著者
森下 宣明 二宮 淳也 清 佳浩 滝内 石夫
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.247-252, 2004-10-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
14
被引用文献数
10 7

健常人の踵部の角質片に,数種の皮膚糸状菌を塗布し,角質内への菌の侵入速度や侵入後の洗浄による菌の除去について検討した.足白癬を想定した実験系では,角質表面に菌を塗布した後,以下の2系列の実験系をたてた.(1) 屋内で靴下を履いている環境として,湿度90%を8時間,湿度100%を16時間,(2) 屋内で裸足でいる環境として,湿度80%を8時間,湿度100%を16時間培養し,経日的に取り出し,石鹸水を浸した綿棒による洗浄前後について,それぞれPAS染色,走査電顕で観察した.(1)では1日後に洗浄しても菌を除去することはできなかったが,(2)では2日後でも菌が除去されていた.靴を脱いでいるときには足の湿度を低く保つこと,連日足底・趾間の洗浄をおこなうことにより,角質内に菌が侵入し始めても容易に除去できると思われた.また,体部白癬を想定した実験系では,角質切断面に菌を塗布し,湿度80%で培養後,経日的に取り出し,PAS染色後観察した.Trichophyton tonsuransは,0.5日で角質への侵入が始まり,他の菌種の皮膚糸状菌よりも角質内への侵入速度が速く,最近の感染拡大の要因の1つであると思われた.
著者
古賀 美保 清 佳浩 滝内 石夫 中村 良子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.531-534, 1982-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
18

通常の帯状疱疹の経過中に原発病巣より離れた部位に, 小水萢等の発症をみる汎発性帯状疱疹の2例を経験した.1例はほぼ全身に水痘のごとく播種状に小水疱等が生じた典型的なものであった.2例目は通常の帯状疱疹発症後4~6目にて, 顔面, 四肢, 腰部等に1ケから10数ケ程の皮疹が生じたものであった.これら2例に生じた撒布疹の水疱蓋のSmear標本について, 一次抗体に抗水痘Virus人血清を用い, 二次抗体にFITC標識抗人IgG血清を用いる螢光抗体法により観察した.全ての撒布疹において陽性所見を得た.この結果から, この2症例は臨床的に極めて異なるとはいえ, 病因的にはいつれもVirus血清の結果生じたものと思われた.
著者
清 佳浩 滝内 石夫 渡辺 晋一 本田 光芳 伊東 文行 西川 武二 小川 秀興 原田 敬之 西山 千秋 加藤 卓朗
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.87-97, 1997-02-28 (Released:2009-12-18)
参考文献数
20
被引用文献数
1 4

フケ症を対象に,0.75%硝酸ミコナゾールシャンプー(MZS)の有用性を,シャンプー基剤(BSS)を対照として8施設による二重盲検比較試験により検討を行った.また,フケおよびかゆみに対する症状の改善とMalassezia furfurの菌数の減少,すなわち真菌学的効果との関係についても併せて検討した.その結果,総症例数134例中,安全性解析対象症例は130例,有効性および有用性解析対象症例は108例であった.有用率はMZS群58例中34例(58.6%),BSS群50例中19例(38.0%)であり,MZS群がBSS群に比し有意に優れる成績であった(p=0.020).フケの改善率では,MZS群58例中42例(72.4%),BSS群50例中26例(52.0%)であり,MZS群がBSS群に比し有意に優れる成績であった(p=0.017).M.furfurに対する真菌学的効果とフケに対する有効性に関して,効果の発現がみられた症例においては,菌数の有意な減少が認められた(p=0.0001).これに対し,無効の症例では試験開始前と終了後の菌数の変化に有意差を認めなかった.また,試験開始時の菌数による有効性の層別解析では,菌数が比較的多い症例において,MZS群がBSS群に比し有意に優れていた(p=0.038).副作用は130例全例において全く認められなかった.以上より,MZSはフケ症に対して有効であり,フケの改善とM.furfur菌数の減少とも比較的一致する極めて有用なシャンプー剤であると考えられた.
著者
森下 宣明 二宮 淳也 清 佳浩 滝内 石夫
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.269-271, 2003-10-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
12
被引用文献数
13 15

我々は健常人の踵の角質を用いて皮膚糸状菌の侵入に関する要因として温度,湿度,外傷の影響についてこれまで検討してきた.皮膚糸状菌が角質に侵入するためには,至適発育温度である27℃よりも体表温度に近い35℃の方が早く,湿度は90%以上であることが必要である.しかし,外傷部では早期に侵入し,特に湿度90~100%では,0.5日で侵入が始まり,また,湿度80%でさえも1日で侵入が観察された.しかし日常生活で足底に皮膚糸状菌が付着しても足白癬を発症する可能性は低いと思われる.そこで角質に菌を侵入させた後,洗浄することで菌を除去することが可能か検討した.温度は35℃とし,家で靴下を履いている場合(湿度100%16時間,湿度90%8時間)と裸足の場合(湿度100%16時間,湿度80%8時間)に分けた.前者では,洗浄前では何れの菌株とも1日で角質内に侵入し,洗浄しても菌を除去することができなかった.後者でも,洗浄前では1日で角質内に侵入が認められたが,洗浄によりほとんどの菌が除去されていた.足白癬を予防するには,足の湿度を低く保つこと,連日の足底・趾間の洗浄が必要と考えられ,この何れか或いは両者を怠ることで足白癬の発症の可能性が高まるものと思われた.