著者
佐藤 龍一 大江 靖雄
出版者
地域農林経済学会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.209-214, 2017-12-25 (Released:2018-01-06)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

With the progress of the aging society, how to maintain the daily shopping environment for the elderly has attracted growing attention from a perspective toward life in good health. Thus, this study investigated the life satisfaction of the elderly living in Tama Newtown, Tokyo, which is one of the rapidly aging local communities in urban areas, by focusing on the daily shopping environment. For this purpose, the study applied a two-stage estimation model that first determined the shopping satisfaction and then the life satisfaction of the elderly based on data obtained from a questionnaire survey. The result of the model estimation revealed that shopping satisfaction was positively related to the life satisfaction of the elderly, and that economic factors, infrastructure, and daily life factors are important for the enhancement of their life satisfaction.
著者
栗原 伸一 大江 靖雄
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.97-105, 2002-03-29
被引用文献数
1

農林漁業体験民宿を中心としたグリーンツーリズムによる地域活性化の経済効果を,全国で最も体験民宿が集中している長野県飯山市を事例に,アンケートや地域産業連関分析等によって測定した.その結果,体験民宿利用客1人当たりの消費額は1万7千円程度となり,その年間宿泊者数を現在よりも30万人多い160万人確保できた場合,飯山市への直接的な経済効果は272億円,間接的な波及効果を加えた総合経済効果はその1.24倍の338億円となることが分かった.当初,民宿をはじめとした宿泊施設は生産に直接関わっていないため,それほど大きな波及効果は期待できない可能性もあったが,農産物の販売や食料品の仕入れなどを通した生産誘発効果が,農林水産業や商業,製造業に対して比較的大きく存在していたことは注目すべきであろう.また,飲食業をはじめとしたサービス部門に対する波及効果も大きいことから,今後は,体験民宿を初めとしたより高付加価値型のツーリズムの確立が地域活性化には肝要であろう.
著者
大江 靖雄 栗原 伸一 霜浦 森平 宮崎 猛 廣政 幸生
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題では、都市農村交流時代における新たな農業と農村の役割として近年注目を集めている農業の教育機能について、理論的な整理と実証的な評価を加えて、今後の増進の方向性についての展望を得ることを目的に研究を実施してきた。主要な分析結果については以下のとおりである。1)農業の教育機能は、正の外部性を有する農業の多面的機能の一つの機能で、その外部性が環境ではなく人間を対象としている点に、特徴がある。2)定年帰農者の事例分析から、農業の教育機能は、近代的な最先端技術よりも、伝統的な技術の方が、教育的な機能が大きいことを明らかにした。この点で、高齢者や退職者帰農者などの活躍の場を農業の教育機能の提供者として創出できる余地がある。3)その経済性について実証的な評価を行った結果、正の外部性については、十分な回収がされておらず農家の経営活動として内部化は十分されておらず、農業の教育サービスの自律的な市場としてはまだ十分成長してないことを、計量的に明らかたした。4)酪農教育ファームについての分析結果から、多角化の程度と体験サービスの提供とはU字型の関係を有していることを、実証的に明らかにした。その理由として、技術的結合性、制度的結合性が作用していること、特に制度的な結合性の役割が大きいことを明らかにした。5)農業の教育機能については、今後とも社会的なニーズが高まることが予想されるので、農業経営の新たな一部門として位置づけて、有効な育成支援策を講じることが重要である。
著者
大江 靖雄 佐々木 東一 金岡 正樹
出版者
北海道農業経済学会
雑誌
北海道農業経済研究 (ISSN:09189742)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.68-80, 1993-10-01

