著者
一言 広 諸角 聖 和宇慶 朝昭 坂井 千三 牛尾 房雄 道口 正雄 辺野 喜正夫
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.273-281_1, 1978-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
16

「紅茶キノコ」と呼ばれる嗜好飲料の安全性の解明を目的として微生物学的ならびに有機酸組成の検討を行った.「紅茶キノコ」液から検出した微生物は Acetobacter xylinum, Saccharomyces cereviciae, S. inconspicus, Candida tropicalis, Debaryomyces hansenii などであった. これらの菌の凝塊形成至適温度は26~27°で, 菌の発育により紅茶液のpHは最終的に3.1以下となった. また, 本液に各種病原細菌を接種し生存性を検討した結果, いずれも48時間以内に死滅したことから, これらの菌により汚染される危険はほぼないものと考えた. 一方,「紅茶キノコ」液中に存在した有機酸の95%以上は酢酸で, 他に微量の乳酸およびギ酸が認められた.
著者
諸角 聖 和宇慶 朝昭 一言 広 小原 哲二郎
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
食品と微生物 (ISSN:09108637)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.80-87, 1985-08-20 (Released:2010-07-12)
参考文献数
23

生および焙煎コーヒー豆におけるカビの増殖および毒素産生の相違がいかなる原因によるものかを明らかにする目的で, コーヒー豆成分のカビに及ぼす影響を検討し, 以下の結論を得た.1) 蒸留水またはYES培地を用いて水分含量を50%に調整した生および焙煎コーヒー豆粉末にA. flavus, A. ochraeusなど6種のカビを接種し, 発育と毒素産生の有無を調べた. その結果, 生豆粉末においては全菌種が発育し, ochratoxin A産生もみられたのに対し, 焙煎豆粉末においてはYES培地を添加した条件でA. ochraceusの発育が認められたのみで, 他の菌の発育は全くみられなかった.2) 焙煎コーヒー豆成分中には抗カビ物質の存在が示唆されたため, その単離を試み, 活性物質本体としてカフェインを得た.3) カフェインはA. flavusおよびA. versicolorの発育をいずれも2.5mg/mlで, P. glabrumおよびC. cladosporioidesの発育を5.0mg/mlで, F. solaniの発育を10mg/mlで完全に阻止したのに対し, A. ochraceusの発育は10mg/mlの濃度においても阻止しなかった. また, カフェインは生豆中にも存在することから, そのカフェインを単離し焙煎豆由来カフェインと抗菌活性を比較したところ, 両者の活性に差は認められなかった.4) 生および焙煎豆からの温湯抽出画分についてカフェイン含有量および抗菌活性をそれぞれ比較した. その結果, 両画分中のカフェイン含有量に差が認められなかったにもかかわらず, 抗菌作用は焙煎豆由来画分のみに認められ, 生豆由来画分には全くみられなかった.5) この結果から, 生豆由来温湯抽出画分中にカフェインの抗菌作用を不活化する物質の存在が疑がわれたため, その物質の単離を試み, 最終的にクロロゲン酸を得た.6) クロロゲン酸はカフェイン2.5mgに対して15mg, 5.0mgに対して30mgと, カフェインの3倍のモル量で最も顕著にカフェインの抗菌作用を不活化した. このクロロゲン酸は生豆中でカフェインと複合体を形成して存在し, 焙煎によりその含有量が半減することから, カビが生豆において発育可能であるのに対して焙煎豆で発育できない理由が, 主として両者におけるクロロゲン酸含有量の差であることが明らかとなった.
著者
一言 広 諸角 聖 和宇慶 朝昭 坂井 千三 牛尾 房雄 道口 正雄 辺野 喜正夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.273-281_1, 1978

