著者
下藤 悟 大谷 貴美子 松井 元子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.335-342, 2013 (Released:2013-12-13)
参考文献数
20

銅ボウルで調製した泡立て卵白の特性について,銅イオンとオボアルブミンの反応性の観点から検討した。銅イオンは,泡立て卵白の起泡性には関与していなかったが,安定性に関与していた。動的粘弾性測定より,銅ボウルで調製した泡立て卵白は,ガラスボウルで調製したものと比べて,粘弾性が大きく,より安定な構造であることが示された。オボアルブミンの役割を明らかにするために,銅イオンとの反応性を検討した。銅イオンが存在することで,オボアルブミン溶液の遊離SH基量と疎水性の減少および,粘弾性向上が示された。さらにSDS-PAGEより分子量の大きなタンパク質が検出されたことから,銅イオンはオボアルブミンの分子間における架橋形成を促進していることが示唆された。銅ボウルで泡立て卵白を調製すると,銅イオンにより形成されたS-Cu-S架橋によって泡立て卵白の膜の粘弾性が向上する。このことによって不均化や薄膜化による破泡を抑え,泡沫安定性を向上させたと考えられる。
著者
笈田 幸治 松井 元子 大場 将生 村元 由佳利 大谷 貴美子 本杉 日野
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.287-293, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

ブドウ‘シャインマスカット’は皮ごと食べるブドウとして販売されているが,その食べやすさは無核化処理や灌水などの栽培条件によって異なる.皮ごと食べやすさを向上させるため,満開期における25 ppm GA3に加用するCPPU処理濃度の違いが,果粒の物性,剥皮厚および皮ごと食べたときの官能評価に及ぼす影響について検討した.試験区としてCPPUの無処理,2 ppm,5 ppmおよび10 ppm区の4試験区を設定した.果粒の物性分析の結果,無処理と2 ppm区との間に差はみられなかったが,5 ppmおよび10 ppm区では無処理および2 ppm区よりも初めの嚙みきり時に果粒の歪みが大きく,咀しゃく中の皮切れが悪い品質であると評価された.また,果粒の剥皮厚は無処理と2 ppm区との間に差はみられなかったが,処理濃度が高くなるに従って大きくなった.果粒を皮ごと食べたときの官能評価の結果,10 ppm区での評価は他の試験区に比べて低く,これは物性分析の結果と一致していた.また,5 ppm区では10 ppm区ほど大きな差はなかったが,無処理および2 ppm区よりも官能評価は低い傾向がみられた.以上のことから,満開期におけるCPPUの5 ppmおよび10 ppm濃度処理は‘シャインマスカット’果粒の皮ごと食べやすさを大きく損なうことが明らかとなった.
著者
岡崎 章子 當具 摩弓 冨田 圭子 松井 元子 大谷 貴美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.1030, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】食べ物のおいしさは、食物本来の化学的・物理的性質のほかに、食べる側の食体験や社会的・文化的背景の影響を強く受ける。そのおいしさを評価するのに、前者は機器分析によるさまざまな客観的評価法が研究されているが、おいしさを表現することばについてはほとんど研究されていない。本研究の目的は、食べ物のおいしさの表現用語と文化的背景との関係を明らかにすることである。ここでは、まず日本で幅広い世代に知られる料理漫画「美味しんぼ」の中で使用される食べ物のおいしさの表現用語に着目し、分類した結果を報告する。【方法】料理漫画「美味しんぼ」(小学館)1~102巻(1983~2008年)を調査対象とし、その中で使用されている食べ物のおいしさを表現する用語を抜き出し、感覚別、調理法別、食品群別、料理国籍別等にカテゴリーに分類、分析した。【結果】食べ物のおいしさを表現する用語を抽出したところ、11,888語あった。感覚別で最も多かったのは味覚関連用語(4,135)で、それに次いで嗅覚(2,166)、触覚(1,967)、視覚(895)に関連する用語であった。また感覚(五感)には分類されないが、製造法や原産地など食の安心・安全性に関連した用語も抽出され、知識・経験に基づく用語もおいしさを表現する上で重要な役割を果たしていることが示唆された。料理国籍の違いによって表現用語に大きな差は認められなかったが、調理法の違いによる差が認められた。また、「美味しんぼ」では魚介類に関連する用語が多く、そのおいしさを表現するのに、生臭みなどの嗅覚関連用語や、鮮度、主食との相性などに関する用語が用いられた。今後は、例えば異なる文化的背景における魚介類のおいしさを表現する用語について、比較検討を行う予定である。
著者
安東 三喜 前田 昭子 松井 元子 永野 君子
出版者
帝塚山大学
雑誌
帝塚山短期大学紀要. 人文・社会科学編・自然科学編 (ISSN:1344915X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.197_a-191_a, 1994-03-01
被引用文献数
1

