著者
吉原 崇恵 加賀 恵子 鈴木 裕乃
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.80, 2008

目的 家庭科は体験的な学習をとおして、生活のしくみやよりよく生活するための知識や技術を習得することを目指してきたそのために実験や実習、そのほかの多様な体験的学習の方法も開発してきた。なかでも実習授業は子どもが気づき、考え、わかる、できることを育てる問題解決学習過程の中で、導入、展開あるいはまとめの段階において位置づけられ、豊かな教材と価値を生み出してきたと思われる。しかしながら、子どもたちの手が「虫歯」になっただけではない。「自分が傷ついたり」「他人を傷つけたり」する、またはその前段階の事例も多く、指導過程において危険回避の指導スキルが求められてきた。各教科書において「安全喚起マーク」のページやスペースを設けられているのも工夫の証である。ただしこの「安全喚起」の内容は、「ガスコンロのそばに燃えやすいものを置かない」「包丁は持ったまま歩き回らない」という表現になっている点が特徴的である。危険を予知し、回避する能力の育成とそのための指導の方策を追究しなければならない。そのために実習授業の観察記録をもとにKYTシートを作成し、危険箇所チェックと危険度の評価調査を行っている。昨年の報告では、大学生の教育実習経験者と未経験者で比較した。その結果、二者の間では大きな違いは見られなかった。今年度は中学生、小学生自身の危険予知の実態を把握することを目的とした。方法 調査内容は調理実習時間と被服製作時間における危険な場面をイラストによって想定したKYTシートを用いた。また危険度の評価をさせた。危険な場面の想定は次のとおりである。調理実習の場合。1.ザルから水をこぼしている。2.包丁の使い方がよくない。3.(調理台の)扉が開いている。4.まな板が机から出ている。5.火の傍に燃えるものがある。6.歩く時の包丁の持ち方が良くない。被服製作実習の場合。1.よそ見しながらアイロンを使っている。2.はさみを振り上げている。3.アイロンがコンセントにつながれたままになっている。4.ミシンの使い方。5.マチ針が出しっぱなし。6.ミシンの電源が入ったまま針を取り付けている。危険度の評価は高い順に4段階である。a.すぐにやめさせる。b.状況が変わると重大事故、状況を見て注意。c.いつか事故になるかもしれないので後で注意。d.事故にはならない。調査対象は小学校が浜松市公立小学校、附属小学校各1校(計132名)。中学校は附属浜松中学校、焼津市、藤枝市公立中学校(計205名)。対照として教員免許取得希望大学生(計42名)である。調査時期は2008年2月~3月。結果と考察 危険度a評価について調理場面では火の傍に燃えるものを置かない、歩く時の包丁の持ち方が多く指摘された。小中大学生ともに同様であった。被服製作場面ではミシンやアイロンの電源が入ったままについて多く、次によそみの作業、はさみの扱いが続いた。小中大学生ともにほぼ同様であった。危険度b評価は、状況を見る項目である。これは調理、被服場面のいずれにおいても小学生が多くあげており、調理では、まな板が机からはみ出ている、ザルから水をこぼしている、を指摘していた。同じく小学生が多くあげたb評価の被服場面ではよそ見しながらのアイロン使い、マチ針を出しっぱなしであった。大学生は他に比べてa評価項目が多く、小学生は他に比べてb評価項目が多くなっていた。大学生が指導的立場で考え指示が多くなるのではないかと思われた。子どものわかり方を把握すれば変化するかもしれないと考えさせた。小学生のb評価は自分の不安さが表れていると考えられる。同じ視点で見ると中学生が他に比べてaもbも少なくcの一般的注意、注意しないという評価が多くなっていることは自信、過信を示していると思われた。
著者
吉本 敏子 小川 裕子 星野 洋美 室 雅子 安場 規子 吉岡 吉江 吉原 崇恵
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

<目的>家庭科の学習は、基礎的・基本的な学習が実生活の場面で実践できる力となることを目指している。そこで、日常の具体的な生活場面を想定し課題解決ができる力がどの程度身についているかを把握するための調査を行った。本調査の設計については、日本家庭科教育学会2013年度例会にてすでに報告をしている。調査の内容は、消費生活・環境、食生活、衣生活、住生活、家族・家庭生活の5つ問から構成されているが、今回報告するのは、消費生活・環境に関する結果である。<方法>調査時期:2013年3月~10月調査対象者:愛知県、静岡県、三重県の中学校1年生(小学校6年生を含む)298名、高等学校1年生(中学校3年生を含む)456名、大学1年生567名調査方法:質問紙法による集合調査 回収率:100 分析方法:1)回答の記述内容を読み取り、データベースを作成した。2)そのデータを集計(エクセル統計、&chi;<sup>2</sup>検定)し考察した。<結果> 消費生活・環境の調査内容は、インターネットを利用して靴を購入する場合の代金の支払いと、靴のサイズが合わないというトラブルが発生した時の対応の仕方、およびこれまで履いていた靴の処理の仕方について回答を求めている。そしてこの調査内容から読み取りたい内容を、a)靴の購入にかかる費用が分かり、情報を正しく読み取ることができる、b)インターネット上の情報から、返品交換の可否や条件が理解でき、その情報を基にトラブルへの対応ができる、c)モノを大切にする気持ちや環境への配慮ができる、の3つとした。