著者
和田 佐和子 鷲田 孝保 山﨑 郁子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.32-43, 2007-02-15

要旨:単一事例研究法条件交代デザイン(ATD)はべ一スラインと交代操作介入期をもち,複数の介入の効果を比較することができる.しかし,本研究では倫理的配慮からべ一スラインを設定できなかった.そこで,べ一スラインを設定しないオリジナルデザイン「ATD-W介入型」を提案した.デイケアに通所する重度認知症高齢者のSさん(89歳女性)を対象に,当デイケア活動における従来の介入(レクリエーション)と新しい介入(音楽活動)に対する身体活動や表情の変化について比較したところ,Sさんの場合は音楽活動の方が身体活動を引き出すことができた.2つの介入の効果を比較し,「ATD-W介入型」の臨床的有用性について考察する.
著者
和田 佐和子 鷲田 孝保 山崎 郁子
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.57-65, 2004-03
被引用文献数
1

「クライエント中心の作業療法」の考え方を通し, 日本の在宅痴呆高齢者に対する作業療法サービスについて考察したところ, 痴呆高齢者本人に対する本質的なサービスとは何か, という課題があがった。その答えを探すために, 学問的視点及び一般社会の視点から, QOLに関する文献調査を行った。結果より, QOLの各側面 (生命の質, 生活の質, 人生の質) に対する本質的なサービス項目が11項目導き出された。さらに, 「目の前のその人の, 今この瞬間を大切に, 潜在能力を引き出す作業療法サービス」と一つにまとめられた。これはリハビリテーションの理念とも一致し, 作業療法の本質的なサービスとは何か, という課題に答えるものであった。これらの答えが, 痴呆高齢者本人を「クライエント」と信じ, サービスを提供しようとする多くの作業療法士や他のケア提供者にとって, 道しるべとなることを願う。