著者
八幡 昌紀 永嶋 友香 大寺 佑典 杉浦 颯希 周藤 美希 富永 晃好 向井 啓雄 國武 久登
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.29-37, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
39
被引用文献数
1

カンキツ類の倍数性育種を効率的に進めるために,種子の形態と重さに着目し,二倍体ブンタン‘晩白柚’(Citrus maxima(Burm.)Merr.)と三倍体グレープフルーツタイプカンキツ ‘オロブランコ’(C. maxima × C. paradisi)との交雑を行い,得られた種子の形態および重さと,それぞれの種子から得られる実生の倍数性との関係を調べた.‘オロブランコ’ を交雑した場合,1果実当たりの総種子数は二倍体ナツミカン ‘川野夏橙’ を交雑した対照区より有意に少なくなり,不完全種子としいなが多く出現した.‘オロブランコ’ との交雑から得られた実生の倍数性をFCMで解析した結果,対照区と同様に完全種子のほとんどが二倍体であったが,200 mg未満の完全種子からは三倍体が高い頻度で出現し,500 mg以上の大きい完全種子からは四倍体の出現が認められた.不完全種子からは三倍体と異数体が多く出現し,さらに半数体も2個体得られた.以上より,これらの種子を選抜することにより効率的に様々な倍数体を獲得できると考えられる.
著者
登島 早紀 岡本(中村) 理恵 阿部 健一 坂嵜 潮 小松 春喜 國武 久登
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.345-352, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3

温暖な日本の気候に適し,健康機能性を有するラズベリー品種の作出のため,環境適応性の高い在来野生種ナワシロイチゴ(Rubus parvifolius L.)とラズベリー‘インディアンサマー’(R. idaeus L.)の種間交雑を行った.葉,花および果実の形態的調査において,‘07RUBIXP01’は両親の中間的な値を示し,RAPD分析によるDNA評価でも雑種性が確認された.‘07RUBIXP01’は小さな刺が見られるものの,暖地環境下でも旺盛な生育を示し,両親に比べ果実重が有意に高いことが確認された.総ポリフェノール,アントシアニンおよびエラジタンニン含量測定において,‘07RUBIXP01’は両親の中間的な値を示した.特にエラジタンニン含量において‘インディアンサマー’と比べ約4倍高い値を示した.さらに,糖と有機酸含量の測定では,両親に比べ糖酸比が高く,食味に優れていた.2012年に‘07RUBIXP01’として品種登録し(農林水産省品種登録第21801号),今後日本の温暖地域において有望なラズベリー品種として期待できる.
著者
境 健太郎 今井 正人 出水 信雄 神力 はるな 國武 久登 三澤 尚明 水光 正仁
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-31, 2020-05-01 (Released:2020-05-13)
参考文献数
4

Recently, many universities have been working to promote the sharing of research facilities and equipment in Japan. University of Miyazaki is also developing a sharing service system of those through two projects supported by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology. In addition, we have established the Miyazaki Facility Network, in which public research institutions in Miyazaki Prefecture participate, and are working to create an environment that can provide mutually advanced analysis technologies that contribute to regional revitalization.In this paper, we introduce a common facilities management system linked on-line to the existing financial accounting and the researcher database developed by University of Miyazaki, and describe the relationship with the administration policy of our university and examples of utilization in Miyazaki prefecture.
著者
國武 久登 津田 浩利 高木 良心 大野 礼成 黒木 義一 吉岡 克則 鹿毛 哲郎 伊藤 俊明 小松 春喜
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.105-110, 2006-06-15
被引用文献数
4

北部ハイプッシュブルーベリーの暖地栽培技術の開発を目的として,シャシャンボの台木としての可能性を検討した.3年生実生のシャシャンボに'バークレー','ブルークロップ'および'アーリーブルー'を接ぎ木したところ,活着率は85.7〜100%であった.また,接ぎ木活着の品種間差異を調査するために,ブルーベリー41品種(ハイブッシュブルーベリーおよびラビットアイブルーベリー)をシャシャンボに接ぎ木したところ,すべての品種で接ぎ木が可能であった.接ぎ木部分の不親和症状は接ぎ木4年後でも観察されなかった.シャシャンボ台に接ぎ木した'アーリーブルー'の新梢の第一次伸長量や果実垂は白根殊に比べ有意に高かった.しかしながら,新梢の第一次伸長は,ラビットアイブルーベリー台('ホームベル','ティフブルー')と比較してシャシャンボ台が劣っていた.果実の糖および有機酸分析を行った結果,含量および組成比に台木による大きな差異は認められなかった.以上の結果から,シャシャンボほブルーベリーと接ぎ木親和性があると推測され,南九州などの暖地において北部ハイプッシュブルーベリー栽培の台木として期待できると推測された.
著者
執行 みさと 竹馬 昂平 國武 久登 小松 春喜
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.335-342, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
36
被引用文献数
1 2

キイチゴ(Rubus spp.)は,果実中に含有されるフェノール化合物が健康維持に効果的と考えられることから注目されつつある果樹である.我が国にも多くの野生種が自生しているが,栽培されている品種のほとんどは欧米で改良されたものである.本研究では,野生種を園芸的に利用するための基礎的な知見を得るため,九州地方に自生するいくつかの野生種を収集し,育種素材としての評価を行った.栽培種はいずれも二倍体であったが,野生種はゲノムサイズの異なる二倍体と少数の六倍体であった.シマバライチゴを除く野生種の集合果は,栽培種と比較して小さくなかった.野生種の中にはクマイチゴ,カジイチゴおよびナガバモミジイチゴのように栽培種に比べ果実中の糖含量が高く,有機酸含量が低いものがあった.また,クマイチゴ,ナガバモミジイチゴおよびシマバライチゴは栽培種に比べ果実中の総ポリフェノール含量あるいは抗酸化活性が高かった.我が国自生の野生種のいくつかは,栽培し易く,果実品質が優れかつ機能性の高い品種を育成するための育種素材となり得るものと思われた.
著者
小松 春喜 國武 久登 國武 久登 小野 政輝
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

これまで顧みられなかった我が国自生のスノキ属野生種(ブルーベリーはスノキ属に属する)を園芸学的に評価した。その結果、野生種の果実は小さく品質も劣るが、機能性が高いことを明らかにした。また、野生種と栽培種のブルーベリーとの交雑を行い、種間雑種(種が異なる植物間の雑種)の獲得を試みた。得られた雑種の内、クロマメノキとの雑種については、形態的特性や果実の品質および機能性などを明らかにし、それらの雑種が我が国独自のブルーベリー品種の育成にとって貴重な素材となることを示した。