aとbは、科学性(知識・技能の応用力)を、cは生活合理性(状況把握、姿勢や態度、価値観)を読み取ることができると考えた。 調査の結果は以下の通りであった。1)インターネットを通じて商品を購入した経験のある者は、中学生41.9%、高校生68.2%、大学生78.0%であった。2)靴の購入価格(販売価格+送料+振込手数料+後払い手数料)の正答率は、中学生45.6%、高校生41.7%、大学生52.6%であった。高校生は中学生に比べて正答率が低く、特に高校生男子の正答率は34.0%と低かった。振込手数料や後払い手数料が計算されていないと思われる誤答が多くあった。3)「靴のサイズが合わないというトラブルが生じた場合にどのように対応するか」(本調査の設問では返品交換ができる)については、「返品・交換ができることがわかり、自分で返品・交換をする」と回答したものが最も多く、中学生で80.5%、高校生で83.3%、大学生で87.1%であった。次に多かったのは「少しくらい小さくてもしばらく我慢して履く」であった。4)「今まで履いていた靴をどうするか」という問に対して最も多かった回答は、「友人や知人にあげる」で、中学生34.2%、高校生28.7%、大学生32.8%であった。その他にも「フリーマーケットに出す」「弟が履けるようになるまで取っておく」「予備の靴や思い出の靴として、しまっておく」「雨の日や作業などのときに履く」「放置する」「ごみとして捨てる」など多様な意見が出されていた。以上の結果から、科学性すなわち課題解決のために知識や技能を総合して活用できる力は、発達段階に応じて徐々に身についてきているが、大学生においても十分であるとは言い難い。また「今まで履いていた靴をどうするか」に見られた多様な回答は、モノを大切にする気持ちや環境への配慮という生活合理性に基づくものであるのかについて慎重な検討が必要である。
著者
西島 真美 吉原 崇恵
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.45, 2006

<br><b>【目的】</b><br> 現代の子どもたちは高度に発達した文明社会に生まれ、便利で快適な生活をしている。しかしその反面、生活感が乏しく、依存性が強く自己中心的な生活をしているとも言われており、このような生活をしている生徒たちに家庭科を通してどのようなことを伝えていくのか、どのような力を育成していくのか、様々な方向から家庭科教育の学習について見つめ直したいと考えていた。生徒の日常生活は、様々な選択の連続である。無意識的に選択していることも多いのではないだろうか。この選択の連続は生き方やライフスタイルを決めることにつながっていく。生徒が主体的に生きていく生活者として育っていくためには選択の仕方を通して、情報の必要性や自分の価値観の見直しが求められていると考えた。つまり、意思決定プロセスについて学習する必要性があると考えた。そこで本研究は、意思決定プロセスの3つの方法と3つの課題を設定して中学生にとって効果的な方法を検討すること、中学生が学びうるものは何かを明らかにすること、意思決定プロセスを導入した授業計画の提案を行うことを目的とした。<br><b>【方法】</b><br> 2005(平成17年)年11月15日~28日に三島市Y中学校1,2,3年生から1クラスずつ抽出して95名を対象に調査した。それぞれ異なる3つの課題を設定し、方法1・方法2・方法3の3種類の方法を用いた。生徒は、3つの方法でそれぞれ異なる3つの課題について、価値項目、資源、選択方法、メリットやデメリットを考え課題解決に取り組んだ。そのプロセスについて、生徒一人ひとりのカルテを作成し、追跡調査を行った。なお、方法1は自由記述の形、方法2は価値や資源との照合ができる形、方法3はデシジョンツリーの形である。<br><b>【結果と考察】</b><br> 各学年ごとの集計結果から、分かりやすい方法は方法2,3であると評価され、課題の違いには関係がなかった。また、生徒一人ひとりのカルテを追跡調査した結果、方法2は、どの学年においても価値項目や資源について考え合わせた問題解決を行っている生徒が多いことがわかった。方法3は、多くの選択方法を考えることはしやすいが、価値項目や資源を考え合わせるという点についてはできない生徒もみられた。方法1は、1つの選択方法について詳しく考えることはできるが、それ以外の選択方法については考えが広がりにくいことがわかった。生徒の感想にも多く書かれていたが、新たな選択方法に気づいたり、今までの生活を見直したり、親のありがたさや、お金の大切さなど、わかっていたつもりであったことを改めて感じ、考えるきっかけとなったようだ。<br> 方法1,2,3についてそれぞれ3学年のカルテを見てきたが、これからの生徒の生活や学習に生きる可能性を見つけることができた。<br><b>【課題】</b><br> 今回の研究では、決定した内容を生徒自身が診断するプロセスについては実践できていない。教師側から、よりよい問題解決ができたという診断を行った。この点はこれからの課題としている。これからは、意思決定プロセスを組み入れた単元構想をもとに「食分野」「消費生活分野」での授業実践を行い、授業後意思決定プロセスの実践が生徒の生活にどのように生きるのか追跡する。単元構想では、1時間の授業や単元のまとめなど様々な場面を使い、生徒自身が自分の決定内容の見直しや診断を行っていくよう計画した。そこまでを意思決定プロセスであると考えている。<br> また、カルテからは生徒の生活実態についての間題点も浮き彫りになった。この点についても授業では、個人の生活と社会との関連が学べるように実践したい。
