著者
清 佳浩 滝内 石夫 渡辺 晋一 本田 光芳 伊東 文行 西川 武二 小川 秀興 原田 敬之 西山 千秋 加藤 卓朗
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.87-97, 1997-02-28 (Released:2009-12-18)
参考文献数
20
被引用文献数
1 4

フケ症を対象に,0.75%硝酸ミコナゾールシャンプー(MZS)の有用性を,シャンプー基剤(BSS)を対照として8施設による二重盲検比較試験により検討を行った.また,フケおよびかゆみに対する症状の改善とMalassezia furfurの菌数の減少,すなわち真菌学的効果との関係についても併せて検討した.その結果,総症例数134例中,安全性解析対象症例は130例,有効性および有用性解析対象症例は108例であった.有用率はMZS群58例中34例(58.6%),BSS群50例中19例(38.0%)であり,MZS群がBSS群に比し有意に優れる成績であった(p=0.020).フケの改善率では,MZS群58例中42例(72.4%),BSS群50例中26例(52.0%)であり,MZS群がBSS群に比し有意に優れる成績であった(p=0.017).M.furfurに対する真菌学的効果とフケに対する有効性に関して,効果の発現がみられた症例においては,菌数の有意な減少が認められた(p=0.0001).これに対し,無効の症例では試験開始前と終了後の菌数の変化に有意差を認めなかった.また,試験開始時の菌数による有効性の層別解析では,菌数が比較的多い症例において,MZS群がBSS群に比し有意に優れていた(p=0.038).副作用は130例全例において全く認められなかった.以上より,MZSはフケ症に対して有効であり,フケの改善とM.furfur菌数の減少とも比較的一致する極めて有用なシャンプー剤であると考えられた.

1 0 0 0 OA 爪白癬

著者
原田 敬之
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.77-95, 2011 (Released:2011-06-20)
参考文献数
236
被引用文献数
7 8

爪白癬は長年治療に難渋する疾患の1つであったが,1990年代に入ってわが国においてもイトラコナゾール,テルビナフィンといった新しい経口抗真菌薬が使用できるようになった.その優れた有効性,安全性から積極的に治療することが可能となり,改めて爪白癬の病態,診断,治療などについて脚光を浴びている.爪白癬はわが国の人口の約10%に罹患者が存在し,特に高齢者ではさらに頻度が高い.今後高齢化社会が益々進むにつれて爪白癬を有しているために肉体的ならびに精神社会的な負担を生じ,老後のQOLを大いに損ねる危険性も予想される.また,爪白癬の病巣が他の病型の白癬や他人に白癬を感染させる感染源となりうる.治療に当たって爪白癬の確定診断を行うことが必須であることはいうまでもないが,単に画一的に内服療法を行うのではなく,外用療法,局所療法を駆使して症例ごとに最良の治療法を探求・選択することが最も重要である.爪白癬に関して今までに優れた成書や総説を始め論文は極めて数多く出版されているが,今回はわが国の実情も踏まえていま一度概説したい.