著者
大田 伊久雄
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.88-98, 2011 (Released:2011-06-22)
参考文献数
15

1947年にJournal of Forestry誌に掲載されたリチャード・ヴァーネイ氏の論文「日本における林務官の地位」は, 終戦後間もないわが国の国有林野の現状を鋭く捉えている。そこで本論文では, ヴァーネイ論文の邦訳を中心に, そこから学び取れる問題点を考察した。彼の論文では, 林野行政における特権的高級官僚制度こそが最大の問題点であるとの指摘がなされているが, それはわが国の林野行政にとっては現代にも相通じる警鐘であった。
著者
大田 伊久雄
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
no.127, pp.137-142, 1995-03
被引用文献数
1

米国連邦有林は森林資源の保護および国民のニーズに応じた利用という精神のもとに,農務省森林局によって管理されてきた。そこからの木材販売においては地元企業を優先し伐採収入の25%を地元の郡へ供与するなど地域経済の発展に大きく貢献してきたし,また第二次世界大戦後の急激な木材需要の増大に対応した増産をするなど国家的見地からも重要な役割を果たしてきた。しかし,1960年頃からの自然保護運動の高まりとともに大面積皆伐などへの批判が強まり,いくつもの法整備を経て連邦有林の森林管理規定は修正変更を繰り返してきている。本論文は,こうした認識を踏まえて米国連邦有林における木材生産活動の制度的変遷をたどるとともに,現行の木材販売の基礎である立木評価システムの分析を通してその問題点と妥当性について考察を行ったものである。また,1980年代に全米各地で大きな問題となったBelow-cost timber salesについてもその発生要因および議論の焦点を示し,森林局が連邦有林管理上の一つの大きな目的である木材生産にどのような姿勢で取り組んでいるかを分析した。
著者
野田 公夫 足立 泰紀 足立 芳宏 伊藤 淳史 大田 伊久雄 岡田 知弘 坂根 嘉弘 白木沢 旭児
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

1930年代日本において、経済的価値を生み出す源として「資源」という言葉がクローズアップされたが、とくに戦争準備の過程に強く規定されたところに大きな特徴があった。農林業は持続性を犠牲にして戦争に総動員されるとともに、工業原料にめぐまれない日本では「あらゆる農産物の軍需資源化」という特異な事態をうんだ。これは、アメリカはもちろん、同じ敗戦国であるドイツとも異なる現象であり、当時の日本経済が巨大寡占企業を生み出しながら就業人口の半ばを農業が占める農業国家であるという奇形的構造をとっていたことの反映であると考えられる。
著者
大田 伊久雄
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.3-14, 2015 (Released:2017-08-28)

我が国の国有林は明治期の創設以来,明確な存在意義が定義されないまま管理経営されてきた。第2次世界大戦までは木材供給と国家財政への寄与が重要な役割であったが,高度経済成長期以降は3大使命(公益的機能の発揮・木材生産・地元貢献)が喧伝されるようになる。経営改善期を経て抜本的改革に至り公益的機能重視を打ち出すが,実態としては独立採算制度破綻の影響により,森林に人も金もかけない消極的で自然任せの環境重視である。海外の事例でも,国有林の存在意義は環境・経済・社会面での国民生活への貢献といえるが,先進諸国においては概して健全な森林管理が行われている。一般会計化された我が国の国有林は,今こそ「国民の森林」としての存在意義を明確化し,人員の拡充と民国連携を進め,国民と地域のニーズに応じた多様性のある森林管理を実現していく好機にある。
著者
大田 伊久雄
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.28-40, 2008-07-01
参考文献数
9
被引用文献数
1

ポーランドの国有林は,我が国とほぼ同じ約700万haの面積を持つ,ヨーロッパで最大規模の国有林である。これを管理する組織LP(国営企業「国有林」)は,政府からは独立した非営利の経営体であり,森林法に定められた目的に従って国有林の管理を任されている。LPにおける国有林管理は,徹底した現場重視の姿勢に特徴があるが,硬直したピラミッド型組織にも見える職階体制とのギャップが興味深い。本論文では,中央総局・地方局・森林区という3つのレベルにおける国有林管理業務の実態調査を通して,ポーランド国有林における森林管理の全体像の把握を試みた。さらに,LPによる国有林管理の優れた点および成功要因を探り,加えて現在直面する問題点および組織に内在する課題について考察した。近い将来に解決すべき課題を残しつつも,LPは安定した組織体制のもとで国有林を管理経営している,と結論づけることができる。
著者
野田 公夫 足立 泰紀 足立 芳宏 伊藤 淳史 大田 伊久雄 岡田 知弘 坂根 嘉弘 白木沢 旭児
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

