著者
神崎 仁 原田 竜彦 神崎 晶
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.3, pp.133-138, 2011 (Released:2011-08-03)
参考文献数
14
被引用文献数
2

統合失調症にて通院加療中の30歳女性にみられた一過性の聴覚失認例を報告した.主訴は「きこえが悪い」であったが, よく聴取すると, 「音は分かるが, 何を言っているか分からない」というものであった. 環境音とことばの判別もつかなかった. 純音聴力検査は正常であったが, 語音弁別検査は異常を示した. OAE, ABRには異常なかった. 病歴から祖父母の介護がストレスとなり, 発症したと思われた. 環境を変え, 抗不安薬の内服により, 語音弁別の異常は短期間で改善した. 本例の聴覚障害と統合失調症との関連について考察した.
著者
神崎 仁 泰地 秀信 岡本 康秀 原田 竜彦
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.74-80, 2019-02-28 (Released:2019-03-14)
参考文献数
14

要旨: 目的; 耳鳴を主訴とする 4kHz, 8kHz のみの感音難聴症例の中 THI>18 以上の耳鳴に対する Sound generator 付き補聴器 (HA 群) とスマートフォンアプリ (SM 群) の音の効果を比較し評価した。方法; 23例の耳鳴を主訴とする高音域感音難聴症例を HA 群 9例と SM 群 14例の2群に分けた。耳鳴の効果は THI, 自覚的耳鳴評価 (大きさ, わずらわしさ, 生活への影響, 苦痛度) と自覚的改善度で評価した。結果; 治療後両群ともに, それぞれ THI スコア, 自覚的耳鳴評価スコア, 自覚的改善度は有意に改善した。しかし, 治療前後の上記項目のスコアの差については両群間には差がなかった。HA 群では治療前 4kHz の聴力レベルは SM 群より高度で, 耳鳴持続期間も長かった。結論; 聴覚系への長期の音響療法は SG 付き補聴器であれ, スマートフォンアプリであれ耳鳴を改善させると思われる。高音域 (4, 8kHz) の耳鳴患者には両者を比較して選択させることが推奨される。選択にあたっては 4kHzの聴力レベル, 耳鳴の持続期間, 補聴器のコスト, 音響療法を仕事中に必要とするか, 帰宅後にのみ必要とするかを考慮する。