著者
堀 隆博 斎藤 恭一 古崎 新太郎 須郷 高信 岡本 次郎
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.795-800, 1987-11-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
17
被引用文献数
6 8

放射線グラフト重合法によってアミドオキシム型キレート樹脂を合成し, 海水中におけるウランと樹脂との吸着平衡関係を調べた.短時間で平衡に到達させるため, アミドオキシム基量を1kg基材あたり0.105 mol以下に制御した.アミドオキシム基量が0.064 mol/kg-BP以下の樹脂では, 海水中でのウラン吸着が飽和に達していた.グラフト鎖上で隣接した二個のアミドオキシム基が, ウラニルイオン一個を捕捉し, 単独のアミドオキシム基はウラン吸着に寄与しないと考えた.隣接アミドオキシム基とウラニルイオンの錯形成の反応式から, Langmuir型吸着平衡式を導き, 吸着平衡の実験結果を整理した.全アミドオキシム基量0.105 mol/kg-BPの樹脂について, 隣接アミドオキシム基量は, そのうち0.39%という結果を得た.
著者
古崎 新太郎 茅原 一之 伊藤 義郎 信川 寿 小夫家 芳明 江川 博明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

総量約42億トンと計算される海水中の溶存ウランを工業的に採取する技術の確立は、エネルギー政策上極めて重要である。採取法として、ウランを選択的に吸着する固体吸着剤を用いる吸着法が実用性が高い。本研究では、経済的な海水ウラン採取プロセスの確立をめざして、1.吸着速度が大きく、また繰り返し使用に対して耐久性のある吸着剤の製造方法の確立、2.大量の海水との接触に適した中空繊維および粒状繊維吸着剤を用いる接触装置の評価、および3.海流、波などの自然力を利用した吸着剤と海水との接触装置の開発を行った。本研究によって得られた新しい知見、成果は次の点である。1.合成条件を工夫して比表面積の大きいアミドキシム樹脂を合成した。この樹脂はアルカリ処理後、1日当たり100ー200mg/kgーRという高いウラン吸着量を示した。2.イミドジオキシム基の大きな平衡定数、アルカリ処理に伴うアミドキシム基の消失という事実から、優れたウラニル吸着剤として、イミドジオキシム構造を主として与える条件で調製した繊維状吸着剤を用い、一日の吸着で650mg/kgーRのきわめて優れた吸着速度を達成した。3.キャピラリー繊維状アミドキシム樹脂を充填した海流利用吸着装置周辺の流れを数値解析して、実験結果と比較した結果、吸着装置を流れ込みのない構造体として扱ってよいことを示した。さらに、びょう風型吸着装置のサイズとウラン採取量との関係を求めた。4.海流と波力を利用する浮体式ウラン採取システムのコストは、現在開発されている吸着剤の性能(20日間で6g/kg)の10%の回収率において、174千円/kg/yearとなった。5.圧力損失の結果に基づいて循環流動層式吸着装置のスケールアップを検討したところ、黒潮海流を直接利用して運転するとき、接触部槽高は約1ー3mになるという結果を得た。6.海流を直接利用して、吸着剤流動層を流動化し、ウランを吸着する四角錐型吸着装置は三角柱型吸着装置に比べ、どのノズル径でも良好な流動状態が得られ、最大充填率も上回った。
著者
片岡 健 中塩 文行 寺本 正明 竹内 寛 川崎 順二郎 江口 彌 平田 彰 古崎 新太郎 藤縄 勝彦 原田 誠
出版者
大阪府立大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

乳化粘膜による分離濃縮プロセスの開発においては, 1.二本の長鎖アルキル基を有する新しい界面活性剤が合成され, 分離濃縮プロセスの見地から望ましい界面活性剤であることが実証され, 実用化へ前進した. 2.溶存クロムの連続槽型分離濃縮操作には, 滞留時間とその分布が影響し, 並流操作が実用的であることが判明した. 3.向流接触塔による分離濃縮プロセスのシミュレーションにより, pH変化を拌う分離濃縮系にはpH調節が重要であることを明らかにし, 塔内濃度分布の推算および装置設計が可能となった. 4.乳化液膜の電気解乳化速度式が提案され, 液滴合一の限界電場条件が示唆されるとともに, 試作した連続解乳化装置の操作条件が明らかにされた. 支持液膜による分離濃縮プロセスの開発においては, 1.多孔性支持液膜に使用する有機物として, 直鎖系炭化水素が膜の安定性に優れ, 支持液膜の連続再生方式を提案した. 2.新しい膜形態として流動液膜が提案され, スパイラル型, plate-and-frame型各モジュールが試作され, 好成績を示した. 3.Ga・In湿式製錬プロセスに, 支持液膜法あるいは乳化液膜法が導入できることを明らかにした.液膜分離技術の応用開発においては, 1.希土類, 特にランタンの分離に適用できることを明らかにし, 分離濃縮の基礎的設計指針を見出した. 2.バイオプロセスへの液膜法の検討が行われ, Z-APMの連続合成に適用可能であることを見出した. 3.(O/W/O)液膜による有機物の分離選択性を高める方法を提案し, 転相による新しい機械的解乳化法を見出した. これらの諸成果を基盤とすれば, 実用的な連続分離プロセスは可能であり, パイロット・プラントの試作・操作が望まれる. なお一連の開発研究の過程より新たにマイクロエマルションを応用した液膜分離の技術開発の重要性が萌芽してきた.