1930 年代の日本では「資源」という言葉が急浮上した。そして「あるもの」ではなく「作ることができるもの」という側面が過剰に強調されただけでなく、人すらその対象に加わえられた(人的資源)。これは、ドイツにもアメリカにもない特異な現象であり、物質的豊かさに恵まれない日本が総力戦体制に立ち向かうための重要なレトリックであった。本研究では、総力戦体制期の農林資源開発に関する、日・独・米三国の比較史的研究をおこなった。
著者
村嶌 由直 大田 伊久雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1990年世界農林業センサスは林業離れの実態を全体的に明らかにしたが,その中で地域的に新たな発展の動きも見られた。本研究は,'90年代の全体像を地域的に解明するとともに,地域的にあるいは経営体として確立している"地域林業"および林家・法人に焦点をあて,その成立基盤を解明した。高度産業社会においては都市への人口流出,不在村所有・サラリーマン林家の増加,こうした状況は零細所有者の森林管理を困難にしている。一方では、森林のもつ多機能の発揮のために森林管理が緊急に対処されなければならない課題になっている。木材生産局面からみると、戦後造林が利活用段階に入った南九州(宮崎・熊本など)およびまだその段階への移行過程にある東北(宮崎・岩手など)の林業に地域区分が可能であるが,林業発展へのベクトルがみられるのは一つのまとまりをもつ地域単位を基礎とした場合であり,そこに上層組合員に支持された森林組合が果たしている役割が極めて大きい。加えて地方自治体による側面的な支えによって前進を確実にしている。しかし,林業経営が成立する地域は限定的で,試算される林業の内部収益率の低さから言えば全地域的である。60年代半ばから70年代にかけて公的造林が森林造成に,あるいは地域振興に大きく寄与したが、21世紀を迎える今日,放棄され森林管理を公的に進める手だては見い出し難い。一部で模索されているのが、下流の「水」の受益者・市町村が上流域の森林整備のために財政的に支援するものであり,「流域」を単位とした森林管理の道である。
著者
吉田 昌之 大田 伊久雄 栗原 伸一 大江 靖雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,近年の深刻な景気低迷のなかにあっても,女性の社会進出や単身世帯の増加等を背景とした食の外部化を反映し,市場拡大を続けている弁当類や調理パン,惣菜等の,いわゆる「中食」について,主に消費行動の観点から国内外の現状を調査・分析したものである。3年計画の標題研究のうち初年度は,まず中食先進国の一つであるイタリア(ペルージア)の大学生に対してアンケート調査を行った。その結果,中食の選好要因として「便利さ」はそれほど高くなく,わが国においてそれが重要な購買要因になっているのとは大きな相違があることが分かった。その原因の一つには,親と同居している地元通学の学生が半数近くに達していることなどが考えられた。研究2年目は,わが国の外・中食産業に価格破壊の波を起こしたファーストフード,その中でも最大の売上高で業界の低価格戦略をリードし続けている「マクドナルド」と,それに対してハンバーガーチェーンとしては最大の店舗数を誇り食材へのこだわり路線で健闘している「モスバーガー」の消費者を対象に調査・分析を行った。その結果,マクドナルドでは中学・高校または男性サラリーマンといった外食依存度が高く低価格を指向している消費者が,モスバーガーではOLなど20歳前後の女性が消費の中心となっていることが分かった。そして研究最終年度は,前年度までに行ってきた調査研究を出版物として公開すると同時に,今後中食の有力な販売チャネルとなると考えられるオンライン直販についての調査や,農産物加工食品を農家民宿で販売した場合の経済波及効果などについても研究を行った。更に,家計調査データを用いて,内・中・外食需要の要因分析を行った結果,中食需要の増大要因は,都市化と消費支出であり,価格は大きな阻害要因とはなっていないことが明らかになった。以上のように,計画された3年間の標記研究により,中食のさらなる発展の可能性が裏付けられた。