「紅茶キノコ」と呼ばれる嗜好飲料の安全性の解明を目的として微生物学的ならびに有機酸組成の検討を行った.「紅茶キノコ」液から検出した微生物は <i>Acetobacter xylinum</i>, <i>Saccharomyces cereviciae</i>, <i>S. inconspicus</i>, <i>Candida tropicalis</i>, <i>Debaryomyces hansenii</i> などであった. これらの菌の凝塊形成至適温度は26~27°で, 菌の発育により紅茶液のpHは最終的に3.1以下となった. また, 本液に各種病原細菌を接種し生存性を検討した結果, いずれも48時間以内に死滅したことから, これらの菌により汚染される危険はほぼないものと考えた. 一方,「紅茶キノコ」液中に存在した有機酸の95%以上は酢酸で, 他に微量の乳酸およびギ酸が認められた.
著者
藤川 浩 和宇慶 朝昭 楠 淳 野口 やよい 橋本 由美 太田 建爾 伊藤 武
出版者
Japanese Society of Food Microbiology
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.41-44, 1996-06-20 (Released:2010-07-12)
参考文献数
11
被引用文献数
2

一般消費者からの苦情品および製造・販売業者から収去品として集あられた市販ミネラルウォーター292件 (90銘柄) について微生物性異物を調べた.その結果, 異物として45検体 (20銘柄) から真菌, 14検体 (10銘柄) から細菌の菌塊が検出された.検出された真菌の種類としてはPenicillium属が極めて多く, 次いでAcremonim属, Cladosporium属などであった.一つの銘柄から複数の菌種が検出されたものもみられた.また真菌性異物の認められた試料では細菌汚染は低かった.
著者
諸角 聖 和宇慶 朝昭 柳田 和代 工藤 泰雄
出版者
Japanese Society of Food Microbiology
雑誌
食品と微生物 (ISSN:09108637)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.45-53, 1991-05-31 (Released:2010-07-12)
参考文献数
18

For the purpose of simplifying the methods for mycological examinations of foods, comparative studies of media for the detection of molds were carried out. To evaluate the growth potentials, a total of 72 media including 21 of conventional ones were tested with spore suspensions of 29 species of mold. After incubation for 3 days at 25°C, the colony size of each strain was measured, and then after incubation for further 4 days, sporulation was estimated. The results demonstrated that growth and good sporulation of all strains were observed in 12 kinds of media tested. These media were further compared in the recovery of molds from 55 food samples. A high recovery of molds was obtained in potato dectrose agar (PDA), 25% glucose-supplemented PDA (PDAG250), 5% glucose-supplemented rose bengal-chloramphenicol agar (RBC; RBC50) and 10% glucose-supplemented RBC (RBC100). PDA and PDAG 250 agars yielded spreading colonies with some molds such as Mucor and Rhizopus by their rapid growths, while RBC50 and RBC100 prevented spreading colonies of these molds, yielding clearly isolated colonies. The latter two media are recommended for routine isolation and enumeration of molds in foodstuffs.
著者
藤川 浩 井部 明広 和宇慶 朝昭 諸角 聖 森 治彦
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.160-164, 2002-06-25
被引用文献数
1 1

以前報告した<i> P. corylophilum</i> による食品用離型油からの香粧臭生成の機構を解明するため,各種の炭素鎖長の食用油及びその構成成分からの本菌による揮発性物質生成を解析した.一般の食用油ではココナッツオイルからのみ香粧臭の生成が認められた.トリアシルグリセロール及び飽和脂肪酸からはその構成脂肪酸から1つ炭素数の少ないケトンとアルコールが主に生成された.揮発性物質が生成可能な炭素鎖長はトリアシルグリセロール及び脂肪酸でそれぞれC<sub>6</sub>-C<sub>11</sub>とC<sub>10</sub>-C<sub>11</sub>であり,前者の方が炭素鎖長の範囲が広かった.離型油からの香粧臭はトリアシルグリセロールとしてはC<sub>8</sub>-C<sub>10</sub>の構成脂肪酸から,脂肪酸としてはC<sub>10</sub>のものから生成したと推測された.また,短鎖脂肪酸及びそれらからなるトリアシルグリセロールでは,本菌の増殖と揮発性物質生成に抑制が見られた.