著者
下藤 悟 大谷 貴美子 松井 元子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.335-342, 2013 (Released:2013-12-13)
参考文献数
20

銅ボウルで調製した泡立て卵白の特性について,銅イオンとオボアルブミンの反応性の観点から検討した。銅イオンは,泡立て卵白の起泡性には関与していなかったが,安定性に関与していた。動的粘弾性測定より,銅ボウルで調製した泡立て卵白は,ガラスボウルで調製したものと比べて,粘弾性が大きく,より安定な構造であることが示された。オボアルブミンの役割を明らかにするために,銅イオンとの反応性を検討した。銅イオンが存在することで,オボアルブミン溶液の遊離SH基量と疎水性の減少および,粘弾性向上が示された。さらにSDS-PAGEより分子量の大きなタンパク質が検出されたことから,銅イオンはオボアルブミンの分子間における架橋形成を促進していることが示唆された。銅ボウルで泡立て卵白を調製すると,銅イオンにより形成されたS-Cu-S架橋によって泡立て卵白の膜の粘弾性が向上する。このことによって不均化や薄膜化による破泡を抑え,泡沫安定性を向上させたと考えられる。
著者
大谷 貴美子 尾崎 彩子 小島 憲治 神田 真由美 南出 隆久 高井 隆三 中島 孝 高畑 宏亮 大谷 晃也
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.356-365, 2001-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
25

We investigated the relationship between the frothing and foam stability of beer and the surface properties of various kinds of drinking vessel (glass mugs and 6 kinds of ceramic mugs), whose size and shape were almost the same. Although the initial bubbles produced when pouring beer into a mug have been thought to depend on the gas created by the mechanical stirring and on the air adsorbed to the surface of the beer mug, we considered that the frothing and foam stability of beer in the mug might also be related to the shape and size of scratches and on the wettability of the surface of the beer mug. The mechanism for continuous bubbling was investigated by a theoretical equation which showed that the size of a bubble produced on the surface of the beer mug was significantly correlated with the wettability and shape of scratches on the surface, and that the place where a bubble was continuously produced was where air remained to form the nucleus of the next bubble after the previous bubble had been released.
著者
町田 玲子 三橋 俊雄 奥村 萬亀子 大谷 貴美子 森 理恵 南出 隆久
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は「しまつ」などの京都らしい暮らし方について、衣食住の各側面から考察し、その伝承のされ方、次世代への生かし方について明らかにすることを目的とする。衣分野:京の暮らしぶりの特性に「しまつ」がある。衣生活については一方で「京の着だおれ」と評される特性がある。京の女たちはこの両側面をうまく成り立たせる工夫や心がけを持っている。また、この両側面にかかわる商人としての悉皆屋がある。彼らはきものの管理・再生から流行のきもの作りまでを手がける。そして、京の人々の暮らしと深くかかわり、「しまつ」な暮らし方と流行のゆくへを伝授する。京の「しまつ」な暮らしは生活者の行動意志と同時にそれを支える産業組織から成り立っていたのである。食分野:都として栄えた京の郷土料理とも言える京料理と町衆のおかずであるおばんざいに光をあて、「しまつ」に関する知恵を探った。京料理には、材料を生かす精進の精神(無駄をしない、持ち味を生かす)が、薄味や旬の素材の利用に生かされ、おばんざいには、粗末なおかずをも、様々な意味づけをして生活を楽しむ知恵や、また乾物等の調理方法に栄養素を無駄なく利用する知恵などが認められた。住分野:京都市上京区・中京区・下京区の居住者に、住生活を維持するための昔の知恵について調査をした。その結果、昔は大掃除や日々の掃除を家族で行なっていたので、子どもへも自然に掃除の知恵が伝承されていたこと、住に関するしまつ意識は高齢者同居世帯において高いこと、近隣づきあいは相手の領域に安易に踏み込まない暗黙の了解があり、高齢者層ほどその認識度が高い傾向がみられること、などが明らかになった。
著者
大谷 貴美子 尾崎 彩子 松本 裕子 南出 隆久
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.204-211, 2000-05-20
被引用文献数
3

