著者
品川 俊一郎
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.161-166, 2017-09-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
23

認知症患者に出現する食行動の問題は,身体合併症の原因となり,在宅介護に破綻をもたらし,病院や施設におけるケアでも問題となる.食行動異常の病態は多彩であるが,筆者らの調査では因子分析によって「食べ過ぎ」「嚥下」「食欲低下」「こだわり」の4因子に類型化することが可能であった.食行動には原因疾患や認知機能障害,BPSD,介護環境,社会文化的側面など多くの要素が関与する.原因疾患だけみてもアルツハイマー病,血管性認知症,前頭側頭型認知症,レビー小体型認知症各々の食行動異常のパターンは異なり,それによって対処も異なる.原因疾患や病態を正確に評価し,それに沿ったマネージメントをする視点が求められる.
著者
品川 俊一郎
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.361-367, 2016

<p>&ensp;&ensp;前頭側頭型認知症 (Frontotemporal dementia: FTD) は遺伝学的, 病理学的, そして臨床症候群としても不均一な疾患群であり, 関連遺伝子としてはMAPT, GRN, C9orf72 などが知られており, 組織病理学的にはピック球のような tau をもつもの, TDP-43 をもつもの, FUS をもつものなどに大別される。この生物学的不均一性によりアルツハイマー病における A β蛋白のような疾患特異的なバイオマーカーの開発が困難となっている。画像診断においては前頭葉の大脳皮質の損傷は均一ではなく, 臨床場面で画像のみにおいて診断を行うことは困難である。認知機能検査における遂行機能障害も疾患特異的なものは少なく, 行動徴候の把握が認知機能検査よりも鋭敏とされている。行動型 FTD では診断基準に挙げられるような脱抑制, 自発性低下, 共感性の欠如, 常同行動, 食行動変化といった行動症候が出現するが, FTD は精神疾患や他の認知症などへの過剰診断と過小診断どちらも多いため,注意が必要である。</p>
著者
石 岩 谷村 厚子 品川 俊一郎 繁田 雅弘
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.82-89, 2013-09-25

本研究の目的は,日本における1995年1月から2010年3月までの文献をレビューし,在宅高齢者の主観的健康感に関連する要因の先行研究を整理・検討することにより,高齢者の主観的健康感の促進施策に資する知見および今後の研究の方向性を探索することである。文献から抽出した主観的健康感の関連要因をKJ法に準じて整理した結果,(1)医学的な心身機能,(2)身体機能の維持・促進習慣,(3)趣味・活動への参加,(4)社会的・人的環境,(5)人生観,(6)基本属性の6つのカテゴリーが生成された。高齢者の主観的健康感を高めるためには,医学的な心身機能を維持・改善するだけではなく,社会性を維持すること,ポジティブな考え方を持つことの重要性が示された。今後は,日本におけるライフスタイルや社会文化的背景を踏まえた研究が必要であると考えられる。