著者
夏目 達也 大塚 雄作 中島 英博 丸山 和昭 林 篤裕 吉永 契一郎 齋藤 芳子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

入試改革に伴う入試・高大接続業務の高度化・多様化に対応するための方策として、入試担当専門職(アドミッション・オフィサー)の設置が考えられる。本研究の目的は、同専門職設置の可能性・必要性を検証すること、同専門職を養成するためのプログラムを開発することである。目的を達成するため、研究2年目にあたる平成29年度には、以下の課題を設定し取り組んだ。①国内主要大学における高大接続や大学入試改革の実施状況について、聞き取り調査や各種資料の入手を通じて調査を行うこと、②主要大学における入試・高大接続業務、当該職員の職務遂行能力に関する調査を引き続き行うこと、③当該専門職員の能力開発の制度・プログラム等のあり方を検討すること、④入試担当専門職員を設置・養成の先進事例をもつ諸外国との比較研究を行うこと。その結果、以下のような成果をあげることができた。①北海道大学、名古屋大学、大阪大学、九州大学、早稲田大学、追手門大学について、入試改革の現状や担当教職員の役割・能力開発等について知見を得た。②「アドミッション担当教職員支援セミナー」として、入試業務に携わる教職員向けに、業務遂行を支援するために基礎的な知識を提供した。これを通じて、同教職員の間では、業務遂行に必要な知識に対するニーズが高い現状を把握できた。③フランスの主要大学にて、担当部署責任者に対して、以下の項目についてインタビュー調査を行った。a.入試業務担当組織の業務内容、b.専門職(進路指導カウンセラー)の職務内容、c.専門職の募集・処遇・キャリア形成支援方策等。これらを通じて、フランスでは、大学により事情は異なるものの、進路カウンセラーが高大接続で専門的知識を活用して、学生の高大接続・移行を支援している実態の理解に努めた。
著者
吉永 契一郎 YOSHINAGA Keiichiro
出版者
名古屋大学高等研究教育センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.69-85, 2016-03 (Released:2016-04-01)

本稿においては、まず、先行研究によって、アメリカの研究大学においては、すでに大学運営集団が確立されていることを確認した。大学運営集団の特徴は、権限に恵まれ、専門性が高く、役職者としての経歴が長いこと、そして、大学間の流動性が高いことである。また、アメリカでは、大学運営集団と教育研究集団の権限が明確に区別され(分離管理)、教員の大学運営への参画は、評議会によって確保されている(共同統治)。その上で、全米で上位100 位以内にランクされる東部6 大学において、13 名の役職者に対してインタビュー調査を行い、統計調査では表わされていない点を明らかにした。それは、大学運営集団は権限やトップ・ダウンを可能にする制度に恵まれながらも、それらに依存せず、教員間の合意形成を図っていることである。これは、教育研究と経営という二元的な権威が衝突する大学においては、制度面での整備は必要であるが、実際の運営において、教育研究集団の特性や自由を尊重しつつ、戦略を遂行するためのスキルや力量が求められていることを示している。In this paper, the author first reviews an existing study of academic administrators in the United States and confirms that American universities have already established Burton Clark’s concept of “the strengthened steering core” with provosts and deans. According to several national surveys, they are given strong authority and support staff, and are distinguished from faculty members (separate jurisdiction). Thus the autonomy of faculty members is limited to academic issues inside their departments; they only participate in university management nominally through faculty senates (shared governance). To further study the roles of “the strengthened steering core,” the author conducted semi-structured interviews with 13 academic administrators at six Eastern doctoral/research universities in 2011 and 2012. The interviewees included provosts, deans, department chairs, and faculty senate leaders. To follow are the findings of the interviews: (1) Top researchers sometimes choose administrative careers because of their sense of responsibility and affection toward their institutions. (2) In spite of their high level of authority, they respect faculty autonomy and collegiality as much as possible. (3) Their duality as administrators and faculty members mitigates the conflict between management and academic values. (4) Clashes between academic and management authorities occur regarding department chairs.
著者
稲垣 美幸 堀井 祐介 吉永 契一郎
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年,大学には教員でも職員でもない位置付けとして「専門職」と呼ばれる様々な職種の導入が進んでいる。この各職の業務内容や組織に関する実証研究は進んでいるが,その一方で,当事者やその周囲では課題の声が聞かれる。しかし,こうした課題は現場レベルの感覚的なものとして聞かれるのみで,客観的に明らかにされてはいない。で,本研究は,専門職として報告されている新たな職種全体を対象に,専門職が抱える課題を客観的かつ実証的に明らかにし,専門職を取り巻く共通課題と職種による特色を見出す。