著者
南山 泰宏 古谷 規行 稲葉 幸司 浅井 信一 中澤 尚
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.411-416, 2012 (Released:2012-09-30)
参考文献数
13
被引用文献数
2 5

京都府特産野菜のひとつである舞鶴市在来の甘トウガラシ‘万願寺’では,栽培環境によって,時折,辛味果実が発生して問題になっている.これまでの遺伝解析研究において,生食用のピーマン品種では,単一の劣性遺伝子により辛味果実が全く発生しないことが明らかにされている.本研究では,新品種‘京都万願寺2号’の育成過程で得られた戻し交雑世代を用い,この遺伝子座に連鎖したDNAマーカー(SCY-800)の開発を行った.また,各戻し交雑世代を本DNAマーカーで選抜したところ,在来品種‘万願寺’の主要特性を残しながら,辛味果実が全く発生しない優良個体が得られて新品種の完成に繋がった.先行して育成された‘京都万願寺1号’と各形質を比較すると,新品種は低温期のアントシアニン着色果実の発生が少なく,辛味のない長果を産することが判明した.以上より,新品種はこれまでの品種にない優良形質を有しており,今後の生産現場への普及に期待がもたれる.
著者
野村 知未 松井 元子 大谷 貴美子 村元 由佳利 古谷 規行
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.464-469, 2016-10-15 (Released:2016-11-30)
参考文献数
21

栽培温度の異なる3つの試験区でエダマメ2品種を栽培し,マルトース生成量に関与するβ-アミラーゼ活性およびデンプンの糊化温度の影響を検討した.‘富貴’ は,子実肥大期の温度が低い25°C区がほ場区に比べて,β-アミラーゼ活性の強さが有意に(p<0.01)高くなったが,‘新丹波黒’ の場合,栽培温度の違いにより活性の強さは変化しなかった.一方,デンプンの糊化温度は両品種供に3つの試験区で有意に(p<0.01)異なり,子実肥大期の温度が高いほど大きく上昇した.これらのことから,エダマメ加熱後のマルトース生成量は,子実肥大期の温度に大きく影響を受けることが認められた.
著者
古谷 規行 小川 昂志 藤井 千晃 川添 禎浩
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.35-43, 2016-01-25 (Released:2016-03-01)
参考文献数
35

高イソフラボン含有黒大豆 ‘高イソ黒65号’ は市場評価の高い ‘新丹波黒’ のイソフラボン含量を向上させた品種である.‘高イソ黒65号’ の煮豆や豆腐などを調製して,加工品のイソフラボンおよびアントシアニン含量を調査した.さらに子実や加工品の抗酸化能を調査した.‘高イソ黒65号’ は子実のイソフラボン含量が532.4 mg/100g-DWで,‘新丹波黒’ の2倍以上であった.‘高イソ黒65号’ の加工品のイソフラボン含量は ‘新丹波黒’ の2倍以上で有意に高かった.調理によりマロニル化配糖体が減少しグリコシドが増加した.調製方法により加工品のイソフラボン含量や組成が異なり,蒸し豆はイソフラボンの損失が抑えられ,豆腐ではアグリコンの生成量が多くなった.また,アントシアニン含量は子実や加工品で ‘新丹波黒’ と遜色ない結果であった.‘高イソ黒65号’ の子実や加工品の機能性は子実およびいずれの加工品においても ‘新丹波黒’ よりH-ORAC値が高くなった.このように丹波黒大豆系品種 ‘高イソ黒65号’ は,イソフラボンおよびアントシアニン含量が高く,機能性が高い大粒黒大豆で,その特性を生かす加工品として蒸し豆や豆腐が有望と考えられた.