著者
小川 真規 和田 耕治 小森 友貴 太田 由紀
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.32-41, 2022-01-20 (Released:2022-01-25)
参考文献数
12

目的:病院機能評価に認定された関東地方の医療機関における産業保健活動を把握することである.方法:470医療機関に質問票を郵送した.質問項目は,病院規模,産業保健体制,感染症対策,メンタルヘルス対策,働き方改革への取り組み,産業保健上の優先課題である.結果:140医療機関から回答を得た.職場巡視の毎月実施率は6割弱であった.入職時の肝炎検査,4種抗体検査は65%程度の実施率だが,インフルエンザワクチンはすべての医療機関で行われていた.多くの医療機関で産業医にメンタルヘルスに関する相談ができる体制があった.働き方改革は,カンファレンスの時間の工夫,タスクシフト・シェアに取り組んでいた.今後の課題は,血液媒介感染症予防,呼吸器感染対策,医療従事者の健康管理を多くの医療機関が挙げていた.結論:医療機関の産業保健活動は,法定項目及び感染症関連の項目は実施率が高かった.働き方改革は,カンファレンスの時間工夫,タスクシフト・シェアの取り組みが上位を占めていた.
著者
川島 正敏 和田 耕治 久保 公平 大角 彰 吉川 徹 相澤 好治
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.155-161, 2009 (Released:2009-08-10)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

N95マスク(DS2マスク)の選択にあたってはフィットテストが必要である.しかし,40歳以下の女性についてはフィットする割合が低いことが指摘されており,マスクの構造上の改善の余地がある.多くのN95マスクは,ゴム紐のみで頭に固定されている.本研究では,口元の調節紐および立体接顔クッションを付属したN95マスクを40歳以下の女性が装着し,フィットする割合が向上するかを検討した.   20名を対象に,調節紐および接顔クッションを付属したN95マスクと,コントロールとしてゴム紐のみで装着するN95マスクを用いた.装着を行ったあと,マスクフィッティングテスターを用いてフィットテストを行い,漏れ率を測定した.   調節紐および接顔クッションを付属したN95マスクでは,普通呼吸において漏れ率が5.0%未満であった.しかし,ゴム紐のみで装着するN95マスクでは5人の漏れ率が5.0%以上であった.またフィットテストの過程で漏れ率が5.0%以上となったのは,調節紐および接顔クッションを付属したN95マスクでは3人であったが,ゴム紐のみで装着するN95マスクでは,11人であった.   本研究より,調節紐および接顔クッションを付属することにより,N95マスクのフィットする割合を向上できる可能性があると考えられる.
著者
森次 幸男 和田 耕治 池田 俊也
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.166-177, 2022-02-28 (Released:2022-05-27)
参考文献数
14

Objective: The purpose of this study was to assess the opinions of healthcare professional regarding the contributions of the Medical Affairs department. Furthermore, we aimed to identify factors influencing and reasons for the contributions in the new coronavirus disease 2019 (COVID-19) pandemic situation.Design/Methods: A web-based survey was conducted among healthcare professionals (Key Opinion Leader/Key Thought Leader, KOL/KTL) who had multiple contacts with the Medical Affairs department, Japan.Results: The responses of 141 KOL/KTLs in Japan were collected; 77.3% of the respondents indicated that the contributions of the Medical Affairs department exceeded their expectations (achieved the expected level of contribution). The most common responses were “the identification of unmet medical needs” and “the dissemination of medical and scientific information, providing advanced medical and scientific information;” other responses included “promoting sales of the company's drugs.” The requests from KOL/KTLs regarding quality were “knowledge about biological and clinical statistics” and “proposal and quick response ability from the perspective of medical staff and patients,” but these responses were partially different between physicians and pharmacists. COVID-19 has resulted in substantial changes, for example, “face-to-face” interactions have significantly decreased from 91.5 to 50.4% and “Online” interactions have significantly increased from 20.6 to 70.9%. However, the effects of the declaration of emergency state could not be identified. The KOL/KTLs requested to make the meeting times more appropriate, conduct in-depth two-way discussions, provide latest information, and discuss about professional manners and behaviors.Conclusion: In summary, regardless of the changes in the types of activities caused by COVID-19, the Medical Affairs department has made substantial contributions to healthcare professionals, who highly appreciated them. Furthermore, depending on responses of individuals whose expectations could not be met, areas of improvements have been suggested.
著者
和田 耕治
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.305-313, 2022-10-31 (Released:2022-11-18)
参考文献数
17