著者
田結庄 順子 柳 昌子 吉原 崇恵 中屋 紀子 牧野 カツコ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.951-959, 1992

This study aims to consider consumer education in school by the survey data of the pupils' parents as consumers.<BR>The results were summarized as follows : <BR>1) Mothers did not take consumer behavior considering the protection of environment.<BR>2) The parents have had a tendency to decide commodity buying by talking with door to door sales person. This fact suggests that the most parents' decision-making were influenced by sales persons. Therefore, consumer education for parents is required to keep up with the times.<BR>3) The parents considered that problems of consumptive behavior of children are due to their consumptive environment. The parents have had anxiety for children's future consumptive environment, particularly credit cards and commercial messages.<BR>4) The parents have considered that role differentiation between home and school in consumer education as follows : fundamental consumer behavior should be taught children in home life, while knowledge of commodity, quality labeling, safety commodity and marketing system should be taught them in school.
著者
田結庄 順子 柳 昌子 吉原 崇恵 中屋 紀子 牧野 カツコ
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.951-959, 1992-09-15

This study aims to consider consumer education in school by the survey data of the pupils' parents as consumers. The results were summarized as follows: 1) Mothers did not take consumer behavior considering the protection of environment. 2)The parents have had a tendency to decide commodity buying by talking with door to door sales person. This fact suggests that the most parents' decision-making were influenced by sales persons. Therefore, consumer education for parents is required to keep up with the times. 3) The parents considered that problems of consumptive behavior of children are due to their consumptive environment. The parents have had anxiety for children's future consumptive environment, particularly credit cards and commercial messages. 4) The parents have considered that role differentiation between home and school in consumer education as follows: fundamental consumer behavior should be taught children in home life, while knowledge of commodity, quality labeling, safety commodity and marketing system should be taught them in school.
