著者
榎園 裕崇 伊藤 毅志 古郡 廷治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.85-86, 1996-09-04
被引用文献数
1

我々は日常生活において、複数の人間で話し合いの場を持つことがしばしばある (例:「冠婚葬祭の準備」「忘年会の計画」「大掃除の打ち合わせ」など)。これは、一種の意志決定型の会議と見ることができるが、このような会議で扱う議題には、議題がさらにいくつかの副議題に分割される複雑な問題構造を持つものがある(図1:以下、多層構造議題と呼ぶ)。このような多層構造議題を議論する場では、現在話し合っている問題の構造を正確に把握した上で、さらにその議題に固有の世界知識も有している人間が司会進行を行うことにより、より円滑で有意義な会議が期待できるだろう。本研究では、多層構造議題の会議を円滑に進行するために、人間同士の議論に加わり、司会進行を行うシステムの開発を目標にしている。実現するシステムは、地理的に分散した環境下でリアルタイムの会話や議論を行うためのツール上に組み込むことを考えている。実際、phoneやchatといった、複数の人間で文字ベースの会話を行うためのツールなどは、日常のちょっとした話し合いにも一般的に利用されているので、本システムの実現の意義は大きいと考える。本報告では、実際の会議実験で得られたデータから、まず会議空間を3領域に分類し、その中の議論空間を記述するためのモデルについて詳述する。
著者
伊藤 毅志 古郡廷治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.53, pp.1-5, 1999-06-24
参考文献数
2

従来、人間の問題解決において、問題を解くために、色々な図を描いたり道具を使ったりするような、様々な別の表現を持っていることが問題解決に有効に働くことは指摘されてきた。本稿では、思考支援を促すために、将棋の駒の効きを視覚的に示す新しい表現を提案する。我々は、この新しい表現をコンピュータ上で実現し、4つのレベル(初心者、初級者、中級者、上級者)の将棋プレーヤーにこのシステムを使わせて、思考過程に与える影響について調査した。その結果、初級者が最もこのシステムを積極的に利用しようとする過程が見られ、システムに対する評価も高かった。It is known that the problem solver who has various kinds of representations of the problem like diagrams gains the advantage to solve it. In this article, we propose a new visual representation on SHOGI that shows on colors the move of pieces of a position. We realized this system on computer to examine how four levels of players (beginners, novice, middle-grade and expert )use it and how they are influenced by using it. As the result, novice players took a most positive attitude about this system and they prized it most highly.
著者
伊藤 毅志 古郡 廷治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.406-407, 1997-09-24

通信技術やマルチメディア技術の発達に伴い, グループウエアの研究も盛んになってきている。それにつれて, 教育工学の分野では, 共同学習や協調学習がテーマとなり, 様々な研究が行われるようになっている。しかし, 共同学習の効果に関しては, 様々な報告がある上に, 共同学習場面における学習者の認知面での研究は立ち後れていると言わざるを得ない。一方, コンピュータチェスの分野では, ディープブルー(コンピュータチェス)が, ついにカスパロフ(チェスのグランドマスター)に勝利を収め, 将棋の分野でも日々コンピュータの棋力は向上している。しかし, それらのソフトは, 強さを求めるあまりに, それに勝てない人間からは「ただ自分より強いだけのマシン」となり, ユーザーインターフェースという観点からは, 面白くない対戦相手になっている。本研究では, 共同学習の例として「将棋の感想戦」に注目した。将棋の感想戦では, 「学習者は比較的高い学習意欲を持っていること」「学習効果があることが経験的に知られていること」から効果的な共同学習が起こっている好例であると考えた。この感想戦機能を, 将来, 強い将棋ソフトに備えることができれば, 多くの将棋の学習者に貢献できると考えている。また, 同様の知見を一般の教育システムへ応用することも考えられる。我々は, そのための基礎研究として, 実際に二人の被験者を使っておよそ2ヶ月半にわたって将棋を学習させ, 感想戦がどのように学習過程に影響を与えているのかを発話プロトコルデータを取って, その過程を認知科学的に分析して調査した。その結果をもとにして, 学習者の共同学習時の認知モデルの構築を目指していく。
著者
伊藤 毅志 杉本 新也 古郡廷治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.23, pp.33-40, 1995-03-06

本稿では、マルチエージェントによる協調問題解決の例として四人将棋を挙げる。四人将棋では、状況の変化に対応して各プレーヤーの役割が変わる完全情報確定ゼロ和ゲームである。四人将棋において協調的な思考がどの様に実現されているのかについて考察した。(四人将棋には、2対2でチームを組み闘うダブルスと、全員敵同士になるシングルスの2種類があるが、本報告では、特にダブルスにおける協調問題解決行動を扱った)まず、四人将棋をコンピュータ通信上で実現するシステムの構成を説明した。そして、そのシステムを用いて、ダブルスのパートナーと対話できる条件と、対話できない条件の2条件の心理実験を行った。対話ができる条件では、指し手の方針や、読みが、対話ができない条件では、パートナーの方針、読みを予想することによって補われ、協調的な思考の基となっていることが分かった。この心理実験の知見をもとに、四人将棋におけるプレーヤーの思考過程を説明する認知モデルの骨子を提案した。本稿は、本年1月にHI研究会で報告した「四人将棋における暗黙のコミュニケーションに関する研究」の原稿をもとに加筆、修正したものである。We deal with the cooperative problem solving process in playing "four-players-SHOGI", a two-against-two (or sometimes four-way) game in which two persons on side cooperate each other to win the game. We explain firstly the organization of a four-player-SHOGI to be implemented on computer network. We analyze secondly the results of an experiment that show how the two players on the same side cooperate each other explicitly when allowed and implicitly when not allowed. Based on the analysis, we offer lastly acognitive model that explains players' mental behavior for making a move in the for-players-SHOGI. This paper is revised one basis on "Implicit Communication in Playing 'Four-Playing-SHOGI'", published in HI-58-4 (1995).
著者
柿沼 秀和 伊藤 毅志 古郡 廷治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.275-276, 1995-09-20