器と料理との色彩調和について研究する足がかりとして、最も単純な系として、つけ醤油と皿に着目し、醤油を入れるのに相応しい皿の色について、CRT上のカラーパレットを用いて検討を行った。白磁の皿に醤油を入れた画像を基本画像としてCRT上に取り込み、皿全体または皿の縁のみに、basic vivid colorの8色(スペクトラムブルー、サマサマーグリーン、若草色、カナリア、蜜柑色、シグナルレッド、マゼンダ、本紫)と各々の色の明度を50%から80%まで上昇させたものを用いて彩色した。そして、料理別(刺身、寿司、餃子、漬け物)に相応しいもの、醤油が美しくみえるもの、つけ醤油の皿の色として不適当なものについて検討を行った。その結果、刺身や寿司など生ものの新鮮さが要求される料理の場合は、ブルー系が好まれたが、漬け物や餃子ではむしろ、黄色を含む暖色系の方が好まれた。また、皿の縁のみに彩色した場合、餃子では、シグナルレッドが好まれるなど、同じつけ醤油の皿であっても用途によって、選ばれる皿の色が異なることが示唆された。色の世界は多様であり、実際の器を用いての研究には限界があるが、コンピューターを用いることで、視覚による美しさ、特に料理と器との関係について研究できる可能性が示唆された。
著者
笈田 幸治 松井 元子 大場 将生 村元 由佳利 大谷 貴美子 本杉 日野
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.287-293, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

ブドウ‘シャインマスカット’は皮ごと食べるブドウとして販売されているが,その食べやすさは無核化処理や灌水などの栽培条件によって異なる.皮ごと食べやすさを向上させるため,満開期における25 ppm GA3に加用するCPPU処理濃度の違いが,果粒の物性,剥皮厚および皮ごと食べたときの官能評価に及ぼす影響について検討した.試験区としてCPPUの無処理,2 ppm,5 ppmおよび10 ppm区の4試験区を設定した.果粒の物性分析の結果,無処理と2 ppm区との間に差はみられなかったが,5 ppmおよび10 ppm区では無処理および2 ppm区よりも初めの嚙みきり時に果粒の歪みが大きく,咀しゃく中の皮切れが悪い品質であると評価された.また,果粒の剥皮厚は無処理と2 ppm区との間に差はみられなかったが,処理濃度が高くなるに従って大きくなった.果粒を皮ごと食べたときの官能評価の結果,10 ppm区での評価は他の試験区に比べて低く,これは物性分析の結果と一致していた.また,5 ppm区では10 ppm区ほど大きな差はなかったが,無処理および2 ppm区よりも官能評価は低い傾向がみられた.以上のことから,満開期におけるCPPUの5 ppmおよび10 ppm濃度処理は‘シャインマスカット’果粒の皮ごと食べやすさを大きく損なうことが明らかとなった.
著者
岡崎 章子 當具 摩弓 冨田 圭子 松井 元子 大谷 貴美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.1030, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】食べ物のおいしさは、食物本来の化学的・物理的性質のほかに、食べる側の食体験や社会的・文化的背景の影響を強く受ける。そのおいしさを評価するのに、前者は機器分析によるさまざまな客観的評価法が研究されているが、おいしさを表現することばについてはほとんど研究されていない。本研究の目的は、食べ物のおいしさの表現用語と文化的背景との関係を明らかにすることである。ここでは、まず日本で幅広い世代に知られる料理漫画「美味しんぼ」の中で使用される食べ物のおいしさの表現用語に着目し、分類した結果を報告する。【方法】料理漫画「美味しんぼ」(小学館)1~102巻(1983~2008年)を調査対象とし、その中で使用されている食べ物のおいしさを表現する用語を抜き出し、感覚別、調理法別、食品群別、料理国籍別等にカテゴリーに分類、分析した。【結果】食べ物のおいしさを表現する用語を抽出したところ、11,888語あった。感覚別で最も多かったのは味覚関連用語(4,135)で、それに次いで嗅覚(2,166)、触覚(1,967)、視覚(895)に関連する用語であった。また感覚(五感)には分類されないが、製造法や原産地など食の安心・安全性に関連した用語も抽出され、知識・経験に基づく用語もおいしさを表現する上で重要な役割を果たしていることが示唆された。料理国籍の違いによって表現用語に大きな差は認められなかったが、調理法の違いによる差が認められた。また、「美味しんぼ」では魚介類に関連する用語が多く、そのおいしさを表現するのに、生臭みなどの嗅覚関連用語や、鮮度、主食との相性などに関する用語が用いられた。今後は、例えば異なる文化的背景における魚介類のおいしさを表現する用語について、比較検討を行う予定である。
著者
尾崎 彩子 鎌田 早紀子 冨田 圭子 大谷 貴美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.69, 2004