給食管理実習の献立に喫食者の嗜好, 盛り付け量, 調味, 外観, 質などの要因がどのようにかかわっているのか, 主食に焦点を当て, 要因分析を試み, 主食量はBMI別に差が見られると仮説をたてて調査分析を行なった。対象は本学栄養士コース1年, 2年生で1993年4月∿7月に実施し次の結果を得た。1)白飯6種, 変り飯8種の平均盛り付け量は264gで, チキンカレー416gが最も多く, 親子丼, ハヤシライスの順であった。2)盛り付け量の小さいのはA-2の白飯200gであった。3)変わり飯の喫食率は高く, チキンカレーは100%に近い喫食率であった。4)主食と献立への総合評価は, 分量が「やや多い」, 外観(料理のできばえ)が「ややよい, 普通」であった。5)調味・塩味では主食は「ちょうどよい, ややうすい」と評価しているが, 献立全体では「やや濃い」と評価している。6)外観(料理のできばえ)は, ちらしすしが「よい」評価であった。7)主食量とBMIは, BMIが大きくなると平行して盛り付け量もやや多くなることが知られた。
著者
村元 由佳利 山口 由貴子 冨田 圭子 鵜飼 治二 松井 元子 大谷 貴美子
出版者
Japanese Society of Shokuiku
雑誌
日本食育学会誌 (ISSN:18824773)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.207-219, 2015-04-25 (Released:2015-07-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Poor dietary behavior among elementary school students in Japan has recently become a cause of concern. Kyoto’s traditional food culture is well known for its healthy, high quality, seasonal ingredients, and thus increased awareness among students may promote improvements in their dietary behavior. Therefore, we developed a shokuiku (food education) program consisting of a series of lectures and practical sessions based on Kyoto’s food culture. We then conducted the program on total of 20 classes of sixth-grade students in a public elementary school in Kyoto to investigate whether increased awareness of the benefits of Kyoto’s food culture would improve their dietary behavior.After the program, we assessed a number of factors related to dietary behavior. Among these factors, we found that the percentage of students who were able to savor meals using all 5 senses increased from 29.7% to 79.0%, and the percentage of students who paid more attention to table manners at mealtime increased from 10.9% to 40.3%. Furthermore, they came to view Kyoto’s food culture, which is representative of Japan, i.e., having a beautiful seasonal presentation, a spirit of treasuring the inherent color and flavor of the ingredients, and accompanied by a spirit of hospitality known as motenashi no kokoro, as beneficial. More than 90% of the students reported appreciating Kyoto’s food culture and feeling a sense of pride to be residents of the city. They also considered motenashi no kokoro to be its most important principle. In addition, a questionnaire conducted on the students’ parents (response rate, 66.2%) showed that over 50% observed an increase in their child’s interest in cooking and daily dietary habits at home. A separate questionnaire conducted on school teachers showed that the shokuiku program was suitable and effective for sixth-grade students, and that a visit to a restaurant specializing in Kyo-ryori, the cuisine of Kyoto, which was part of the program, allowed the students to reflect on what they had learned at school and to develop more interest in the benefits of Kyoto’s food culture. Moreover, they developed an awareness of healthy dietary behavior.These results suggest that shokuiku programs can improve dietary behavior in elementary school students.
著者
饗庭 照美 尾崎 彩子 李 温九 章 貞玉 康 薔薇 松井 元子 南出 隆久 大谷 貴美子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.180-186, 2002-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
18
被引用文献数
2

要約本研究では,2種類の塗りの皿(黒色,朱色)に物相型を用いて形作った飯を盛り付けて日韓の学生に示し,それらに対するイメージ特性をSD法によって調査した. 物相型は日本料理で伝統的に用いられている丸梅,もみじ,末広と,日本料理では用いられることのないハート型を加えた5種類を使用した. パネルは,日韓の食物系の女子学生である. 評価尺度は「上品な - 下品な」,「美しい一みにくい」などの形容詞対30項目を設定し,7段階評価で行った. その結果,日本と韓国では異なるイメージがあることが示されたため,統計処理にSPSSを用いて因子分析を行った. 日本で抽出された第1因子(α=.799)を構成する形容詞対は『情緒的感覚の因子』,第2因子(α=.779)の形容詞対は『華やかさの因子』と名付けた. 韓国で抽出された第1因子(α=. 899)は『嗜好性の因子』,第2因子(α =.844)は『目立ちやすさの因子』と名付けた. 抽出されたこれらの因子について日韓で比較してみると,日本において物相飯は季節感やハレ(めでたさ)を演出している情緒があるものというイメージが示唆された. しかし,韓国では物相飯を単に形のイメージとしてとらえ,その形の嗜好で評価が行なわれていた. 本研究から,食物の形や色に対する評価は,日常的に接しているその国の食文化に影響を受けていることが示唆された.
著者
野村 知未 松井 元子 大谷 貴美子 村元 由佳利 古谷 規行
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.464-469, 2016-10-15 (Released:2016-11-30)
参考文献数
21

