である本稿は、米国フェミニズム法学のケースブックに基づき、以下の分野を扱う。第1章は、マイノリティの観点である批判的人種フェミニズムからの法学およびフェミニズム法学への批判と貢献を検討し、第2章はアファーマティヴ・アクション導入以来の批判派対擁護派の論争を整理し、平等概念、能力主義基準自体の歴史性を指摘する。第3章は、ポルノグラフィにかんして自由論者と規制論者の論点と、ポルノ規制条例にかんする判決を取り上げる。第4章は、なぜ法と女性とのかかわりにおいて「親密な関係」を統制する法が重視されるのか、婚姻関係内部の権力関係と婚姻可能性の権力性を検討し、第5章は、他者のケアを引き受ける者が置かれがちな経済的依存状態について、平等の観点から、ありうべき社会保障モデルを検討する。