[目的] 近年、学童期における食の乱れが様々に報告されているが、それらの要因の1つとして食べたいものがいつでも容易に入手できる生活環境の変化があげられる。望ましい食生活を送るためには、自ら正しい食物の選択ができる基礎的な知識と能力を養うことが不可欠である。しかし、家庭における食教育力が低下していることも事実である。そこで、我々は小学校でまだ家庭科の授業をうけていない4年生の児童を対象に、「体によいと思う夕食」を絵にしてもらい、また併せてアンケート調査を行うことで、子供たちの食に対する知識等の現状について考察した。<br>[方法] 京都市内の小学校(学校栄養士不在)4年生の児童77名を対象に、2003年7月に調査を行った。画用紙、色鉛筆、アンケート用紙を全員に配布し、画用紙には子供たちが考える「体に良いと思う夕食の絵」及びその料理の名前を描いてもらった。その後、毎日の食事に対する意識、食に関する知識、嫌いな食べ物についてのアンケートを行った。統計処理にはExcel統計を用いた。<br>[結果及び考察] 約30%の児童が、ご飯・味噌汁・焼き魚・サラダのみで構成された食事を描きパターン化されていた。一方、黒米や納豆、豆腐など健康によいとされる食品が多く登場し、知識としてはかなり豊富であることが示された。しかし、1割の児童の描く焼き魚は頭が右向きであり、家庭で基本的な食教育を受けていないことがうかがわれた。また、「食べ物の3つの働き」をよく知っていると答えた児童の方が、また、「家族そろって食べることが楽しい」と感じている児童の方が、そうでないと答えた児童より多くの品数を描く傾向にあった。別の我々が調べた「子ども達が食べたい食事」にはこういった日本型の食事は描かれていない。つまり、食育の重要な課題は、「体に良いと思う食事」を「食べたい食事」に変化させることにあると考えられた。
著者
鎌田 早紀子 李 温九 章 貞玉 冨田 圭子 大谷 貴美子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.215-223, 2005 (Released:2006-08-04)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

Based on the hypothesis that the dishes school children to want to eat on their birthday must be the dishes that they love, the food preference of school children (in the 1st 6th grades) was investigated in Kyoto, Japan and in Seoul, Korea. Although the total number of varieties of menus drawn was more by the Japanese pupils than the Korean pupils, the number of menus drawn by one pupil was less by the Japanese pupils than the Korean pupils. This means that the preferred menus of Korean pupils more resembles each other, and that of the Japanese pupils were different from each other depending on their diet experiences. Through their drawings, the progress of socialization of the diet life of pupils and their food preference to Western-style dishes and meat dishes were shown to be promoted in both countries. Traditional dishes on special days in both countries were not the dishes that the pupils wanted to eat.
著者
村元 由佳利 山口 由貴子 冨田 圭子 鵜飼 治二 松井 元子 大谷 貴美子
出版者
Japanese Society of Shokuiku
雑誌
日本食育学会誌 (ISSN:18824773)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.207-219, 2015-04-25 (Released:2015-07-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Poor dietary behavior among elementary school students in Japan has recently become a cause of concern. Kyoto’s traditional food culture is well known for its healthy, high quality, seasonal ingredients, and thus increased awareness among students may promote improvements in their dietary behavior. Therefore, we developed a shokuiku (food education) program consisting of a series of lectures and practical sessions based on Kyoto’s food culture. We then conducted the program on total of 20 classes of sixth-grade students in a public elementary school in Kyoto to investigate whether increased awareness of the benefits of Kyoto’s food culture would improve their dietary behavior.After the program, we assessed a number of factors related to dietary behavior. Among these factors, we found that the percentage of students who were able to savor meals using all 5 senses increased from 29.7% to 79.0%, and the percentage of students who paid more attention to table manners at mealtime increased from 10.9% to 40.3%. Furthermore, they came to view Kyoto’s food culture, which is representative of Japan, i.e., having a beautiful seasonal presentation, a spirit of treasuring the inherent color and flavor of the ingredients, and accompanied by a spirit of hospitality known as motenashi no kokoro, as beneficial. More than 90% of the students reported appreciating Kyoto’s food culture and feeling a sense of pride to be residents of the city. They also considered motenashi no kokoro to be its most important principle. In addition, a questionnaire conducted on the students’ parents (response rate, 66.2%) showed that over 50% observed an increase in their child’s interest in cooking and daily dietary habits at home. A separate questionnaire conducted on school teachers showed that the shokuiku program was suitable and effective for sixth-grade students, and that a visit to a restaurant specializing in Kyo-ryori, the cuisine of Kyoto, which was part of the program, allowed the students to reflect on what they had learned at school and to develop more interest in the benefits of Kyoto’s food culture. Moreover, they developed an awareness of healthy dietary behavior.These results suggest that shokuiku programs can improve dietary behavior in elementary school students.
著者
饗庭 照美 尾崎 彩子 李 温九 章 貞玉 康 薔薇 松井 元子 南出 隆久 大谷 貴美子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.180-186, 2002-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
18
被引用文献数
2