栽培温度の異なる3つの試験区でエダマメ2品種を栽培し,マルトース生成量に関与するβ-アミラーゼ活性およびデンプンの糊化温度の影響を検討した.‘富貴’ は,子実肥大期の温度が低い25°C区がほ場区に比べて,β-アミラーゼ活性の強さが有意に(p<0.01)高くなったが,‘新丹波黒’ の場合,栽培温度の違いにより活性の強さは変化しなかった.一方,デンプンの糊化温度は両品種供に3つの試験区で有意に(p<0.01)異なり,子実肥大期の温度が高いほど大きく上昇した.これらのことから,エダマメ加熱後のマルトース生成量は,子実肥大期の温度に大きく影響を受けることが認められた.
著者
下藤 悟 松井 元子 村元 由佳利 森山 洋憲 加藤 麗奈 甫木 嘉朗 上東 治彦
出版者
Japan Society for Food Engineering
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.37-50, 2020-03-15 (Released:2020-03-27)
参考文献数
26
被引用文献数
3

食品の品質の総合評価を解析するには,官能評価データと物理化学的なデータを用いるのが一般的である.従来の解析手法としては,線形解析である重回帰分析(MRA)や部分的最小二乗回帰(PLS)を行っているものが多い.しかしながら,食品の味の総合評価は,食品の成分などの特徴に対して非線形な関係があることは経験的にもよく知られている.一方,近年では非線形的な解析を行う手法として,データマイニングの分野において,機械学習が採用されており,柔軟性があり,予測精度が高い解析ができるといわれている.そこで本研究では,官能評価による日本酒の品質の総合評価に対する物理化学的特徴の寄与をより明確にすることを目的とし,その関係性の解析に機械学習を適用した.一般的な統計手法であるMRA,PLSと代表的な機械学習手法である人工ニューラルネットワーク(ANN),サポートベクターマシン(SVM)およびランダムフォレスト(RF)で比較を行うことで,より正確な予測モデルを得ることができると考えた.さらに,評価傾向の定量化のために機械学習から得られる変数の重要度とMRAから得られる回帰係数を組み合わせて考察を行った.試料には日本酒(純米吟醸)173品を用い,官能評価は35名の熟練されたパネリストによって行った.品質は5段階で評価した.物理化学的特徴を得るために,核酸関連物質成分や香気成分の分析に加えて,酸度,アミノ酸度,グルコース含量といった一般的な分析,Brix,導電率,pHといった簡易分析を行った.官能評価スコアへの物理化学的特徴の寄与は,回帰分析によって検討した.説明変数に物理化学的特徴の分析値を,目的変数に個々のパネリストの個々の評価スコアと平均スコアを用いた.解析にはRを用いたi).回帰分析は,MRAとPLS,機械学習(SVM,ANNおよびRF)により行った.各解析にはcaretパッケージを使用し,解析条件の最適化を行った.回帰分析の精度の検証は,過学習を避けるためにtrainデータとtestデータに分割して行った.まず,全体の90%に当たる158品をトレーニングデータ,残りの10%に当たる15品を精度検証用データにランダムに分割した.次に,トレーニングデータを用いて回帰分析を行い,予測モデルを得た.得られた予測モデルから,テストデータ(予測モデルの作成に使用していないデータ)の総合評価の予測値を計算し,実測値と比較し,各分析手法の精度を調べた.さらに,トレーニングデータについても同様に予測精度を比較することで,予測モデルのフィッティングについて調べた.予測精度は,許容範囲内の誤差に含まれる試料の割合,平均絶対誤差(MAE),二乗平均平方根誤差(RMSE)で評価した.これら4つの解析方法の結果から,MRAよりも機械学習(とくにRF)の方が回帰モデルのフィッティングがよく,日本酒の品質の総合評価を高い精度で解析できる可能性が示唆された.また,MRAで得られた回帰係数とRFで得られた重要度から,評価スコアに対する各物理化学的特徴の寄与についても検討した.MRAで得られた回帰係数は,符号により評価への影響の良し悪しが判別できる.また,絶対値が大きいほど評価への寄与も大きいと考えられる.一方,RFで得られた重要度は,0~100の値のため,評価へ影響の良し悪しは判別できないが,値の大きいものほど予測精度に大きく影響することを表す指標である.個々のパネリストのスコアの解析から,日本酒の品質評価にカプロン酸エチルと酢酸イソアミルといった香気成分大きく寄与していることが示された.さらに回帰係数と重要度の値を組み合わせて評価傾向を確認したところ,総合評価と成分濃度には非線形関係のものがあることが示唆された.以上の結果から,日本酒の品質の総合評価における傾向について,MRAとRFを組み合わせることでより明確に捉えることができた.