- 著者
-
丸山 知子
吉田 安子
杉山 厚子
須藤 桃代
- 出版者
- 一般社団法人 日本女性心身医学会
- 雑誌
- 女性心身医学 (ISSN:13452894)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, no.1, pp.93-99, 2001
- 被引用文献数
-
3
本調査の目的は,妊娠後期から出産後2年間の女性の心理・社会的状態と育児に対する意識,及びその影響要因について分析することである.本報は,妊娠後期の心理・社会的状態について分析を行った.1.対象と方法:対象者は,札幌市内8ヵ所及び道内7ヵ所の産婦人科病院または総合病院で妊婦健診を受け,研究に同意の得られた妊娠28週以降の妊婦である.調査期間は,平成12年3月下旬から5月上旬である.調査方法は,外来受診時,依頼文書,質問紙を渡し,郵送によって回収した.調査内容は,調査者が作成した29項目からなる心配尺度の質問紙(丸山知子.心身医.1999),ローゼンバーグ(1965)のセルフエスティーム(SE),及びエジンバラ産後うつ病調査票(EPDS)を用いた.2.結果:妊婦695名に配布し,467名より回収(回収率67.2%),そのうち有効回答数は465名であった.(1)対象の背景は,初妊婦61.5%,経妊婦38.5%,平均年齢は28.9歳,最終学歴は高校卒業が最も多く48.1%であった.家族構成は核家族が83.0%,拡大家族は10.8%であった.職業は,専業主婦が70.8%,有職者は28.0%であった.(2)心配尺度とEPDSは0.618,SEは-0.448で各々有意に相関があった(p<0.001).(3)妊婦の援助者は実母が最も多く(59.8%),次いで夫であった(43.4%).今回の妊娠は,計画的43.9%,計画外23.2%,どちらでもよかった30.1%であった.(4)妊娠中の心配尺度が平均3以上の項目は,夫の育児への協力,夫が側にいてほしいという夫のサポートと,妊娠前の容姿にもどるか気になる,体重が気になるという身体的イメージに関する項目であった.この他,育児や子供の健康状態,疲労感,体調不良,いらいら等,心身疲労や情緒不安定も70%以上の者にみられた.(5)心配尺度と年齢,学歴,計画の有無,妊娠歴,職業,援助者との関連をみた.その結果,初妊婦,計画外妊娠では心配尺度が有意に高かった.