要約本研究では,2種類の塗りの皿(黒色,朱色)に物相型を用いて形作った飯を盛り付けて日韓の学生に示し,それらに対するイメージ特性をSD法によって調査した. 物相型は日本料理で伝統的に用いられている丸梅,もみじ,末広と,日本料理では用いられることのないハート型を加えた5種類を使用した. パネルは,日韓の食物系の女子学生である. 評価尺度は「上品な - 下品な」,「美しい一みにくい」などの形容詞対30項目を設定し,7段階評価で行った. その結果,日本と韓国では異なるイメージがあることが示されたため,統計処理にSPSSを用いて因子分析を行った. 日本で抽出された第1因子(α=.799)を構成する形容詞対は『情緒的感覚の因子』,第2因子(α=.779)の形容詞対は『華やかさの因子』と名付けた. 韓国で抽出された第1因子(α=. 899)は『嗜好性の因子』,第2因子(α =.844)は『目立ちやすさの因子』と名付けた. 抽出されたこれらの因子について日韓で比較してみると,日本において物相飯は季節感やハレ(めでたさ)を演出している情緒があるものというイメージが示唆された. しかし,韓国では物相飯を単に形のイメージとしてとらえ,その形の嗜好で評価が行なわれていた. 本研究から,食物の形や色に対する評価は,日常的に接しているその国の食文化に影響を受けていることが示唆された.
著者
大谷 貴美子 饗庭 照美 徳田 涼子 尾崎 彩子 南出 隆久
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.270-275, 2001-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
8
被引用文献数
3

The color harmony of Wanmori (a dish used in the Japanese tea ceremony and presented in a lacquered wooden bowl) was analyzed from photographs in books of Kaiseki cooking. V 20 (Toyobo Co. Ltd. ) color-image analyzing computer software, was used. The food materials occupied less than 40% of the whole area of a Wanmori bowl. The color which appeared most frequently and constituted the largest area of the food materials was the white-skin color to show the cooked fish of the season. In the summer, the number of colors per bowl was smaller and the area of the white-skin color was larger than in the winter which gave the effect of coolness. In the winter, warm colors (red and/or yellow) were added to give the effect of warmth. This color harmony is characteristic of Japanese cuisine that respects the sense of the season.
著者
野村 知未 松井 元子 大谷 貴美子 村元 由佳利 古谷 規行
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.464-469, 2016-10-15 (Released:2016-11-30)
参考文献数
21

栽培温度の異なる3つの試験区でエダマメ2品種を栽培し,マルトース生成量に関与するβ-アミラーゼ活性およびデンプンの糊化温度の影響を検討した.‘富貴’ は,子実肥大期の温度が低い25°C区がほ場区に比べて,β-アミラーゼ活性の強さが有意に(p<0.01)高くなったが,‘新丹波黒’ の場合,栽培温度の違いにより活性の強さは変化しなかった.一方,デンプンの糊化温度は両品種供に3つの試験区で有意に(p<0.01)異なり,子実肥大期の温度が高いほど大きく上昇した.これらのことから,エダマメ加熱後のマルトース生成量は,子実肥大期の温度に大きく影響を受けることが認められた.
著者
高畑 彩友美 冨田 圭子 饗庭 照美 大谷 貴美子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.287-299, 2006-05-15
被引用文献数
3 1

"子どもたちは家族と楽しい食事時間を過ごすことでコミュニケーション能力を育み,親子の相互理解を深めることで安定した人格を形成する.それには親の食生活や子育てに関する意識,生活充実感,過去の食経験が深く関わっている"という仮説を立て,母子の「コミュニケーション頻度」を被説明変数とし,母親の「過去の食経験」を外生変数とするパスモデルを構築し検証を行った.その結果,仮説は検証された.1)母とのコミュニケーションが少ない子どもは,食に対する興味や活気が低く,幼稚園の先生の評価においても友達の嫌がることをしがちであるなどの傾向がみられた.2)母親自身の過去の食経験が好ましいほど,母親の食事観を良くし,そのことは,子どもの食への興味を高め,母子間のコミュニケーション頻度を高めていた.また母親の過去の食経験が好ましいほど,現在の母親の生活充実感が高く,そのことは子どもへの積極的な養育態度や食との関わり方を介し,母子間の「コミュニケーション頻度」を高めていた.
著者
大谷 貴美子 尾崎 彩子 小島 憲治 神田 真由美 南出 隆久 高井 隆三 中島 孝 高畑 宏亮 大谷 晃也
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.356-365, 2001-11-20
被引用文献数
1

