- 著者
-
小林 昂平
古寺 哲幸
田原 悠平
豊永 拓真
笠井 大司
安藤 敏夫
宮田 真人
- 出版者
- 公益社団法人 日本顕微鏡学会
- 雑誌
- 顕微鏡 (ISSN:13490958)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.2, pp.67-71, 2019-08-30 (Released:2019-09-07)
- 参考文献数
- 27
Mycoplasma mobile(以下モービレ)は,ペプチドグリカン層を持たない,魚の病原細菌(単細胞の生物)である.モービレは固形物表面にはりつき,はりついたまま滑るように動く滑走運動を行う.滑走メカニズムにおいて,モービレの細胞表面にあるタンパク質でできた“あし”が,宿主細胞表面のシアル酸オリゴ糖を引き寄せ,菌体を前に進める.この滑走運動は,細胞内部にあるモーターがATPを加水分解することにより駆動されるが,ATPの加水分解によりモーターがどのような構造変化を起こすかは明らかになっていない.そこで本研究では,高速原子間力顕微鏡(以下高速AFM)を用いて,細胞内部におけるモーターの動きを可視化することを目的とした.ガラス基板表面に貼り付けた細胞表面を高速AFMでスキャンすると,内部モーターと思われる粒状の構造がシート状に並んでいる様子が見られた.さらに,個々の粒子は滑走方向に対して右方向に8.2 nmシフトする動きを示した.