著者
辻 雅善 各務 竹康 早川 岳人 熊谷 智広 日髙 友郎 神田 秀幸 福島 哲仁
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.B12008, (Released:2013-02-05)
被引用文献数
3 8

目的:福島原発事故発生以降,毎日約3,000人の作業員が事故収束のために従事している.通気性の悪い防護服を着用した作業員に熱中症の頻発が懸念された.今後の原発作業員における熱中症予防対策の一資料とすべく,原発事故以降に発生した熱中症について分析を行った.対象と方法:福島労働局で把握した福島原発事故収束作業員の2011年3月22日から9月16日までに発生した熱中症事案43例を対象とした.熱中症発生数を年齢,発生月,発生時刻,気温,湿度毎に検討し,また熱中症の重症度の検討も実施した.重症度をⅠ度とⅡ度以上の2群に分け,年齢,気温,湿度に対してMann-Whitney U検定を行い,さらに,年齢(<40歳,40歳≤),気温(<28℃,28℃≤),湿度(<75%,75%≤),クールベスト着用の有無に対してχ2検定およびロジスティック回帰分析を行った.検定は両側検定,有意水準5%とし,統計ソフトはSPSS statistics 17.0を用いた.結果:熱中症が最も多く発生した年齢は40代(30.2%),次いで30代(25.6%)であり,発生月は7月(46.5%),発生時刻は7時から12時(69.8%),気温は25℃以上(76.7%),湿度は70%から80%(39.5%)であった.重症度Ⅱ度以上の者は10例,内5例が6月に発生していた.統計解析の結果,全因子において重症度の違いに有意差は認められなかった.考察:一般労働者の熱中症の好発年齢は45歳から60歳であるが,原発事故収束作業員では30・40代に相当数が認められており,比較的若年齢層においても熱中症予防対策が重要であることが示唆された.また,厚生労働省により夏季の午後は原則作業を中止する措置がとられたが,原発作業員の熱中症の好発時刻は午前中に集中しているため午前中の予防対策も必要である.重症度Ⅱ度以上が10例中5例も6月に集中していることから,6月から熱中症予防対策を実施すべきであると考える.今回,発生因子において重症度の違いに有意差が認められなかったのは,他の要因が関与している可能性,あるいは例数が少なかったためと考える.本研究結果の特徴を踏まえ,今後,原発事故収束作業員の熱中症予防対策を実施することが必要である.
著者
佐藤 勢 早川 岳人 神田 秀幸 熊谷 智広 各務 竹康 辻 雅善 日高 友郎 遠藤 翔太 森 弥生 福島 哲仁
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.133-137, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

〔目的〕老健施設入所者の転倒状況を調査し,時間帯別に分析を行い,転倒者の個人要因の特徴を明らかにすること.〔対象と方法〕福島市の老健施設で初回転倒した94名を対象者とし,性,年齢,身長,体重,要介護度,活動分類,認知症の分類,ADL評価,握力,長谷川式スケール,10 m歩行,BPSD,転倒場所について時間帯別に比較を行った.〔結果〕転倒者は9:01~17:00で39名,17:01~1:00は32名,1:01~9:00は23名の計94名であった.1:01~9:00の転倒者は低身長,BPSDの夜間不眠,廊下での転倒が有意に多かった.〔結語〕低身長,夜間不眠,廊下通行の特徴を持つ者は深夜から早朝にかけて転倒する可能性が高いため,注意が必要である.
著者
金子 栄 各務 竹康 松尾 裕彰 直良 浩司 森田 栄伸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.1250-1257, 2014

