著者
成瀨 浩史 堀井 聡子 鶴野 充茂 吉村 健佑
出版者
日本広報学会
雑誌
広報研究 (ISSN:13431390)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.34-45, 2022-04-28 (Released:2022-07-25)

マンガ・アニメを用いた広報の感染症対策におけるエンターテインメント・エデュケーションの有用性を検討するため、感染症対策を目的とした厚生労働省の Twitter 投稿のうち、マンガ・アニメを起用した投稿の「いいね」、リツイート、引用リツイート数をそれ以外と比較した。マンガ・アニメを起用した投稿は8 事例あり、これら投稿へのリツイート等の平均値はそれ以外の投稿と比べ高かった。ただしリツイート等の数は投稿期間の長期化により減少する傾向にあった。本結果から、マンガ・アニメの起用は無関心層への訴求に有用性が示唆された。ただし、その効果は一過性であり、マンガ・アニメの放映時期など、外部要因を考慮した投稿により広報効果を高める工夫が必要である。
著者
高広 伯彦
出版者
日本広報学会
雑誌
広報研究 (ISSN:13431390)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.87-102, 2021 (Released:2021-06-10)

企業のコミュニケーション活動は、そのステークホルダーなどの他アクターに対して行われる伝達行 為である。その行為はその受け手に対してなんらかの認識の変化や行動を期待するものが、メッセージの送 り手と受け手の間ではそれぞれのコンテクストの違いから齟齬が起きることがある。共有できるコンテクス トを調整しなければ、スムーズな意思伝達は不可能である。本論文では、そうしたコンテクストというもの について、伝達の基礎理論から語用論や関連性理論の観点のレビューを経て、サービス・ドミナント・ロジ ックにおける文脈価値の視点を交えて、コンテクストとコミュニケーションについて考察するものである。
著者
国枝 智樹 岩澤 康一
出版者
日本広報学会
雑誌
広報研究 (ISSN:13431390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.81-96, 2023 (Released:2023-06-16)
参考文献数
49

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、当初からPR業界が公然と関与していた特殊な戦争である。本研究は戦時におけるPR業界の動きを分析するため、侵攻開始から3か月の間にPR会社や業界団体が公開した声明とPR会社に言及した報道を収集し、分析した。その結果、ウクライナ内外のPR会社による政府支援は侵攻開始直後から始まり、各種PRサービスの提供だけでなく国際的な支援ネットワークの形成、ロシアを非難しウクライナへの支援を訴える一貫した声明の発表、ロシアからの撤退と業界からのロシアの排除が行われていたことが明らかになった。
著者
森津 千尋
出版者
日本広報学会
雑誌
広報研究 (ISSN:13431390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.97-110, 2023 (Released:2023-06-16)
参考文献数
35

近年、結婚式の多様化に伴い海外ウェディングが広がりをみせており、これらの挙式情報は『ゼクシィ』のような結婚情報メディアに集約され、消費者はメディアを経由し式場情報にアクセスするようになっている。本稿では『ゼクシィ』を海外ウェディング選択の初期段階で接触するメディアと位置づけ、そこで紹介される各地域の挙式情報について検討を行った。その結果、式場情報は、先行する観光イメージを基礎として、式場形態、ロケーション、その他イベント等で構成されていることが明らかになった。またハワイの場合、他の地域よりも多様で詳細な情報が提供されており、海外ウェディングにおけるハワイの優位性が示唆された。
著者
井上 邦夫 望月 真理子 中町 直太
出版者
日本広報学会
雑誌
広報研究 (ISSN:13431390)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.4-19, 2021 (Released:2021-06-10)

近年、コーポレートブランディングへの関心が高まる一方で、その実践に苦労する企業が多い実態が 示されている。本稿は、関連するアイデンティティ、ブランド、レピュテーションの概念を整理し、実践の ためのフレームワークを提言する。コーポレートブランディングとは、組織のアイデンティティをマネジメ ントするプロセスであり、その目的はステークホルダーとの間に好ましいレピュテーションを形成すること にある。この定義に基づき、コーポレートブランディングの役割と手法について論じる。
著者
国枝 智樹 伊吹 勇亮
出版者
日本広報学会
雑誌
広報研究 (ISSN:13431390)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.74-86, 2021 (Released:2021-06-10)

危機管理広報に関する研究は日本でも行われてきたが、体系的な理論の構築は進んでいない。本論文 では危機管理広報の理論について文献調査を行い抽出した 13 の理論をクライシス・コミュニケーション、 リスク・コミュニケーション、およびイシュー・マネジメントの 3 領域に分類し、理論の特徴や発展の経緯、 関係について整理し、日本における応用可能性、特に研究や実務にとっての意義について考察する。
著者
谷ノ内 識
出版者
日本広報学会
雑誌
広報研究 (ISSN:13431390)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.51-64, 2020 (Released:2020-12-21)
被引用文献数
1

本研究の目的は、2012年3月に文部科学省が全国の国公私立大学に対して調査を行った「大学等の広報に関するアンケート」と、筆者が2016年6月に全国の国公私立大学を対象に行った「広報の組織・体制に関するアンケート」の結果の比較分析を通じて、大学における広報組織の実態を明らかにすることである。2つの調査は2014年から2015年にかけて学長のリーダーシップの確立を目的に行われた大学ガバナンス改革の前後の実施である。「2016年の方が組織および体制の充実が図られている」という仮説を設定して検証した結果、特に公立大学について組織および体制の充実が進んでいることを明らかにした。
著者
伊吹 勇亮 国枝 智樹
出版者
日本広報学会
雑誌
広報研究 (ISSN:13431390)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.48-57, 2021 (Released:2021-06-10)

本研究では、2019 年 2 月に実施したアンケート調査の結果に基づき、日本の大学で実際に教えられて いる広報の教育内容と、新入社員の広報実務家が備えているべきこと(広報の知識、技術、能力)との間に 相違があるのかを分析した結果を示す。調査の結果、「授業で提供している」「新入社員の広報実務家が備 えているべき」のいずれの設問についても、能力が最も重視され、その次に知識、技術となっていた。また、 授業ではどの項目についても新入社員に求められる水準まで提供できていないことが判明した。