著者
吹田 浩 伊藤 淳志 西形 達明 西浦 忠輝 沢田 正昭 仲 政明 渡邊 智山 安室 喜弘
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

古代エジプトの遺跡で典型的な石造文化財であるマスタバ墓の保存状況、劣化の現状、エジプトの管理当局の保全対策をサッカラのイドゥートを事例にエジプト学、建築工学、地盤工学、保存科学、文化財修復技術の観点から、総合的に研究を行い、問題点を整理した。その際、3次元の精密な記録を作成し、情報リテラシーの観点から使いやすいデータベースの技術を開発した。エジプト革命(2011年1月末)後の政情不安のために、現地での調査ができずに、研究が遅れざるを得なかったが、代替のデータを使用するなど、可能な限り当初の目的達成をはかり、データベースの開発を達成した。今後は、各種のデータを入力し、活用していくことになる。
著者
吹田 浩 西浦 忠輝 米田 文孝
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

2003年8月にエジプト国古物最高評議会から、サッカラにあるイドゥートのマスタバ墓の地下埋葬室壁画を修復する正式な許可を得て、同年11月に第1次調査、2004年4〜5月に第2次調査をおこなった。調査の最大の意義は、イドゥートの壁画がギザ・サッカラ地域での初めての修復の試みであることにある。壁画の状態は予想をこえて悪く、1935年の報告書に比較して相当に剥落が進行していることを確認した。注意すべきは、クラックの存在と浸水による損傷である。天井・壁・床に多くのクラックがあり、南面の壁のクラックは、この70年の間に成長していることは明らかである。北面にはかつての浸水のあとが明瞭であり、東のシャフト入り口上部も浸水による損傷と考えられるあとが見られる。乾燥地帯にあるとはいえ、何回かの豪雨があり、浸水したものと思われる。正確な記録を作成するために、カメラとビデオによって壁画を撮影した。多くの壁画片が床面に落ちていたために、これらを回収した。これらの壁画片は、修復の際に本来の位置に戻すことがある程度可能である。壁画の劣化の原因を探るべく、化学分析(X線回折、岩石分析学、DTA分析、赤外線分析、断面分析法など)をおこない、埋葬室内と外部に温湿度計を設置している。調査の範囲では、温度と湿度とも極めて安定している。壁画と母岩の状態から、壁画は母岩からはぎ取る必要があると考えている。その際、埋葬室が閉鎖空間であることと、さらに日本独自の技術の有効性を確認するために、フノリと和紙(あるいは、レーヨン紙)による引き剥がし方法を検討している。2年間の調査によって、エジプトの遺跡管理当局と信頼関係を築くことができた。また、エジプト側の研究協力者が遺跡管理当局の修復部門のトップとなったことから、我々の調査が今後開発する修復技術は、エジプト側にすみやかに普及することが期待される。
著者
吹田浩著
出版者
星雲社 (発売)
巻号頁・発行日
2009
著者
森 直紀 藤里 和樹 廣瀬 詢 肥後 時尚 末森 薫 吹田 浩 安室 喜弘
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.85-86, 2018-03-13

近年,文化財の記録方法として,複数の写真から対象の3次元形状を復元するStructure From Motion(SfM)の利用が普及している.現状の詳細な記録が可能となる一方,古い調査記録と比較して変容を確認することが文化財において重要となっている.本研究では,現状と過去の写真記録を精緻に照合するシステムを提案し,変容を可視化することを目的とする.SfMで取得した現状の3次元点群と過去の写真記録の画素を対応付け,撮影したカメラの位置姿勢を推定する.視点が整合した3次元モデルを,過去の記録写真に重畳させてCGでレンダリングすることで照合を可能とする.本稿では重畳結果の精度検証について報告する.