著者
中村 哲也 慶野 征[ジ] 吉田 昌之 Tetsuya Nakamura Keino Seiji Yoshida Masayuki
巻号頁・発行日
vol.3, pp.47-67, 2005-03-31

本稿は、果実の地域需要が如何に変化し、如何なる要因によって地域間格差が存在したのかを、地方及び都道府県の側面から、需要関数を推定することによって明らかにした。分析の結果を要約すると以下の通りである。(1)3大地域別データに基づく需要分析では、1973年のオイルショック後、1988年の貿易自由化・バブル崩壊後、国内需要に変化が見られたが、前者の変化の方が大きかった。(2)都道府県別データに基づく需要分析では、果実需要の減退を表す変数を導入し推定したが、国内外産を問わず、主要5 果実の需要は大きく減退した。各果実の価格弾力性は、みかんでは産地において非弾力的であるが、りんご、なし、すいかでは産地でも弾力的であった。また、みかん、バナナは全国的に平準化した需要形態をとるが、りんご、なし、すいかなどは、地域特化した需要形態をとり、現在でも地域間格差が大きい。
著者
吉田 昌之 大田 伊久雄 栗原 伸一 大江 靖雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,近年の深刻な景気低迷のなかにあっても,女性の社会進出や単身世帯の増加等を背景とした食の外部化を反映し,市場拡大を続けている弁当類や調理パン,惣菜等の,いわゆる「中食」について,主に消費行動の観点から国内外の現状を調査・分析したものである。3年計画の標題研究のうち初年度は,まず中食先進国の一つであるイタリア(ペルージア)の大学生に対してアンケート調査を行った。その結果,中食の選好要因として「便利さ」はそれほど高くなく,わが国においてそれが重要な購買要因になっているのとは大きな相違があることが分かった。その原因の一つには,親と同居している地元通学の学生が半数近くに達していることなどが考えられた。研究2年目は,わが国の外・中食産業に価格破壊の波を起こしたファーストフード,その中でも最大の売上高で業界の低価格戦略をリードし続けている「マクドナルド」と,それに対してハンバーガーチェーンとしては最大の店舗数を誇り食材へのこだわり路線で健闘している「モスバーガー」の消費者を対象に調査・分析を行った。その結果,マクドナルドでは中学・高校または男性サラリーマンといった外食依存度が高く低価格を指向している消費者が,モスバーガーではOLなど20歳前後の女性が消費の中心となっていることが分かった。そして研究最終年度は,前年度までに行ってきた調査研究を出版物として公開すると同時に,今後中食の有力な販売チャネルとなると考えられるオンライン直販についての調査や,農産物加工食品を農家民宿で販売した場合の経済波及効果などについても研究を行った。更に,家計調査データを用いて,内・中・外食需要の要因分析を行った結果,中食需要の増大要因は,都市化と消費支出であり,価格は大きな阻害要因とはなっていないことが明らかになった。以上のように,計画された3年間の標記研究により,中食のさらなる発展の可能性が裏付けられた。