新型コロナウイルスは,会話や咳の飛沫を介して感染が拡大する.そのため,感染拡大時に感染を抑えるために人々が接触する機会を減少するかが課題となった.本稿では,2020年から2022年の前半において,わが国において行われた感染拡大に対する公衆衛生対策として個人の感染予防策と社会全体として接触機会を減らす対策としての緊急事態宣言の実際と教訓をまとめることである.政府としては,対策全体の基本的な方針として基本的対処方針を示した.政府は,国民の共感が得られるようなメッセージを発出するとともに,状況の変化に対応した情報提供や呼びかけを行い,行動変容を進める情報提供が方針とされた.個人の感染対策としては, 3 つの密の回避やマスクの装着などを求めた.緊急事態宣言は,全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼす事態に発令され,外出自粛要請などが行われた.また,新型コロナウイルス発生後に緊急事態宣言の限界を補うため法律改正により,まん延防止等重点措置が新たに追加された.これらの社会全体に対する対策は,本来は早めに始めて,短期間で解除することが望ましい.しかし,市民や政治の納得感が得られるのはある程度病床が逼迫するといった問題が大きく認識されるようになってからということもあり,こうした措置が始められるタイミングは遅くなりがちであった.対策が遅れることで感染が拡大するということになり,それからの措置では感染がある程度落ち着く,または重症者がある程度減少して病床の逼迫が解除されるまでに数週間から数ヶ月単位となりえた.感染対策としての緊急事態宣言や接触機会の減少は,社会にも大きな影響を与えた.例えば,経済面では,GDPの減少,飲食宿泊業への影響が顕著であった.また婚姻数や出生数にも影響が及んだ.様々な政府による経済対策に公費が投入された.これらがどの程度効果的に機能したかについては経済側からの評価ならびに教訓のまとめが期待される.次のパンデミックや今後の新たな変異株の出現を見据え対策を継続して検討する必要がある.しかしながら,医療や公衆衛生だけで検討ができるわけではなく,多分野で,そして様々な関係者,特に意志決定者である政治やその実施をする政府の関与が不可欠である.
著者
和田 耕治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.288-292, 2020-05-15

【ポイント】◆2020年東京オリンピック・パラリンピック(東京2020)に関する主な健康リスクは感染症と熱中症であり,医療体制の整備が求められる.◆大会の開催地だけでなく,ホストタウンやキャンプ地も含めた全国的な対策が求められる.◆大会を乗り越えるだけでなく,その後にもレガシー(遺産)として残るような取り組みが求められる.
著者
和田 耕治 太田 寛 阪口 洋子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.259-265, 2011 (Released:2014-06-06)
参考文献数
26

目的 新型インフルエンザ A(H1N1)2009が海外で発生した初期に,わが国では停留措置が行われた。停留は,国民の安全•健康を守るための措置である一方,個人の行動を数日間にわたって制限することになるため,人権を最大限尊重して最小限の人を対象に行うべきである。本研究では,今後新たに発生した新型インフルエンザの流行初期において最適な停留措置を行うための意思決定のあり方について検討を行った。方法 インフルエンザの感染性や航空機などの公共交通機関での感染の事例,停留の有効性などに関する文献と新型インフルエンザ A(H1N1)2009の流行の初期において停留措置に関わった者へのインタビューから得られた知見をもとに検討を行った。結果 停留の意思決定をする際には,停留の必要性の検討,対象者を最低限にするための対応,対象者の人権確保,代替策について検討を行う必要がある。 必要性の検討では,新型インフルエンザが停留の対象とすべき公衆衛生上の脅威であるか,停留を行うことによって国内での流行のはじまりを遅らせることができる時期であるか,停留措置を緩和するまたは解除するなどの意思決定の場,を検討する。 停留対象者を最小限にするための対応については,感染者に曝露する人を出さないためにもインフルエンザ様症状のある者が航空機に搭乗しないよう国民への呼びかけ,対象者の選定が感染者との曝露に応じた決め方になっているかを検討する。 停留が必要と判断された際の対象者の人権確保については,停留期間が最短であるか,対象者の人権(個人情報,施設での快適性)は守られているか,対象者のメンタルヘルスや,慢性疾患などの治療への対応が確保できているか,外国人を停留する場合の各国言語を勘案した十分な説明ができているかを検討する。また,停留代替策の検討として自宅待機などの選択肢を検討する。結論 停留措置の意思決定は,流行の初期において判断が求められるため病原性などの情報は限られている。また,停留の意思決定を行うためのエビデンスは現段階で十分には得られていない。そのようななかで考慮すべき点を多面的に検討し,最適な停留措置を意思決定することが求められる。
著者
和田 耕治 森山 美緒 奈良井 理恵 田原 裕之 鹿熊 律子 佐藤 敏彦 相澤 好治
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.103-109, 2007-05
被引用文献数
5

慢性疾患は労働者の仕事の生産性に影響を与える.本調査は関東地方にある事業場の労働者を対象にして慢性疾患による仕事の生産性への影響の評価として,慢性疾患の有訴率,慢性疾患の影響として労働障害指数,欠勤による損失労働時間を測定することを目的とした.関東地方にある4つの製造業の事業場における労働者544名を対象に2006年4月から6月の定期健康診断の際にStanford Presenteeism Scaleの日本語版を配布した. 433名(回答率79.6%)から有効な回答を得た.48.9 %の労働者が,なんらかの慢性疾患が仕事の生産性に影響を与えたと回答した.最も仕事の生産性に影響を与えていた慢性疾患のうち,有訴率が高かったのは,「アレルギー」(13.3%),「腰痛・首の不調」(9.7%)であった.労働障害指数が高かった慢性疾患は,「うつ病・不安又は情緒不安定」と「偏頭痛・慢性頭痛」であった.最も影響を与えていた慢性疾患で欠勤により損失した労働時間の総計は,対象労働者の総労働時間の1.4%であった.欠勤による損失労働時間の高かった疾患は「アレルギー」,「腰痛・首の不調」,「うつ病・不安又は情緒不安定」であった.こうした結果をもとに,生産性に影響を与える疾患に対しての対策を講じることが可能となる.