著者
松元 美里 古賀 夕貴 樋口 汰樹 松本 英顕 西牟田 昂 龍田 典子 上野 大介
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.319-322, 2020-09-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
5
被引用文献数
5 3

近年,残香性を高めることを目的としたマイクロカプセル化香料の使用が一般化している.本研究ではハウスダストから甘いにおいを感じることに着目し,におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)を利用した“におい物質”の検索を試みた.分析の結果,ハウスダストと柔軟剤から共通したにおい物質が検出され,香料がマイクロカプセル化されたことでハウスダストに比較的長期間残留する可能性が示された.
著者
松元 美里 野牧 秀隆 川口 慎介 古賀 夕貴 樋口 汰樹 松本 英顕 西牟田 昂 龍田 典子 上野 大介
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.94-99, 2020 (Released:2020-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
2 5

The usage of synthetic fragrances which contained in pharmaceuticals and personal care products (PPCPs) have been increasing in Japan, and environmental discharge of those chemicals have also been increasing. This study tried to detect odor compounds in sediment core samples collected from 1,400 and 9,200 m water depths, in Sagami Bay and Izu-Bonin Trench, Japan. Odor activities in sediment core samples were detected by Gas Chromatography-Olfactometry (GC-O) which detects odor chemicals using human olfaction. It is the first report which analyzed the odor activities in deep-sea sediments. By comparing odor activities found in deeper and surface core samples, six odor compounds were tentatively defined as anthropogenic source. It is required to conduct the novel research topic of "environmental risk assessment for odor compounds". The GC-O could be useful technique to find the emerging chemicals on the research fields of environmental chemistry.
著者
小山 玲音 出村 幹英 野間 誠司 林 信行 原口 智和 宮本 英揮 笹川 智史 龍田 典子 上野 大介
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.226-232, 2021-07-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
28
被引用文献数
4

気生藻類の一種であるスミレモTrentepohlia aurea (Linnaeus) Martiusは,スミレのような“におい”があることが知られている.スミレモのにおいの有無や強弱には生育地域や場所による多様性の存在が示唆されるが,これまでは定性的な観察が中心であった.本研究ではスミレモのにおい物質を同定することで,スミレモのにおいに関する基礎的な知見を提供することを目的とした.におい物質の同定には,におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)を含む“におい分析システム”を活用した.分析の結果,“良い香り”として特徴的なにおい物質であるα-テルピネンと2-ペンチルフランを同定した(2-メチル-6-ヘプテン-1-オールとβ-イオノンは仮同定).将来的にスミレモ類縁種のにおい物質をデータベース化することで,におい物質を利用した化学分類学の発展に貢献できると期待される.
著者
松元 美里 古賀 夕貴 樋口 汰樹 松本 英顕 西牟田 昂 龍田 典子 上野 大介
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.319-322, 2020
被引用文献数
3

<p>近年,残香性を高めることを目的としたマイクロカプセル化香料の使用が一般化している.本研究ではハウスダストから甘いにおいを感じることに着目し,におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)を利用した"におい物質"の検索を試みた.分析の結果,ハウスダストと柔軟剤から共通したにおい物質が検出され,香料がマイクロカプセル化されたことでハウスダストに比較的長期間残留する可能性が示された.</p>
著者
溝内 重和 市場 正良 宮島 徹 兒玉 宏樹 高椋 利幸 染谷 孝 上野 大介
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.69-79, 2014 (Released:2014-12-01)
参考文献数
30
被引用文献数
5

佐賀市内の小学校(35校70教室)を対象に,室内環境における未規制VOCsを測定した(2011~2013年)。化学分析の結果,すべての教室から未規制VOCsが検出され,検出された未規制VOCsの中では,2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H:0.75-160 μg/m3)が最も高濃度でかつ高頻度(100%)で検出された。続いて,グリコールエーテル類(GEs:nd-250 μg/m3),テキサノール類(Texanols:nd-150 μg/m3)が高濃度かつ高頻度(約80%)で検出された。高い濃度と検出率から,小学校室内環境におけるこれら物質の幅広い用途が示唆された。教室種間の濃度差を比較したところ,2E1Hはパソコン室がいくつかの教室(一般教室,理科室)より有意に高い傾向(p< 0.05)がみられたが,GEsは教室間での差は見られなかった(体育館を除く)。検出された濃度をLowest concentration of interest(LCI)と比較したところ,それらのハザードインデックス(HI)は1以下であった。一方で,本調査で得られた一部の教室における未規制VOCs濃度は,学校環境における2E1Hがアレルギー発症の報告値に近く,またGEs濃度範囲は子供を対象とした疫学調査におけるアレルギー疾患と関係が見られた濃度範囲と同程度であった。今後の小学校室内環境における未規制VOCsの濃度低減が望まれる。
著者
松本 英顕 江原 史雄 小山 玲音 笹川 智史 原口 智和 宮本 英揮 龍田 典子 上野 大介
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.233-239, 2021-07-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
23
被引用文献数
2 3

