著者
成瀨 浩史 堀井 聡子 鶴野 充茂 吉村 健佑
出版者
日本広報学会
雑誌
広報研究 (ISSN:13431390)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.34-45, 2022-04-28 (Released:2022-07-25)

マンガ・アニメを用いた広報の感染症対策におけるエンターテインメント・エデュケーションの有用性を検討するため、感染症対策を目的とした厚生労働省の Twitter 投稿のうち、マンガ・アニメを起用した投稿の「いいね」、リツイート、引用リツイート数をそれ以外と比較した。マンガ・アニメを起用した投稿は8 事例あり、これら投稿へのリツイート等の平均値はそれ以外の投稿と比べ高かった。ただしリツイート等の数は投稿期間の長期化により減少する傾向にあった。本結果から、マンガ・アニメの起用は無関心層への訴求に有用性が示唆された。ただし、その効果は一過性であり、マンガ・アニメの放映時期など、外部要因を考慮した投稿により広報効果を高める工夫が必要である。
著者
黒崎 宏貴 吉村 健佑
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.501-508, 2020-08-15 (Released:2020-09-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的 第3期医療費適正化計画では「糖尿病の重症化予防」,「特定健康診査・特定保健指導の推進」,「後発医薬品の使用促進」,「医薬品の適正使用」により1人当たり外来医療費の地域差縮減を目指している。この目標を達成するためには都道府県単位での具体的な取組目標を設定することが重要となる。厚生労働省はレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を構築し公表している。これまでNDBオープンデータを活用して糖尿病医療費の地域差について解析した研究は行われていない。本研究では,NDBオープンデータを活用し,入院外糖尿病医療費について,ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬の処方箋料の地域差およびスルホニル尿素薬(SU薬),グリニド薬,ビグアナイド薬,α-グルコシダーゼ阻害薬,チアゾリン誘導体薬の後発医薬品の使用割合の地域差,都道府県別の糖尿病透析予防指導管理料の地域差について解析した。そして,都道府県差が示されている人口当たり糖尿病医療費との相関を解析することで地域差の要因について解析し,地域差縮減に向けたデータを提示する。方法 第2回NDBオープンデータ(集計対象:平成27年度レセプト情報および平成26年度特定健康診査情報)を使用した。本研究では,糖尿病についての入院外医療費のみを研究対象とした。NDBオープンデータより各要因を抽出し,人口当たり糖尿病医療費との関係を評価するためにピアソンの積率相関係数rを算出した。相関係数の検定にはStudentのt検定を用いてP値を算出した。P値は0.05未満の場合を有意水準とした。結果 人口当たりDPP-4阻害薬処方箋料が高い都道府県では糖尿病医療費が高い傾向にあることが明らかになった(r=0.40, P=0.0048)。また,SU薬の後発医薬品の使用割合が高い都道府県では糖尿病医療費が低い傾向にあることが分かった(r=−0.43, P=0.0023)。糖尿病の重症化予防という点について,糖尿病透析予防指導管理料は糖尿病医療費との相関は認められなかった(r=−0.096, P=0.52)。結論 本研究では,NDBオープンデータを用いることで,DPP-4阻害薬処方箋料やSU薬後発医薬品の使用割合に地域差があり,人口当たり糖尿病医療費に関与している可能性が示唆された。本研究により,糖尿病医療費の都道府県差縮小に向けた政策立案にNDBオープンデータが有用であることが示唆された。
著者
吉村 健佑 川上 憲人 堤 明純 井上 彰臣 小林 由佳 竹内 文乃 福田 敬
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.11-24, 2013-02-20 (Released:2013-02-26)
参考文献数
25
被引用文献数
5 3 1