【背景・目的】アトピー性皮膚炎は慢性・反復性経過をとる疾患であるために,継続した治療が必要である.併せて患者の生活に配慮した指導が重要である.これまでの医師及び患者に対しての調査からは「外用薬の塗り方の指導」が重要であることが判明した.今回,「外用薬の塗り方の指導」について重要な役割を担う薬剤師に指導についてのアンケート調査を行った.【方法】島根県および広島県の病院および調剤薬局にアンケートを配布し,勤務する薬剤師全員にアンケートを依頼した.アンケートは指定した項目ごとに指導しているものを選択する形式とし,自由記述欄も設けた.【結果】集まった548通(回収率13.8%)を解析した.皮膚科の処方箋を扱わない薬剤師も多く, 1日で取り扱う処方箋枚数の中央値は1枚であった.ステロイド外用薬で最も多く指導している項目は,「塗布部位」(86%)でついで「回数とタイミング」(68%)であった.「副作用が出ないように少量塗布を指導」も45%の人が選択していた.タクロリムス軟膏については副作用の「ヒリヒリ感の説明」が最も多く(52%),ステロイド外用薬と保湿剤にくらべ,「パンフレットにて指導」(27.3%)が多くみられた.「実際に塗って塗り方を指導」は,どの外用薬でも少なかった.自由記述欄での医師への要望は用法用量の確実な記載と外用量指示が多く,失敗談の欄では自身の指導不足や副作用を説明することにより患者が外用しなかったことが挙げられていた.【結語】今回のアンケート調査により,薬剤師は外用薬の用法用量の指導を最も重視していることが明らかとなった.クロス集計からは,アトピー性皮膚炎診療ガイドラインを知っている薬剤師が有意に様々な指導を行っていることが判明し,まずは薬剤師へのガイドラインの普及が重要と考えられた.
著者
辻 雅善 各務 竹康 早川 岳人 熊谷 智広 日髙 友郎 神田 秀幸 福島 哲仁
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.53-58, 2013-03-25 (Released:2013-04-27)
参考文献数
23
被引用文献数
3 8

目的:福島原発事故発生以降,毎日約3,000人の作業員が事故収束のために従事している.通気性の悪い防護服を着用した作業員に熱中症の頻発が懸念された.今後の福島原発事故収束作業員における熱中症予防対策の一資料とすべく,福島原発事故以降に発生した熱中症について分析を行った.対象と方法:福島労働局で把握した福島原発事故収束作業員の2011年3月22日から9月16日までに発生した熱中症事案43例を対象とした.熱中症発生数を年齢,発生月,発生時刻,気温,湿度毎に検討し,また熱中症の重症度の検討も実施した.重症度をI度とII度以上の2群に分け,年齢,気温,湿度に対してMann-Whitney U検定を行い,さらに,年齢(<40歳, 40歳≤),気温(<28°C, 28°C≤),湿度(<75%, 75%≤),クールベスト着用の有無に対してχ2検定およびロジスティック回帰分析を行った.検定は両側検定,有意水準5%とし,統計ソフトはSPSS statistics 17.0を用いた.結果:熱中症が最も多く発生した年齢は40代(30.2%),次いで30代(25.6%)であり,発生月は7月(46.5%),発生時刻は7時から12時(69.8%),気温は25°C以上(76.7%),湿度は70%から80%(39.5%)であった.重症度II度以上の者は10例,内5例が6月に発生していた.統計解析の結果,全因子において重症度の違いに有意差は認められなかった.考察:一般労働者の熱中症の好発年齢は45歳から60歳であるが,福島原発事故収束作業員では30・40代に相当数が認められており,比較的若年齢層においても熱中症予防対策が重要であることが示唆された.また,厚生労働省により夏季の午後は原則作業を中止する措置がとられたが,福島原発事故収束作業員の熱中症の好発時刻は午前中に集中しているため午前中の予防対策も必要である.重症度II度以上が10例中5例も6月に集中していることから,6月から熱中症予防対策を実施すべきであると考える.今回,発生因子において重症度の違いに有意差が認められなかったのは,他の要因が関与している可能性,あるいは例数が少なかったためと考える.本研究結果の特徴を踏まえ,今後,福島原発事故収束作業員の熱中症予防対策を実施することが必要である.