著者
唄 孝一
出版者
日本法哲学会
雑誌
法哲学年報 (ISSN:03872890)
巻号頁・発行日
vol.1975, pp.32-57, 1976-10-10 (Released:2008-11-17)
参考文献数
39
著者
唄 孝一
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.10-14, 1973-01-15

健康権という概念を,独立の熟したことばとしては耳にしたことは必ずしも多くない.そして今,健康権を唱導することに私はたしかにある意欲と使命感とを感じている.しかし,それとともに,この新しいターミノロジーのもとにまた「××権」を一つ加えることに,ある種のシュプレヒコールにあるあの空しさ,とまではいわぬにしても,こういう問題のとり上げ方の必要性に多少の懐疑心をすてきれないこともまた事実である.この二つの,少なくとも外見的には矛盾する自己反応を,ともかくもじっとふりかえりみつめてみよう,そしてさらにこの心象風景を生み出す客観的条件の考究に着手してみよう,これが本稿の趣旨である. 端的にいって,健康権というとき,憲法25条を思い出さない人は少ないであろう.すなわちそれは「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ことを明記しているからである.これは生存権的基本権として注目され,単に法学界だけでなく法律実務上でも,いや国民生活一般の上でかなり論議されまたそれなりに機能してきた規定である.
著者
星野 一正 木村 利人 唄 孝一 中谷 瑾子 青木 清 藤井 正雄 南 裕子 桑木 務 江見 康一
出版者
京都女子大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

文部省科学研究総合A研究班として『患者中心の医療をめぐる学際的研究』というテーマのもとに、平成3年度からの3ヵ年間、専門を異にしながらもバイオエシックス(bioethics)の観点から研究をしている十名の共同研究者と共に研究を進めてきた。単に医学・医療の面からの研究では解明されえない人にとって重要な問題について、宗教学、哲学、倫理学、法律学、医療経済学、生物科学の専門家に、医学、医療、看護などの医療関係者も加わった研究班員一同が集まって、異なる立場から議論をし、さらに既に発表されている文献資料の内容を分析検討し、現在の日本社会に適した生命倫理観を模索しつつ共同研究を積み重ねてきた。第一年度には、主に「人の死をめぐる諸問題」を、第二年度には、主に「人の生をめぐる諸問題」に焦点を合わせて研究をし、第三年度には、前年度から進行中の研究を総括的に見直し、必要な追加研究課題を絞って研究を纏めると共に、生と死の両面からの研究課題についても研究を行った。最近、わが国において議論の多い次のようなテーマ:臓器移植、脳死、植物状態,末期医療、がんの告知、自然死、尊厳死、安楽死、根治療法が未だにないエイズ、ホスピス・ビハ-ラ、体外受精・胚移植、凍結受精卵による体外受精、顕微授精、男女の生み分け、遺伝子診断を含む出生前診断・遺伝子治療、人工妊娠中絶などすべて検討された。各年度ごとに上智大学7号館の特別会議室で開催してきた当研究班の公開討論会の第3回目は、平成6年1月23日に開催され、「研究班の研究経過報告」に次いで「医療経済の立場から」「法学の立場から」「生命科学の立場から」「遺伝をめぐるバイオエシックス」「生命維持治療の放棄をめぐる自己決定とその代行」「宗教の立場から」「臨床の立場から」の順で研究発表と質疑応答があり、最後に「総合自由討論」が行われた。今回は、3か年の研究を基にしての討論であっただけに、多数の一般参加者とも熱気溢れる討論が行われ、好評であった。