和牛(黒毛和種・繁殖雌牛)のストレス数値化技術として,皮膚ガスをマーカーとして利用する手法に着目した.本研究では基礎的検討として,皮膚ガスのサンプリング手法および分析技術の高度化に取り組んだ.サンプリング手法として,牛に特化したサンプリングデバイスを作製し,固相吸着剤を腰部に近い背部に装着させる手法を開発した.本手法で捕集された皮膚ガスをGC-MS分析に供試したが,特徴的なピークを検出することはできなかった.そこでにおい嗅ぎガスクロマトグラフ(GC-O),ガスクロマトグラフ分取システム(GC-F),およびガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて分析したところ,黒毛和種の皮膚ガスに特徴的なにおい物質として(E)-3-Octen-2-oneを同定した.本研究は大型畜産動物の皮膚ガスを同定した初めての報告である.将来的に本技術を活用して皮膚ガスとストレスの関係を検証し,パッチテストや嗅覚センサーを用いた非侵襲的なストレス数値化技術の実用化につながることが期待される.
著者
上野 大介 権藤 恭之 佐藤 眞一 増本 康平
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.71-80, 2014-02-28 (Released:2014-08-06)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

これまでの研究では,顕在記憶にポジティヴ優位性がみられることが報告されているが,潜在記憶に感情価が及ぼす影響の年齢差については明らかにされていない.本研究では感情価が顕在記憶と潜在記憶に及ぼす影響に関する年齢差を検討した.実験1では,48名の若年者群と48名の高齢者群がポジティヴ,ネガティヴ,ニュートラルの写真をニュートラル単語の直前に呈示することによって感情価を付加した単語を記銘し,その後,自由単語再生課題を受けた.実験2では,27名の若年者群と30名の高齢者群が実験1と同様の記銘後,語幹完成課題を受けた.顕在記憶では若年者群のネガティヴ条件の成績が高く,高齢者群にポジティヴ優位性が確認された.潜在記憶では両年齢群ともポジティヴ条件とネガティヴ条件の成績がニュートラル条件の成績よりも高かった.これらの結果は,ポジティヴ優位性が意図的な処理で生起していることを明らかにし,社会情動的選択性理論を支持するものであった.
著者
上野 大介
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成21年度では下記の2つの成果が得られた。1つ目の成果は、高齢者の感情が記憶の記銘と検索に及ぼす影響に関する脳機能データの収集を行った点である。これは、高齢者の感情を伴う記憶の記銘と検索の基礎メカニズムを明らかにし、本年度実施する予定であった研究の実施に寄与するものであった。具体的には、認知機能や気分調整機能を統制せずに、ネガティブとポジティブの感情が喚起される状況と感情が喚起されない状況を統制し、そこで記銘項目である文字の記銘時と検索時の脳機能をMEGによって測定した。用いた実験手続きは高齢の対象者に負担を与えるものではなく、おおむね順調に実施できた。しかしながら、本実験を一人で実施するには実施側の負担が大きかった。よって実験手続き自体は変えずに実施し、複数で実験を実施する、もしくは複数の対象者に対して同時に実験を実施するなどの改善点が得られた。2つ目の成果は、心理学評論に掲載された高齢者の記憶と感情に関する資料論文の執筆に携わることができた点である。これは研究代表者が特に従事していた研究テーマである「高齢者の記憶と感情」に関する研究を日本の研究者に紹介することができた点で意義があったと思う。そしてこの分野が主に欧米中心で実施されており、アジアにおけるこの分野の実施、さらなる分野の発展が多いに期待できると認識した。よって、高齢者の記憶と感情が日本国内でも発展するきっかけの一つにこの論文が寄与することを願う。しかしながら交付申請書の提出時に計画していた学会での発表などが実施できず、得られなかった成果もある。よって今後は柔軟に計画を立案し、見直しながら、研究を実施することも念頭に入れる必要がある。