著者
本廣 多胤 花田 裕美 吉廣 卓哉
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.375-384, 2020-02-15

農業従事者の高齢化にともない,農業IoTの導入による農業の効率化が求められている.センサを農場に設置して常時観測し,客観的な指標に基づいて栽培における各種判断をすることが期待されている.従来の経験に基づいた栽培を脱し,客観的指標に基づいた農業のマニュアル化・大規模化が可能になる.しかし,センサを用いて大量のデータを取得し,植物の特性を把握したうえで適切な栽培判断の指標を確立するためには,多くの変数をともなうデータ分析が必要となる.本研究では,経済的価値の高い実用花卉であるトルコギキョウを対象として,栽培時に起こるロゼット化およびブラスチングと呼ばれる個体損失要因を分析する.土壌センサを用い,組合せ的に設計された試験からデータを取得し,階層ベイズモデルを用いた個体損失の予測モデルを構築することで,個体損失が発生する条件を解明することを目指す.トルコギキョウにおける既存の知見に基づいて個体損失モデルを設計し,センサの測定値と組合せ的な試験区設計に基づいて取得したデータを適用した.その結果,ロゼット化およびブラスチングに対する各要因の影響の度合いを数値化し,それらの結果が既存の知見と合致することを確認しただけでなく,個体損失に関する新規の知見を得られる可能性を見出した.
著者
横谷 晟人 吉廣 卓哉
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.473-485, 2018-02-15

バッテリ駆動の小型センサ端末を設置し,無線マルチホップ通信により測定データを集める無線センサネットワークにおいて,従来手法と比較して大幅にネットワーク寿命を延ばすMACおよび経路制御プロトコルを提案する.受信ノード主導型MACプロトコルは,消費電力を抑えセンサノードの寿命を延ばすMACプロトコルとして知られている.本論文では,これを拡張し,データ配送木における葉ノードでビーコン送信を省き,経路制御プロトコルと連携させることにより,さらに消費電力を削減する.葉ノードでビーコン送信を省くことで,トポロジ変化時に葉ノードへ制御メッセージが送信できず,配送木の修復効率が悪化するという問題が起こる.これに対しては,葉ノードとの連絡経路を維持する仕組みを導入し,トポロジ変化時にも効率的に配送木を修復する.また,電力残量が低下したノードを避けるように定期的に配送木を再構築する仕組みにより,ネットワークが機能する時間を延ばす.最新のセンサ端末の性能を考慮したシミュレーション評価により,センサネットワークの寿命が大幅に増大できることを示す.
著者
池上 春香 永井 宏平 松橋 珠子 小林 直彦 武本 淳史 吉廣 卓哉 井上 悦子 樋口 智香 守田 昂太郎 内堀 翔 天野 朋子 田口 善智 加藤 博己 入谷 明 松本 和也
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.141-152, 2015-05-25 (Released:2015-06-18)
参考文献数
17

黒毛和種肥育牛の枝肉形質を推定するバイオマーカー候補タンパク質の同定を目的に,枝肉形質情報ならびに腎周囲白色脂肪組織のプロテオーム解析情報を搭載した統合情報管理システムを運用し,プロテオーム解析データを持つ去勢牛200頭から,5つの形質(枝肉重量・ロース芯面積・バラの厚さ・皮下脂肪の厚さ・BMSナンバー)に関して上位と下位の2群を選抜して,この2群間で314個のタンパク質スポットの発現量と枝肉成績との関連性を検討した.各形質の上位群(平均値+標準偏差)および下位群(平均値−標準偏差)として抽出した個体間の各スポットのタンパク質発現量を比較した結果,合計でタンパク質45種類(90スポット)の発現量に有意な差が認められた.これらタンパク質の一部について,代謝経路における位置付けを行なうとともに,vimentinのウエスタンブロット解析より発現量を検証したところ,枝肉形質を推定するバイオマーカー候補タンパク質としての可能性が示唆された.
著者
片山 薫 香川 修見 神谷 泰宏 對馬 英樹 吉廣 卓哉 上林彌彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.2837-2845, 1998-10-15
被引用文献数
17

遠隔講義システムにおいて,記録された講義の検索をサポートすることは重要である.それによって学生が講義の必要な部分だけを復習したり,教師が過去の講義をより簡単に再利用したりすることができる.講義はマルチメディア教材を作成する過程であると見ることができるが,一般にマルチメディアデータの検索は困難である.画像認識技術や音声認識技術を利用して信頼性の高い索引を生成することはまだ容易ではない.我々はこれらの直接的なアプローチとは異なり,マルチメディアデータが作成される過程(講義)で同期をとって結び付けられる,より検索しやすいデータ〔スライドに含まれるテキスト,ペンやポインタ,キーボードなどの入力装置からのイベント情報(動作履歴と呼ぶ)など〕を利用する.これまでの講義システムでは,講義のビデオを結び付けられたスライド(教材)やノートの単位でしか検索することができなかった.我々のシステムでは,テキストデータに対する文字列検索や動作履歴の検索,ビデオの早送りや巻き戻しなど,これら多様なデータのそれぞれに検索機能を提供しそれを組み合わせることによってより柔軟な検索機能を実現する.また,講義中の雑談部分を検索したり,教材をスライドより詳細なブロック(教材の意味的な単位)の単位で検索できるようにするためのユーザインタフェースも提供する.Support of searching recorded lectures is important in distance education systems because students review parts of lectures they need and teachers reuse their past lectures easily.We view lecturing as a process of making multimedia teaching materials.It is difficult to search multimedia data in general.Although automatic scene analysis and speech recognition are very popular among researchers,it is still not easy to form reliable index.Our approach is different from these ways of searching multimedia data directly.We use information which are connected to continuous media such as video and audio with synchronous constraints during lectures,that is,texts contained in slides,sequences of events of pens and pointers(called Action History) and so on.In conventional systems search of lectures is supported only in a unit of slides or annotations.Our system provides a flexible search mechanism by combining search functions for various recorded information,for example,string for texts,a search function for action histories,fast forward and rewind of video and so on.User interfaces are also provided to enable users to search lectures for idle talk or search them in a unit of blocks which are semantic units of slided.