著者
谷村 厚子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、人間作業モデルを理論的背景に、当事者参加型アクションリサーチの手法とノミナールグループテクニックを用いて参加当事者の学習とリカバリーを促進し、ワークライフバランスを改善するとともに、内容妥当性の高いワークライフバランス尺度を開発することができた。さらに、108名の精神保健サービス利用者を対象に調査を実施し、尺度の信頼性と妥当性を検討した。その結果、高い信頼性(内部一貫性)と中等度の基準関連妥当性が示された。因子分析では5因子が生成され、因子分析結果は調査データに適合していると判断された。
著者
佐々木 剛 谷村 厚子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.34-42, 2023-02-15 (Released:2023-02-15)
参考文献数
36

日本における入院精神障害者に対する早期作業療法の既存の研究結果を要約し,今後の研究や実践の示唆を得るためにスコーピングレビューを実施した.データベース検索とハンドサーチにて早期作業療法に関する事例研究,介入研究計14論文を抽出し分析した.早期作業療法では精神症状,作業遂行,認知機能の評価の利用が多く,認知心理機能,健康管理能力,日常生活活動,社会生活適応能力の改善を目的に介入が実施されていた.主な成果として精神症状や認知機能,機能的自立度および動機付けの改善が示された.一方で,集団プログラムの目的が不明確な報告が多いこと,作業に関する成果報告が乏しいことも明らかとなり,今後の課題と考えられた.
著者
本田 拓也 谷村 厚子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.299-308, 2023-06-15 (Released:2023-06-15)
参考文献数
19

本研究の目的は,作業療法効果の測定に適切と考えられるアウトカム指標とその選択理由を,グループインタビュー技法を用いて検討し,合意形成されたものを高齢者の急性期作業療法発展の資料として提示することである.対象は急性期病院に従事した経験のある作業療法士8名で,分析はノミナルグループテクニックと質的統合法を用いた.結果,30項目のアウトカム指標が採択された.定量的なものからは握力など,定性的なものからは生活行為に関わる質的な改善などが採択された.高齢者を対象とした急性期作業療法では,対象や環境の特性を踏まえた上で生活行為に焦点を当てた支援の効果を測定することができるアウトカム指標が重要と考えられた.
著者
相原 彩⾹ ⾕村 厚⼦
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.24, 2018

【⽬的】回復期病院に⼊院中の脳卒中患者を対象に⾯接を実施し,退院後⽣活に関する認識の要因を検討した1 事例を取り上げ報告する.【⽅法】回復期病院に⼊院し,⾃宅退院予定の50 歳代男性の初発脳卒中患者に対し,退院後⽣活の認識について半構造化⾯接を3 回実施した.データ分析には複線経路等⾄性モデル(Trajectory Equifinality model:以下TEM)を⽤い、退院後⽣活の認識を等⾄点として描いた.得られたデータを試作的なTEM 図として描き可視化し,2 回⽬以降の⾯接で対象者に呈⽰した.筆頭筆者の解釈に誤りがないか,不明確な内容や疑問点を対象者と確認・修正することでデータの信頼性を担保し,TEM 図を完成させた.【結果】対象者の語りから,Ⅰ期「社会と距離を置く」Ⅱ期「⼀度は改善を実感するが復職への不安が募る」Ⅲ期「外泊により退院後⽣活のイメージが具体的に湧く」Ⅳ期「障害を受け⼊れ付き合っていく」のⅠ〜Ⅳに区分されたTEM図が描けた.【考察】脳卒中患者の退院後⽣活の認識に関わる要因をTEM図で描くことで,⼼⾝機能の回復だけを⽬的とした⽀援を提案するのではなく,その⼈の社会との関わりや思いの変化の時期を理解し捉えた上で⽀援を提供する重要性,さらにその⼈が経験する出来事の気持ちの変化や受け⽌め⽅を捉え働きかけることが,退院後⽣活の認識を促進し,障害と向き合うことに繋がると考えられた.
著者
石 岩 谷村 厚子 品川 俊一郎 繁田 雅弘
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.82-89, 2013-09-25

本研究の目的は,日本における1995年1月から2010年3月までの文献をレビューし,在宅高齢者の主観的健康感に関連する要因の先行研究を整理・検討することにより,高齢者の主観的健康感の促進施策に資する知見および今後の研究の方向性を探索することである。文献から抽出した主観的健康感の関連要因をKJ法に準じて整理した結果,(1)医学的な心身機能,(2)身体機能の維持・促進習慣,(3)趣味・活動への参加,(4)社会的・人的環境,(5)人生観,(6)基本属性の6つのカテゴリーが生成された。高齢者の主観的健康感を高めるためには,医学的な心身機能を維持・改善するだけではなく,社会性を維持すること,ポジティブな考え方を持つことの重要性が示された。今後は,日本におけるライフスタイルや社会文化的背景を踏まえた研究が必要であると考えられる。
著者
谷村 厚子 山田 孝 京極 真
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.89-100, 2007
参考文献数
15
被引用文献数
2

我が国の精神障害をもつ当事者の精神保健福祉および生活上の主観的なニーズに関する研究について1994〜2005年の専門誌をレビューし,そこに示されたニーズを,KJ法に準じた手法を用いて分類した。各文献から抽出された当事者のニーズは819枚のラベルに転記され,コアカテゴリ『自分が望む生活を営める』,『精神医療保健福祉システムが充実している』,『生活する環境が整っている』,『人的環境が充実している』,および,より下位のカテゴリに分類された。これらのカテゴリに分類された当事者のニーズは,具体性に富み,専門家が支援していく上で大いに参考になると考えられる。また,これらは,精神-脳-身体の遂行サブシステム,意志のサブシステム,習慣化のサブシステム,物理的環境,社会的環境,作業行動場面といった人間作業モデルの概念にも対応したため,作業療法の実践モデルによる支援が可能であると考えられる。