This study provides an economic analysis about risk aversion behavior, focusing on farmers' selection of varieties of wheat in upland farming areas in Tokachi, Hokkaido and clarified managerial factors that are considered to determine the aversion behavior. The main points mentioned in this paper are as follows; 1. The wheat acreage increased three times in recent two decades in Hokkaido. In every time, changes in variety are one of the major contributed factors. 2. Takune, a variety of wheat preferred by farmers in Tokachi, is preferred as a crop which enables farmers to take risk aversion behavior so that the higher the risk, the larger the ratio of Takune. Thus we can regard Takune as a crop which shows the degree of risk aversion. 3. In a logit regression analysis applied for Takune selection, the results show that it is correlated positively with farm size and negatively with age of the farmer. That means the larger the farm size and the younger the age, the more farms select Takune. Labor and productivity also have a positive correlation with Takune selection although farms without a successor and variance of yield of kidney beans show a negative sign. The results show that in general farmers who have better managerial condition tend to be risk averse. Consequently, it is reasonable to say that further increases in farm size would raise necessity of the risk spreading function in the upland farming management. This role of risk spreading function played by Takune would be one of the important managerial conditions for stable evolution of farm management in the future.
著者
伊野 唯我 栗原 伸一 霜浦 森平 大江 靖雄
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.63, pp.83-88, 2009-03

近年、わが国ではBSE(牛海綿状脳症)や高病原性鳥インフルエンザ、そして各種の偽装表示の発覚など、食品に対する消費者の信頼を失墜させる事件や問題が次々に発生している。ここ最近でも、2007年1月に起きたテレビ健康番組での納豆に関するデータ捏造事件や、2008年9月に発覚した事故米の不正転売事件など、枚挙にいとまがない。そして、カイワレ大根や低脂肪牛乳の様に、一度(ひとたび)問題が明るみになると、その消費がなかなか回復されない食品も多い。こうした状況を生んだ原因の一つは、経済成長と共に進んだ食の外部化が、結果としてフード・チェインを延長したことにある。そのため、安全性を自ら調べることの出来ない末端の消費者が、新聞やテレビなどから得た一方的な安全性に関する情報のみに頼って購入せざるを得ない状況になってしまったのだろう。そこで本研究では、そうした食品の安全性や危険性に関する情報が、消費者行動にどのような影響を与えているのかを計量的に分析する。
著者
津田 治 大江 靖雄
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.107-109, 2005-03-31

本稿では,千葉県下の全市町村を対象に家庭ごみ排出量に影響を及ぼす所得要因,世帯規模要因,都市と農村の地域差を表す地域要因に対する仮説の検証を行った.結果は以下のとおりになった.1)所得については符号条件が正で一致したが統計的に有意にはならなかった.2)世帯規模については負に有意な結果となった.3)農村部と都市部では有意な差がなく,「都市部に比べ農村部は家庭系ごみの排出量が少ない」という結果は得られなかった.
著者
吉田 昌之 大田 伊久雄 栗原 伸一 大江 靖雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,近年の深刻な景気低迷のなかにあっても,女性の社会進出や単身世帯の増加等を背景とした食の外部化を反映し,市場拡大を続けている弁当類や調理パン,惣菜等の,いわゆる「中食」について,主に消費行動の観点から国内外の現状を調査・分析したものである。3年計画の標題研究のうち初年度は,まず中食先進国の一つであるイタリア(ペルージア)の大学生に対してアンケート調査を行った。その結果,中食の選好要因として「便利さ」はそれほど高くなく,わが国においてそれが重要な購買要因になっているのとは大きな相違があることが分かった。その原因の一つには,親と同居している地元通学の学生が半数近くに達していることなどが考えられた。研究2年目は,わが国の外・中食産業に価格破壊の波を起こしたファーストフード,その中でも最大の売上高で業界の低価格戦略をリードし続けている「マクドナルド」と,それに対してハンバーガーチェーンとしては最大の店舗数を誇り食材へのこだわり路線で健闘している「モスバーガー」の消費者を対象に調査・分析を行った。その結果,マクドナルドでは中学・高校または男性サラリーマンといった外食依存度が高く低価格を指向している消費者が,モスバーガーではOLなど20歳前後の女性が消費の中心となっていることが分かった。そして研究最終年度は,前年度までに行ってきた調査研究を出版物として公開すると同時に,今後中食の有力な販売チャネルとなると考えられるオンライン直販についての調査や,農産物加工食品を農家民宿で販売した場合の経済波及効果などについても研究を行った。更に,家計調査データを用いて,内・中・外食需要の要因分析を行った結果,中食需要の増大要因は,都市化と消費支出であり,価格は大きな阻害要因とはなっていないことが明らかになった。以上のように,計画された3年間の標記研究により,中食のさらなる発展の可能性が裏付けられた。