We investigated the relationship between the frothing and foam stability of beer and the surface properties of various kinds of drinking vessel (glass mugs and 6 kinds of ceramic mugs), whose size and shape were almost the same. Although the initial bubbles produced when pouring beer into a mug have been thought to depend on the gas created by the mechanical stirring and on the air adsorbed to the surface of the beer mug, we considered that the frothing and foam stability of beer in the mug might also be related to the shape and size of scratches and on the wettability of the surface of the beer mug. The mechanism for continuous bubbling was investigated by a theoretical equation which showed that the size of a bubble produced on the surface of the beer mug was significantly correlated with the wettability and shape of scratches on the surface, and that the place where a bubble was continuously produced was where air remained to form the nucleus of the next bubble after the previous bubble had been released.
著者
冨田 圭子 饗庭 照美 康 薔薇 大谷 貴美子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.230-241, 2005 (Released:2006-08-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The effects of estimating their father's character on their sense of eating with the family was investigated by questionnaire studies for junior and senior high school and university students who were in the psychologically weaning stage.Although male students showed the tendency to accept the dignity for their father as a good characteristic according to their development, female students showed the tendency to regard it as an unfavorable characteristic. In the case of female students, their sense of eating with the family was shown to be more influenced by more complicated factors than the male students, i.e., pleasant memories with father, frequency of eating alone through their daily life and evaluation of their father's life. Althought male students had many pleasant memories with their father qualitatively, female students made much of it not only qualitatively but quantitatively.The most important factor that influences their sense of eating with families was thought to be the affirmative sense for their father through respect and friendliness.The frequency of eating alone was correlated with unpleasant memories with families and with a sense of solitary in the family.
著者
高畑 彩友美 冨田 圭子 饗庭 照美 大谷 貴美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.287-299, 2006 (Released:2007-10-12)
参考文献数
17
被引用文献数
1

“子どもたちは家族と楽しい食事時間を過ごすことでコミュニケーション能力を育み, 親子の相互理解を深めることで安定した人格を形成する. それには親の食生活や子育てに関する意識, 生活充実感, 過去の食経験が深く関わっている” という仮説を立て, 母子の「コミュニケーション頻度」を被説明変数とし, 母親の「過去の食経験」を外生変数とするパスモデルを構築し検証を行った. その結果, 仮説は検証された.1) 母とのコミュニケーションが少ない子どもは, 食に対する興味や活気が低く, 幼稚園の先生の評価においても友達の嫌がることをしがちであるなどの傾向がみられた.2) 母親自身の過去の食経験が好ましいほど, 母親の食事観を良くし, そのことは, 子どもの食への興味を高め, 母子間のコミュニケーション頻度を高めていた. また母親の過去の食経験が好ましいほど, 現在の母親の生活充実感が高く, そのことは子どもへの積極的な養育態度や食との関わり方を介し, 母子間の「コミュニケーション頻度」を高めていた.
著者
大谷 貴美子 長渡 麻未 柴田 満 冨田 圭子 佐藤 健司 川添 禎浩
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.239-248, 2007-08-20
被引用文献数
1

伝統食品である京都大徳寺瑞峯院の大徳寺納豆について,ラジカル消去活性の強さを解明するために,製造過程のラジカル消去活性の変化とその関連成分について検討を行った。大徳寺納豆は,7月下旬から9月下旬にかけて仕込まれる。大豆(鶴姫)を蒸煮することで,ゲニスチン,ダイジン,グリシチンが増加した。しかし,室での発酵期間に減少し,熟成期間では,代わってゲニステイン,ダイゼインが増加した。また,室での1週間の発酵期間に,プロテアーゼの働きにより,遊離アミノ酸,特にグルタミン酸やペプチドが増加した。炎天下における2ヶ月間の熟成期間には,徐々にメラノイジン関連物質が産生された。またラジカル消去活性は,ポリフェノール含有量と高い相関を示したが,ラジカル消去活性に寄与している主な成分はメラノイジン関連物質であることが示唆された。