- 著者
-
原納 淑郎
大嶋 寛
- 出版者
- 大阪市立大学
- 雑誌
- 一般研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1985
本研究は, 燃料用エタノール生産の省力化を図るべく, エタノールならびにグルコース耐性に優れた固定化酵母を調整するとともに, それを用いたエタノール発酵と, 蒸留法よりも省力化できると見積られている浸透気化法によるエタノールの濃縮とを同時に行なう分離型バイオリアクターの開発を試みたものであり, 主として次の結果が得られた.1.高濃度エタノール生産用固定化酵母の調整1)アルギン酸カルシウムゲル包括固定化酵母に, ポリ塩化ビニル, ポリビニルピロリドン, ポリスチレン等の疎水性ポリマー粉末を20〜30%同時に包括することによって, 固定化酵母のエタノール耐性ならびにグルコース耐性が増大し, それにともなって回分法で達成されるエタノール濃度は1.5倍(15wt%)に増大した.2)エタノールならびにグルコース耐性が増大する原因(機構)について検討した結果, 疎水性ポリマー表面への吸着とポリマ表面近傍および液本体間のグルコースならびにエタノールの分配とが重要な因子であることが推察された.2.分離型バイオリアクターによる高濃度エタノールの連続生産1)ポリ塩化ビニルを同時に包括した固定化酵母による発酵とシリコンゴムチューブを用いる浸透気化を複合した流通式リアクターを用いることにより, 通常の発酵で得られるエタノール濃度の5〜7倍の270〜350g/Lの高濃度エタノールを連続的に生産できた. 酵母活性の半減期は2.5ケ月であった.2)本バイオリアクターは, 完全混合槽型リアクターとして取り扱えることがわかり, エタノールによる非拮抗阻害を考慮した本プロセスの動力学的把握を試みた結果, 実験データを充分に整理できるとともに, 種々の反応操作のシュミレーションが可能となった.