本稿の目的は,作文の添削システムを開発することである.作文の添削には多大の労力と時間を必要とする.形式的な間違いを指摘したり,訂正するだけでも,教師の負担は大きい.文章を書く能力の未発達な生徒は,作文上でいくつかの基本的な「誤り」をおかす.その誤りには,明白な「間違い表現」と,「不適切表現」とがある.教師は添削の過程で,前者の誤りは訂正し,後者の誤りは指摘した上で,書き換えを促すか,訂正案を示す.本稿で述べる作文添削システム,TENSAKUは,この教師の役目を果たすものである.
著者
伊藤 毅志 古郡 廷治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.37-38, 1994-09-20

我々が解いている問題は、大別すると2種類に次の2つに分類される。一つは、誰が解いても(正解であれば)同じ答えに至る収束的問題であり、もう一つは、解く人によって解答が異なったり、そもそも正解などない発散的問題である。従来の認知科学的問題解決研究では、ハノイの塔などのパズルの問題をはじめとして、クイズや数学や物理の問題などの収束的問題が殆どであった。この理由は、これらの問題は良定義問題(問題の目標状態、操作子が明確な問題)であり、被験者の行動がある程度実験者にも予想されるために、研究の対象としては扱いやすかったからと考えられる。それに対して、発散的問題の方は、近年ようやく少しずつ研究として扱われつつあるにすぎない。しかし、実際の我々の日常生活を考えてみると、殆どが悪定義問題であるばかりか発散的問題でもあるような問題に囲まれていると言える。例えば、「お昼に比較的安くてでおいしいものを食べる」とか「普段着になるようなズボンを選ぶ」などの日常的問題は操作子も不明確であるし、人によって結論の異なる発散的問題である。このように、発散的問題の研究が意義深いものであることは明確だろう。本研究では、このような発散的問題を解決する際に視覚的イメージ(特に作図)が、どのように問題解決過程に影響を与えているのかについて考察していく。
著者
伊藤 毅志 古郡廷治
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.93(1996-CE-041), pp.49-56, 1996-09-20

本稿では、自立的学習を支援する新しいCAIシステムのための基礎研究について説明する。このシステムは、間接指導と自己観察の二つの指導法を組み込んだシステムである。まず、間接指導と自己説明について説明し、実際の教育実践活動の結果をもとに、さらに考察していく。また、これまで提案してきた間接指導に基づいたCAIシステムについても説明し、自己観察をこのシステムに組み込んだ新しいシステムの全体像を紹介する。
著者
小嶋 秀樹 古郡 廷治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.43-44, 1991-02-25

自然言語の"情報の部分性"は,伝達の効率性(efficiency)を保証するものであると同時に,曖昧性(ambiguity)の原因でもある.効率性と暖昧性は表裏一体であり,これらは同音性や多義性などの言語現象としてテキスト表層に現われている.テキストの解釈過程には,その表層に明示された構文的な情報だけでなく,次にあげる情報が必要となる.a)知識:世界に関する知識b)文脈:先行文脈=テキストの先行部分の解釈結果経験文脈=解釈者のもつ過去の経験テキストの解釈結果は,文脈にただ追カロされるだけなく,文脈を(過去にさかのぼって)変化させる力をもっている.本稿では,文脈を構成する要素の意味内容を意味ネットワーク(つまり知識)上の活性パターンによって表現する方法を提案し,これに基づいたテキスト解釈過程-とくに暖昧性の解消過程-をモデル化する.本モデルでは,文脈の要素の意味内容や要素間の関係に暖昧性を内在させ,各要素を意味ネットワーク上でパターン的に相互作用1)させることによって,漸進的(incremental)2)な曖昧生の解消を実現している.
著者
彭渠江 高倉 佐和 古郡廷治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報学基礎(FI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.20, pp.59-66, 2001-03-05

本稿では、単語の意味的曖昧性を解く手法の開発と、それをもとにして行った曖昧性解消の実験結果を報告する。テキスト中の単語の語義(sense)は、一定の文脈の中で、その単語とよく共起する他の単語と高い相互情報量をもつ。この特徴を使い、単語(w)が使われている文脈中で出現し、wと類似度の高い単語のベクトルと、wがもつr個の語義のそれぞれが使われている文脈中で出現し、wと類似度の高いk個の単語のベクトルとの間の相互情報量を計算し、その値が最も高くなった密度値と結合している語義をwの語義として採用する。この手法によって行った実験では、91.5%の高率で多義語の正しい語義を特定することができた。We describe a method and its experimental results for word sense disambiguation that is based on a statistical measure of word similaritites. First, we obtain contextual-similarity vectors for the senses of a polysemous word using a corpus. Second, we define also the contextual representation for the same word appearing in text. Third, we do a calculation of distributional matrix between each contextual-similarity vector and the contextual representation for the word to be disambiguated. Fourth and finally, comparing the values of distributional matrices, we select the sense with the highest value as the meaning of the polysemous word. An experiment shows that the rate of finding correct word senses exceeds over 91%.