著者
林 秀之 山本 克也 水馬 義輝 佐藤 英男 塩田 良子 野村 知未 北 和貴 彦田 星香 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】ダッチオーブンは,厚い鋳鉄製の鍋であり,屋外ではふたの上に炭火を乗せて上下から加熱調理する小型オーブンのような鍋である。屋内では炭火ではなくガスコンロの魚焼きグリルにダッチオーブンを入れることで高温加熱を行うことが可能であり,材料を入れるだけの簡単さからその調理方法への関心が高まっている。しかし,ガスダッチオーブンで調製した料理に関する報告はなく,その嗜好特性等は明らかではない。本研究では,ガスダッチオーブンで調製したいくつかの料理の嗜好特性とうま味成分量について報告する。<br />【方法】ガスコンロの魚焼きグリルを熱源として,ダッチオーブンでアクアパッツァおよびラタトゥイユを調製した。アクアパッツァは11-13分の加熱と10分の余熱調理を,ラタトゥイユは14-18分の加熱と30分の余熱調理を行った。また,フライパン,片手鍋を用いた従来法も比較として行った。食材からのうま味成分の浸出の程度について,煮汁のアミノ酸分析,イノシン酸・グアニル酸分析をHPLCで,ナトリウム分析をICPで行った。官能評価は煮汁の塩分濃度が同じになるよう調整した試料について,女子大学生をパネルとして行った。<br />【結果】ダッチオーブン加熱は従来法と比較して,出来上がり重量,煮汁重量が多く,食材重量が少なかった。また,煮汁に含まれるグルタミン酸,ナトリウム量が多く,官能評価において,味が深く,好ましいとされた。この結果は,ダッチオーブン加熱が,煮汁や食材に由来するうま味成分,ナトリウム量を多く浸出することで,高い嗜好特性と料理に添加する食塩量を減少できることを示したものであり,高温かつ緩慢加熱であるダッチオーブンによる調理が食材の組織変化を促したためと推察された。
著者
野村 知未 松井 元子 大谷 貴美子 村元 由佳利 古谷 規行
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.464-469, 2016-10-15 (Released:2016-11-30)
参考文献数
21

栽培温度の異なる3つの試験区でエダマメ2品種を栽培し,マルトース生成量に関与するβ-アミラーゼ活性およびデンプンの糊化温度の影響を検討した.‘富貴’ は,子実肥大期の温度が低い25°C区がほ場区に比べて,β-アミラーゼ活性の強さが有意に(p<0.01)高くなったが,‘新丹波黒’ の場合,栽培温度の違いにより活性の強さは変化しなかった.一方,デンプンの糊化温度は両品種供に3つの試験区で有意に(p<0.01)異なり,子実肥大期の温度が高いほど大きく上昇した.これらのことから,エダマメ加熱後のマルトース生成量は,子実肥大期の温度に大きく影響を受けることが認められた.
著者
杉山 寿美 水尾 和雅 野村 知未 原田 良子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.411-416, 2011 (Released:2014-04-25)
参考文献数
20

本研究は,長時間の湿式加熱におけるコラーゲンの構造変化(酸可溶性コラーゲン(ASC),ペプシン可溶化コラーゲン(PSC),不溶性コラーゲン(ISC)量の変化)とそれに伴う脂質量の変動,さらに植物プロテアーゼの影響について明らかとすることを目的とし,豚角煮を試料として実験を行った。蒸し加熱後には,ISCは認められず,ASCは有意に増加,PSCは有意に減少した。その後の煮る過程でのPSCの減少は有意ではなかった。生姜搾汁あるいはキウイフルーツ果汁を添加した場合,蒸し加熱後ではコントロールと同程度であったが,続く煮る過程ではPSCは減少し,キウイフルーツ果汁を添加した場合にコントロールよりも有意な減少を示した。この煮る過程におけるPSCの減少は,蒸し加熱前および蒸し加熱初期に植物プロテアーゼがコラーゲンのテロペプタイド部位および熱変性部位に作用した結果であると推察された。いずれの条件でも調理後の脂肪およびコレステロールは減少した。キウイフルーツ果汁を添加した場合は,コントロールよりも有意な脂肪量およびコレステロール量の減少が認められた。これらのことから,豚塊肉の調理では,加熱によりコラーゲン繊維は脆弱化するものの,脂肪の多くは保持されること,キウイフルーツ果汁を添加した場合にコラーゲン繊維が脆弱化し,脂肪およびコレステロールの溶出が増加することが示された。