著者
西島 真美 吉原 崇恵 松村 千有紀
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第50回大会・2007例会
巻号頁・発行日
pp.64, 2007 (Released:2008-01-08)

【目的】 高度な情報・消費社会を背景に、現代の子ども達は幼い頃から、たくさんの物から欲しいものを選べば手に入る便利で快適な生活を送っている。これからの家庭科教育には、単なる物の購入に関する知識や決定だけでなく、主体的に生きる決定をも含む意思決定能力の育成が期待されている。昨年は、より適切な意思決定をするための方法、「意思決定プロセス」を生徒に分かりやすく行わせるワークシートを提案した。そして今年は、日常の授業の中で意思決定プロセスを導入した実践を行った。意思決定の際、一人ひとりの価値観や資源などが影響するため、決定までのプロセスが最も重要である。今年の研究では、より適切な意思決定をするための意思決定プロセスを1.解決すべき問題をはっきりさせる。2.問題解決に必要な全ての事実を集める。3.解決方法を思いつくだけあげる。4.起こりうる結果や成り行きを考える。5.意思決定する。6.決定を実行する。7.結果を評価・判定する。の7つの段階に整理した。この意思決定プロセスを、TPOに応じた実践的な意思決定能力として生徒に身につけさせるためには、生徒のもつ価値項目や資源を育成することが求められる。今年の研究では、実践的意思決定能力育成のために6、7、の段階を充実させること、そのことによる_丸1_生徒同士の関わり合い_丸2_繰り返し行わせることの有効性を明らかにする。さらに、意思決定プロセスを身につけることによる生徒の学びの可能性についての一考察とする。 【方法】(1)昨年度の実践についてまとめ、新たに生徒の感想を分析することで、本研究の課題を明らかにした。(2)本年度の授業実践内容を記録し、生徒の価値項目の変化における全体の概況を分析した。研究対象は、三島市立Y中学校の2年1組(2006年11月10日~12月13日)の、食生活に関する授業である。特に、お弁当作りの実践における意思決定プロセスを追跡した。毎回のワークシートへの記述を分析の資料とした。(3)生徒の学びの過程を個人カルテとして作成した。そして価値項目の変化の過程が似ている生徒をグループ化し、それぞれの学びの特徴や課題について考察した。(4)全単元の終了後にアンケートを実施した。そして生徒の学びの可能性と今後の課題について考察した。 【結果と考察】 お弁当作りの意思決定プロセスは、授業での実践1回と、家での実践2回の計3回である。全体の概要としては、生徒達は3回の実践を追うごとに新しい価値に気づき、価値意識を広げることができた反面、価値項目がお弁当の質に関する価値である健康や安全へと集中した傾向があった。さらに本研究の課題に対しては以下のような考察をすることができた。1)実践の中で、ほとんどの生徒が友達のアドバイスを参考にしており、栄養バランスをよくするために品数を増やしたり、添加物の摂取を控えるためにおかずを変更したりする姿が多く見られた。価値項目の変化とも照らし合わせ、生徒同士の関わりは、ア.自分の決定に対する批判的思考を育て、意思決定の再検討を助ける。イ.新しい価値項目への気づきを助け、価値項目を増やす事ができる。という二点から有効な学習過程であるということが言える。2)繰り返しの実践の中で、生徒達はバランスの整ったお弁当を作るようになったり、時間のないときには工夫して作ることができるようになっている。同時に、多くの生徒は、価値項目を量的・質的に変化させていることがわかった。このことから、ア.毎回の反省・イ.友達のアドバイス・ウ.授業などで身につけた知識や技能を次回の意思決定に生かす・エ.価値意識の定着・オ.自覚しその必要性に気づく必要性に気づく・カ.知識や技能の向上という6点から、有効であったと言える。3)多くの生徒は、意思決定プロセスの考え方の日常生活での生かし方を具体的に考えることができていた。同時に、時間やお金といった身近な資源に気づき、その必要性を自覚して主体的に学び生活する態度に広がる可能性を見ることができた。