目的:本研究では,職場におけるメンタルヘルスの第一次予防対策の実施が事業者にとって経済的利点をもたらすかどうかを検討することを目的とし,すでに公表されている国内の研究を文献検索し,職場環境改善,個人向けストレスマネジメント教育,および上司の教育研修の3つの手法に関する介入研究の結果を二次的に分析し,これらの研究事例における費用便益を推定した.対象と方法:Pubmedを用いて検索し,2011年11月16日の時点で公表されている職場のメンタルヘルスに関する論文のうち,わが国の事業所で行われている事,第一次予防対策の手法を用いている事,準実験研究または比較対照を設定した介入研究である事,評価として疾病休業(absenteeism)または労働生産性(presenteeism)を取り上げている事を条件に抽出した結果,4論文が該当した.これらの研究を対象に,論文中に示された情報および必要に応じて著者などから別途収集できた情報に基づき,事業者の視点で費用および便益を算出した.解析した研究論文はいずれも労働生産性の指標としてHPQ(WHO Health and Work Performance Questionnaire)Short Form 日本語版,あるいはその一部修正版を使用していた.介入前後でのHPQ得点の変化割合をΔHPQと定義し,これを元に事業者が得られると想定される年間の便益総額を算出した.介入の効果発現時期および効果継続のパターン,ΔHPQの95%信頼区間の2つの観点から感度分析を実施した.結果:職場環境改善では,1人当たりの費用が7,660円に対し,1人当たりの便益は点推定値において15,200–22,800円であり,便益が費用を上回った.個人向けストレスマネジメント教育では,1人当たりの費用が9,708円に対し,1人当たりの便益は点推定値において15,200–22,920円であり,便益が費用を上回った.上司の教育研修では2論文を解析し,Tsutsumi et al. (2005)では1人当たりの費用が5,290円に対し,1人当たりの便益は点推定値において4,400–6,600円であり,費用と便益はおおむね同一であった.Takao et al. (2006)では1人当たりの費用が2,948円に対し,1人当たりの便益は0円であり,費用が便益を上回った.ΔHPQの95%信頼区間は,いずれの研究でも大きかった.結論:これらの研究事例における点推定値としては,職場環境改善および個人向けストレスマネジメント教育では便益は費用を上回り,これらの対策が事業者にとって経済的な利点がある可能性が示唆された.上司の教育研修では点推定値において便益と費用はおおむね同一であった.いずれの研究でも推定された便益の95%信頼区間は広く,これらの対策が統計学的に有意な費用便益を生むかどうかについては,今後の研究が必要である.
著者
吉村 健佑 川上 憲人 堤 明純 井上 彰臣 小林 由佳 竹内 文乃 福田 敬
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.E12003, (Released:2012-12-21)
被引用文献数
3 3 1

目的:本研究では職場におけるメンタルヘルスの第一次予防対策の実施が事業者にとって経済的利点をもたらすかどうかを検討することを目的とし,すでに公表されている国内の研究を文献検索し,職場環境改善,個人向けストレスマネジメント教育,および上司の教育研修の3つの手法に関する介入研究の結果を二次的に分析し,これらの研究事例における費用便益を推定した.対象と方法:Pubmedを用いて検索し,2011年11月16日の時点で公表されている職場のメンタルヘルスに関する論文のうち,わが国の事業所で行われている事,第一次予防対策の手法を用いている事,準実験研究または比較対照を設定した介入研究である事,評価として疾病休業(absenteeism)または労働生産性(presenteeism)を取り上げている事を条件に抽出した結果,4論文が該当した.これらの研究を対象に,論文中に示された情報および必要に応じて著者などから別途収集できた情報に基づき,事業者の視点で費用および便益を算出した.解析した研究論文はいずれも労働生産性の指標としてHPQ(WHO Health and Work Performance Questionnaire)Short Form 日本語版,あるいはその一部修正版を使用していた.介入前後でのHPQ得点の変化割合をΔHPQと定義し,これを元に事業者が得られると想定される年間の便益総額を算出した.介入の効果発現時期および効果継続のパターン,ΔHPQの95%信頼区間の2つの観点から感度分析を実施した.結果:職場環境改善では,1人当たりの費用が7,660円に対し,1人当たりの便益は点推定値において15,200–22,800円であり,便益が費用を上回った.個人向けストレスマネジメント教育では,1人当たりの費用が9,708円に対し,1人当たりの便益は点推定値において15,200–22,920円であり,便益が費用を上回った.上司の教育研修では2論文を解析し,Tsutsumi et al.(2005)16)では1人当たりの費用が5,290円に対し,1人当たりの便益は点推定値において4,400–6,600円であり,費用と便益はおおむね同一であった.Takao et al(2006)17)では1人当たりの費用が2,948円に対し,1人当たりの便益は0円であり,費用が便益を上回った.ΔHPQの95%信頼区間は,いずれの研究でも大きかった.結論:これらの研究事例における点推定値としては,職場環境改善および個人向けストレスマネジメント教育では便益は費用を上回り,これらの対策が事業者にとって経済的な利点がある可能性が示唆された.上司の教育研修では点推定値において便益と費用はおおむね同一であった.いずれの研究でも推定された便益の95%信頼区間は広く,これらの対策が統計学的に有意な費用便益を生むかどうかについては,今後の研究が必要である.