著者
小西 麗子 磯貝 潤一 石川 沙矢香 宮本 廉 和田守 翼 眞島 崇 向井 啓 小森 浩二 伊藤 慎二 河田 興
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-11, 2022 (Released:2022-02-10)
参考文献数
17

がん患者と薬剤師との信頼関係が構築されるには、面談時における薬剤師の印象が重要である。今回、患者が薬剤師に抱く印象を調査し、薬剤師の継続的な関わりによる印象の変化とその要因について検討した。 対象は、2018年8月から2020年8月に津島市民病院に通院し、初めて外来化学療法室でがん化学療法が導入される患者とした。初回の治療からがん薬物療法認定薬剤師が毎回面談し、初回と5回目の計2回、質問紙により印象を調査した。調査は、愉快さなどの形容詞対を7段階の尺度で評価し、年齢、性別、がん種、Stage、レジメン、有害事象とその対応について電子カルテの記録から収集した。また、予測5年生存率を算出し、患者の属性ごとに各形容詞対の変化を解析した。 14名に対し、3~4か月の間に各5回の指導・面談を行った結果、全体では安定感に関する項目が否定的な印象へ有意に変化した。しかし、年齢、性別、予測5年生存率、有害事象の訴えの有無を患者の属性として印象の変化を比較したところ、女性や有害事象を訴えた患者では、「愉快な」印象へ変化する傾向がみられた(p=0.031、p=0.027)。 がん患者の対応において、5回程度の指導・面談では薬剤師に抱く印象に大きな変化はみられないが、性別や有害事象への対応は印象に影響し、信頼関係構築に十分配慮されるべき要因である可能性が示された。
著者
八幡 昌紀 永嶋 友香 大寺 佑典 杉浦 颯希 周藤 美希 富永 晃好 向井 啓雄 國武 久登
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.29-37, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
39
被引用文献数
1

カンキツ類の倍数性育種を効率的に進めるために,種子の形態と重さに着目し,二倍体ブンタン‘晩白柚’(Citrus maxima(Burm.)Merr.)と三倍体グレープフルーツタイプカンキツ ‘オロブランコ’(C. maxima × C. paradisi)との交雑を行い,得られた種子の形態および重さと,それぞれの種子から得られる実生の倍数性との関係を調べた.‘オロブランコ’ を交雑した場合,1果実当たりの総種子数は二倍体ナツミカン ‘川野夏橙’ を交雑した対照区より有意に少なくなり,不完全種子としいなが多く出現した.‘オロブランコ’ との交雑から得られた実生の倍数性をFCMで解析した結果,対照区と同様に完全種子のほとんどが二倍体であったが,200 mg未満の完全種子からは三倍体が高い頻度で出現し,500 mg以上の大きい完全種子からは四倍体の出現が認められた.不完全種子からは三倍体と異数体が多く出現し,さらに半数体も2個体得られた.以上より,これらの種子を選抜することにより効率的に様々な倍数体を獲得できると考えられる.
著者
大林 沙泳子 八幡 昌紀 仲條 誉志幸 藤井 明子 向井 啓雄 原田 久 高木 敏彦
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.407-412, 2009 (Released:2009-10-25)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

ニホンスモモ‘貴陽’の結実不良の原因を解明するために,いくつかの基礎的な調査を行った.‘貴陽’は‘太陽’より早期落果が激しく,満開56日後の落果率は‘太陽’が80.4%であるのに対し,‘貴陽’では95.5%であった.不完全花の発生頻度と花柱内での‘ハリウッド’花粉の花粉管伸長には両品種に差がなかった.一方,‘貴陽’の花粉は‘太陽’よりも大きさにばらつきがみられた.花粉稔性は,‘太陽’の染色率と発芽率がそれぞれ91.6%と47.6%であったのに対し,‘貴陽’のそれらは70.4%と3.2%であり,‘太陽’と比較して著しく低かった.さらに,‘貴陽’では種子の大きさにもばらつきが認められ,完全種子の出現率(71.3%)は‘太陽’(93.0%)より低かった.最後に,‘貴陽’の倍数性を解析した結果,染色体数24本を有する三倍体であった.
著者
高木 敏彦 向井 啓雄 池田 竜司 鈴木 鐵男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.733-738, 1994
被引用文献数
4 11

寒害によって生じたビワの種子枯死果の肥大発育と収穫果の品質に及ぼすジベレリンならびにホルクロルフェニュロンの散布処理の影響について調査し, 無核果生産の可能性について考察した.<BR>1.GAとKTの併用処理によって, 種子枯死果の果実肥大は有核果に相当する程度まで促進された. また, その果形は細長く, 果肉の厚い果実であった.<BR>2.寒害遭遇直後の処理による肥大効果は著しく,時間をおいて処理した場合には, 処理による効果が小となった. また, 年内に寒害に遭遇し, 種子の枯死した果実にKTの併用処理を行うと肥大効果はより大であった.<BR>3.寒害遭遇直後の処理果では, 着色の促進, 糖含量低下の傾向が見られ, とくに肥大の著しかったGAとKTの併用処理で果汁のBrixが著しく低下した.
著者
向井 啓雄 高木 敏彦 手島 洋二 鈴木 鐵男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.479-485, 1996-12-15
被引用文献数
5 7

秋季にウンシュウミカン樹に強度と弱度の水ストレス処理(それぞれWS-s区およびWS-m区とする)を行い,果実各部位における糖含量を測定した.<BR>水ストレス処理により果皮と果汁の糖,特に還元糖が増加した.果皮においては特にフルクトースの増加が顕著であった.これらのことは水ストレスの程度が強い方が著しかった.<BR>WS-s区では果汁,果皮ともスクロースの増加の抑制が認められた.11月26日においてWS-s区の果皮の糖含量はWS-m区のそれよりも低い傾向であった.<BR>果梗部の方が果頂部に比べて糖含量は低いが,還元糖の比率が高かった.この傾向は水ストレス処理を行っても変化しなかった.<BR>果実部位やストレスの程度にかかわらず,水ストレス処理によって還元糖の増加が認められた.このことは蓄積部位でのスクロースの分解によるものなのか,あるいは転流段階での分解なのかについては今後の検討課題である.