著者
長田 圭司 伊佐 泰樹 二瓶 俊一 原山 信也 相原 啓二 蒲地 正幸
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.16-19, 2013-03-28 (Released:2013-05-02)
参考文献数
6

症例は49歳,男性。大量のインスリンを自己注射し自殺をはかり,心肺停止状態で搬送された。低血糖と判断し心肺蘇生を継続しながらただちに50%ブドウ糖液20 mlの静脈内投与を行った。その直後の大腿(動脈血)から採取した血糖値は1262 mg/dlと高値を呈していた。しかし,その5分後に採取した血糖値は33 mg/dl,さらにその4分後では305 mg/dlと短時間の間に激しく変動した。心肺蘇生時における循環時間の遅延により,ブドウ糖の血管内不均等分布を起こしたことが原因と考えられた。心肺蘇生中は,循環時間の遅延がブドウ糖投与後の血糖測定値に大きな影響を与えることを念頭に置くべきである。
著者
中村 倫太郎 二瓶 俊一 松本 泰幸 伊佐 泰樹 長田 圭司 原山 信也 相原 啓二 蒲地 正幸
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.20-23, 2020-04-01 (Released:2020-04-13)
参考文献数
15

当初軽症と判断したが,症状が遷延し治療に難渋した脂溶性有機リン中毒症例を経験した。症例は30代女性。脂溶性有機リンを内服し救急搬送された。来院時コリンエステラーゼ(ChE)は低値だが,症状から軽症と判断された。対症療法のみで経過を診たが第3病日に流涎,呼吸困難感が出現し気管挿管施行。第4病日に症状改善し抜管するも,第6病日に症状が再燃し再挿管施行。第9病日再抜管。第12病日に頻呼吸・呼吸困難感が出現し再々挿管。この時点までChE値低値持続していたが,徐々にChE値が改善。第20病日抜管し,その後状態が安定した。本症例の経験から,脂溶性有機リン中毒症例では,ChE低値が持続する症例の人工呼吸器離脱は慎重に行うべきである。
著者
長門 優 岩本 謙荘 原山 信也 岩田 輝男 二瓶 俊一 谷川 隆久 相原 啓二 蒲地 正幸
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.521-525, 2008-10-01 (Released:2009-04-20)
参考文献数
9

尿管結石症から敗血症性ショック,播種性血管内凝固症候群となり救命できなかった一例を経験した。症例は85歳女性。尿路感染症を疑われ近医に入院したが,翌日にショックとなり当院に紹介された。当院搬送時すでに多臓器機能不全の状態であった。血中エンドトキシン値の上昇と,CTにて左尿管結石,左水腎症を認め,結石嵌頓による敗血症と診断した。呼吸循環管理に加え,経尿道尿管カテーテル留置,エンドトキシン吸着および持続血液濾過透析を行ったが,ICU入室2日目に死亡した。血液・尿培養のいずれからもEscherichia coli(E. coli)が検出された。当院で過去5年間に経験した尿管結石症から敗血症へ移行した10症例のうち,死亡例は本症例のみであった。原因として,高齢であったこと,全身性炎症反応症候群が遷延し重症化したことに加え,抗生物質によりグラム陰性菌からエンドトキシン遊離が助長された可能性が考えられた。
著者
二瓶 俊一 岩本 謙荘 後藤 慶 原山 信也 毛利 文彦 相原 啓二 蒲地 正幸
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.35-40, 2008 (Released:2009-06-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1

産業保健と救急医療のかかわり:二瓶俊一ほか.産業医科大学病院救急・集中治療部―産業保健活動は,職場環境や作業方法により発生する健康障害のリスクを適切にコントロールすることが主要目的である.しかしリスクの低減によっても災害や病気を防げないことがある.事業所内で発生した災害や病気に対する初期対応は,産業保健スタッフにとって大変重要な仕事である.適切な初期対応により,災害や病気からの救命率を上げることも可能であり,発生した災害や病気に対するマネジメント=救急危機管理は,産業保健遂行上,大変重要である.従って,産業保健と救急医療の間には緊密な関係がある. (産衛誌2009; 51: 35-40)