著者
井上 貴雄 佐々木 澄美 吉田 徳幸
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.86-98, 2019-03-25 (Released:2019-06-25)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

アンチセンスやsiRNAに代表される核酸医薬品は、これまで治療が難しかった遺伝性疾患や難治性疾患に対する新しいモダリティとして注目を集めている。従来の核酸医薬開発では生体内における安定性や有効性に課題があったが、修飾核酸技術やDDS技術が進展したことで状況は一変しており、局所投与のみならず、全身投与でも高い効果を発揮する候補品が次々と開発されている。本稿では、核酸医薬品の分類、性質、構造、作用機序等の基礎知識を解説し、既承認核酸医薬品を例にあげながら、その開発状況や優位性について議論したい。
著者
吉田 徳幸 吉岡 靖雄 堤 康央
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.132, no.11, pp.1231-1236, 2012 (Released:2012-11-01)
参考文献数
22
被引用文献数
3

A diverse array of nanomaterials (NMs), such as amorphous nanosilica (nSP), carbon nanotubes and titanium dioxide, has become widespread in use due to the development of nanotechnology. NMs are already being applied in universal fields because they have unique physicochemical properties. On the other hands, the safety of NMs has not been well assessed, because NMs have been considered as safe as common larger sized materials which are known not to be absorbed by the body. Because NMs have the potential to improve the quality of human life, it is essential to ensure the safety of NMs and provide information for designing safer NMs. In this regard, we studied the biological distribution and hazard identification of nSP following dermal administration, because nSP is used NMs in the cosmetics field. In the future, our study would help to set the no observed adverse effect level (NOAEL) and acceptable daily intake (ADI), and be useful information for the safety/hazard assessment and evaluation.
著者
山口 真奈美 吉岡 靖雄 吉田 徳幸 宇治 美由紀 三里 一貴 宇高 麻子 森 宣瑛 角田 慎一 東阪 和馬 堤 康央
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

近年,粒子径100 nm以下のナノマテリアル(NM)と共に,10 nm以下のサブナノマテリアル(sNM)の開発・実用化が進展している。その中でも,白金粒子を数nmという大きさに制御した白金ナノコロイド(サブナノ白金;snPt)は,人体の皮膚表面や腸内で発生する全ての活性酸素種の除去に有効であるとされ,既に健康食品や化粧品などに添加されている。一方で,特にsNMは,分子と同等サイズであるために,あらゆる経路から体内に吸収される可能性など,NMとも異なる特有の体内動態に起因する生体影響が懸念されている。本観点から我々は,snPtの安全性確保を目指したNano-Safety Scienceの観点から,体内動態と生体影響の連関情報(ADMET)を収集している。本検討では,一次粒子径が1 nm,8 nmのsnPt (snPt1, snPt8)を経口投与した際の血中移行性や,尾静脈内投与後の血中消失速度に関して情報を収集した。snPt1とsnPt8をマウスに経口投与し,経時的な血中Pt濃度を誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)で測定した。その結果,snPt1は少なくとも2%以上が体内へと移行するが,snPt8は体内へ殆ど吸収されないことが判明した。次に,これら素材をマウスに尾静脈内投与し,血中消失速度を検討した。その結果,snPt1の血中半減期は,snPt8の約1/8であり,snPt8とは異なる特徴的な動態を示すことが明らかとなった。本結果は,粒子径1-8 nmの間に,体内動態に関する閾値・変動点が存在する可能性を示した知見である。今後,粒子径に依存した腸管吸収や排出メカニズムを精査することで,NM・sNMの最適設計(Nano-Safety Design),さらには生体の異物認識におけるサイズ認識機構を解明する足掛かりとなることを期待する。
著者
宇髙 麻子 吉岡 靖雄 吉田 徳幸 宇治 美由紀 三里 一貴 森 宣瑛 平井 敏郎 長野 一也 阿部 康弘 鎌田 春彦 角田 慎一 鍋師 裕美 吉川 友章 堤 康央
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第39回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.O-39, 2012 (Released:2012-11-24)

抗原を粘膜面から接種する粘膜ワクチンは、全身面と初発感染部位である粘膜面に二段構えの防御を誘導できる優れたワクチンとなり得る可能性を秘めている。しかし抗原蛋白質は体内安定性に乏しく、単独接種ではワクチン効果が期待できない。そのため、免疫賦活剤(アジュバント)の併用が有効とされており、既に我々はTNF-αやIL-1α等のサイトカインが優れたアジュバント活性を有することを先駆けて見出してきた(J.Virology, 2010)。しかしサイトカインは吸収性にも乏しく、アジュバントの標的である免疫担当細胞への到達効率が極めて低い。そのため十分なワクチン効果を得るには大量投与を避け得ず、予期せぬ副作用が懸念される。言うまでも無く、現代のワクチン開発研究においては、有効性のみを追求するのではなく、安全性を加味して剤型を設計せねばならない。そこで本発表では、ナノ粒子と蛋白質の相互作用により形成されるプロテインコロナ(PC)を利用することで、サイトカイン投与量の低減に成功したので報告する。PCとは、ナノ粒子表面に蛋白質が吸着して形成する層のことを指す。近年、PC化した蛋白質は体内安定性や細胞内移行効率が向上することが報告されている。まず粒子径30 nmの非晶質ナノシリカ(nSP30)を用いてPC化したTNF-α(TNF-α/nSP30)を、ニワトリ卵白アルブミン(OVA)と共にBALB/cマウスに経鼻免疫し、OVA特異的抗体誘導能を評価した。その結果、有害事象を観察することなく、0.1 µgのTNF-αを単独で投与した群と比べ、TNF-α/nSP30投与群においてOVA特異的IgG・IgAの産生が顕著に上昇していた。以上、PCがTNF-αアジュバントの有効性と安全性を向上できる基盤技術となる可能性を見出した。現在、体内吸収性の観点からPC化サイトカインのワクチン効果増強機構やナノ安全性を解析すると共に、最適なPC創製法の確立を推進している。