著者
河野 啓子 後藤 由紀 畑中 純子 野口 多恵子 吉川 悦子
出版者
四日市看護医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

産業看護職に必要なコンピテンシーとして、「自己成長する力」、「産業看護の本質を貫く力」、「チーム力を高める力」、「戦略立案・業務遂行する力」、「人・部門・組織間を調整する力」、「人の成長をサポートする力」、「創出する力」といった7つのコンピテンシーが開発された。これらは本来の産業看護活動を行う上で不可欠なものであることから、産業看護職の資質を向上させるためには、これらのコンピテンシーを育成するための教育が必要である。そこで、教育のあり方を論じ、教育内容、教育方法、教育システムについて一定の方向性を見出した。
著者
城所 環 吉川 悦子 石田 千絵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.330-336, 2022 (Released:2022-11-25)
参考文献数
17

目的:訪問看護師の「寄り添う」を明らかにする.方法:訪問看護師6名に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.結果:訪問看護師の「寄り添う」は,【人と家の雰囲気を捉え共感する】,【人として近づき信頼を深める】,【在宅療養の青写真を共に描き共に成長する】,【本人・家族の覚悟を見通し支える】,【暮らしの中で共に歴史を積み重ねる】,【安心して落ち着く場と日常を保障する】の6カテゴリーと14サブカテゴリーから構成された.結論:訪問看護師の「寄り添う」は,訪問看護師自身が利用者や家族にとって安心できる存在として認められ,積み重ねてきた信頼関係を基盤に成り立っていた.多様な背景を持つ療養者とその家族との暮らしの中での関わりは,訪問看護師自身の成長の機会にもなり,訪問看護の価値,やりがいや自らの看護観の醸成につながっていることが示された.
著者
小島 原典子 福本 正勝 吉川 悦子 品田 佳世子 對木 博一
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.103-111, 2018-09-20 (Released:2018-10-02)
参考文献数
43
被引用文献数
1

目的:「復職ガイダンス2017」は,Evidence-based Medicineの手順でエビデンスの質を評価し,無作為化比較試験(RCT)のシステマティックレビューの結果から推奨を提示した,わが国最初の産業保健ガイダンスである.各介入のシステマティックレビュー,推奨の各論については各論で詳述する予定であり,本稿では作成方法を中心とした概論を報告する.対象と方法:透明性の高いガイダンス作成グループの編成,レビュークエスチョン(RQ)の公募と選定など,先に公開された,「科学的根拠に基づく産業保健ガイダンスの作成方法」に沿って作成された.6つのRQに対し,Cochrane Library・PubMed・医中誌Webの3つの文献データベースを用いて,既存のシステマティックレビューの検索式を一部改訂して2016年1月時点の文献検索を行った.選定基準に沿って採用論文を選定し,GRADEアプローチを用いてエビデンスの質を評価し,RQ2と4はメタアナリシス,RQ5,6は定性的システマティックレビューを行った.費用対効果についても定性的レビューを行い,コスト・資源など我が国における実行可能性を慎重に検討して推奨を作成した.結果:網羅的文献検索の結果,RQ2 11件,RQ4 4件,RQ5 コホート研究1件,RQ6 3件(うち,コホート研究2)を選定した.休職者に対するリワークなど復職支援プログラムは,中等度のエビデンスに基づく強い推奨(筋骨格系障害),弱い推奨(メンタルヘルス不調)であった(RQ2).RQ4では,産業保健活動として主治医など臨床のスタッフと連携することは,低いエビデンスに基づいて弱く推奨された.RQ5はソーシャルサポートの有用性について検討したコホート研が1件だったことから,推奨としては提示せずBest practice statementとして上司・同僚の介入を提案した.復職時に就業上の配慮に関するRQ6は,低いエビデンスに基づいて弱く推奨された.考察と結論:病気欠勤か病気休職かを問わず4週間以上の私傷病による休職者に対して,休職中の介入が早期復職など就業上のアウトカムの向上させることがシステマティックレビューの結果から明らかとなった.我が国の産業保健に関するエビデンスは限られているが,多くの産業保健職が科学的根拠に基づく透明性の高いガイダンス作成方法を習得し,その作成過程で文献検索,エビデンスの評価を行い,我が国で優先的に行われるべき研究課題を明確にすることに現状では大きな意義があると考えている.
著者
湯淺 晶子 吉川 悦子 吉川 徹
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.10-29, 2019 (Released:2020-02-10)
参考文献数
35

参加型職場環境改善の評価における課題と生産性・職場活力向上に資する指標について文献検討した。3つのデータベース(医中誌,,PubMed,,CHINAL)から1999〜2016年に発表された原著論文のうち,参加型職場環境改善の介入研究において何らかの評価結果が記載されている文献を分析対象とし,コーディングシートに従って文献に記載されている内容を整理した。その結果,32編の論文が抽出された。評価指標は,「身体的な健康アウトカム」,「心理社会的な健康アウトカム」,「職場風土・職場文化に関する指標」,「生産性に関するアウトカム」,「労働災害・災害休業・職業性疾患の発生件数」,「その他」に分類され,すべての研究が複数の評価指標を設定していた。この中で12編は介入により有意な改善がみられた。参加型職場環境改善に対する評価指標の選択には,改善する動機や目的を主効果として測定しており,それぞれの取り組み背景や主目的により設定する評価指標そのものが異なっていた。有意な改善が見られていない報告もあり,職場環境改善の目的に応じた適切な評価指標の設定と体系的な評価方法を用いることが重要である。(表1)