著者
谷田 恵美子 和泉 元喜 阿部 剛 土谷 一泉 大熊 幹二 内田 苗利 日高 章寿 林 依里 野口 正朗 益井 芳文 吉澤 海 白濱 圭吾 金崎 章
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.839-845, 2013 (Released:2013-05-07)
参考文献数
29

48歳男性.激しい腹痛と便秘のため救急外来を受診した.5カ月前に急性骨髄性白血病に対し骨髄移植を受け,慢性移植片対宿主病に対し免疫抑制剤を服用していた.大腸の拡張とガスの貯留を認めたが閉塞機転はなかった.数日後に水痘様皮疹が出現し,偽性腸閉塞を合併した汎発性帯状疱疹と診断した.アシクロビルの投与により救命し得た.原因不明の腹痛と偽性腸閉塞をともなう免疫不全患者では,本症を念頭に置き早期治療を行う必要がある.
著者
北原 拓也 久保 恭仁 吉澤 海 安部 宏 会澤 亮一 松岡 美佳 相澤 良夫 砂川 恵伸 高山 忠利 幕内 雅敏
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.229-237, 2009 (Released:2009-06-03)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

Peliosis hepatis(肝紫斑病)は,類洞の拡張と肝内に多発する血液の貯留腔を認めるまれな疾患で,WHOの肝腫瘍の組織学的分類では腫瘍類似病変に分類されている.本邦では腫瘍との鑑別に苦慮した症例の報告が散見されるが,肝全域にわたってPeliosis hepatisが発生,進展し,致命的な転帰となった症例は,過去にわずか1例が報告されているのみである.今回我々は,特徴ある組織学的所見を呈し,経過観察中に突然病態が悪化し急速に致命的な経過をたどった,肝全域にわたる特発性Peliosis hepatisの極めてまれな1例を経験したので報告する.
著者
石黒 晴哉 木村 貴純 二上 敏樹 吉澤 海 安部 宏 須藤 訓 相澤 良夫 酒田 昭彦 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.679-686, 2011 (Released:2011-10-27)
参考文献数
45
被引用文献数
1 1

症例は80歳,女性.2008年9月に肝障害で当科紹介となり,肝生検を含めた精査にて原発性胆汁性肝硬変(PBC)と診断した.その後,経過観察中の2009年9月まで徐々に汎血球減少が進行し,心嚢水貯留が出現した.抗核抗体が高値で,2本鎖抗DNA抗体が陽性であり,米国リウマチ学会の全身性エリテマトーデス(SLE)診断基準の11項目中4項目に合致し,SLEと診断した.さらに,2009年10月の腹部CTで肝S2に径22 mm大の肝細胞癌(HCC)を認めたため,SLEの加療として経口プレドニン20 mgを開始し汎血球減少症,心膜炎の改善を得た後,2010年1月に肝動脈塞栓術およびラジオ波焼灼療法を施行した.術後経過良好で現在経過観察中である.今回,我々はPBCの経過観察中にSLEを発症し,さらにHCCの発生も認めた,稀少かつ示唆に富む高齢のPBC症例を経験したので報告する.