著者
古川 力丈 奥村 恭男 渡辺 一郎 園田 和正 佐々木 直子 磯 一貴 高橋 啓子 大久保 公恵 中井 俊子 國本 聡 平山 篤志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SUPPL.2, pp.S2_93-S2_100, 2015 (Released:2016-12-16)
参考文献数
8

症例1 : 74歳男性. 繰り返す上室頻拍のため, 心臓電気生理学的検査 (EPS) を行い, slow-intermediate型の房室結節回帰性頻拍 (AVNRT) が誘発された. 解剖学的遅伝導路 (SP) 部位に対して焼灼を行ったが, その後もAVNRTが誘発されるため, 冠状静脈洞 (CS) 内およびSPの左房側より通電したところ誘発不能となった. 症例2 : 77歳女性. 動悸のため来院. 動悸時の心電図ではRR間隔が交互に変化する上室頻拍を認めた. EPS上, 室房伝導はなく, 洞調律1拍に対してAH間隔の異なる心室応答が2拍出現したことにより, 房室二重伝導路によるdouble ventricular response (DVR) と診断した. 右房側より解剖学的SP部位を焼灼したが無効であり, CS内, 左房側より通電しDVRは消失した. 後日再発したため, 再度EPSを行った. 解剖学的SP, CS内, 左房側より通電したが, DVRの消失には至らなかった. 通電により, 一時的にWenckebach型房室ブロックとなったため, それ以上の通電を行わず終了した. 通電は不十分であったが, 現在は頻拍の再発なく経過している.
著者
渡邉 隆太 渡辺 一郎 奥村 恭男 永嶋 孝一 高橋 啓子 新井 将 若松 雄治 黒川 早矢香 大久保 公恵 中井 俊子 平山 篤志 磯 一貴 國本 聡 園田 和正 園田 和正 戸坂 俊雅
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.33-39, 2019-02-01 (Released:2019-03-30)
参考文献数
30

背景:心房細動 (AF) に対する高周波 (RF), cryoballoon (CB), hotballoon (HB) による肺静脈隔離 (PVI) が心臓自律神経活動に及ぼす効果を検討した. 対象及び方法:AF に対する RF (n = 18),CB (n = 31), HB (n = 16) による PVI 症例で PVI 前後に左房 (LA) 自律 神経叢 (GP) を刺激を施行し,迷走神経反射 (VR) の有無 を検討し,さらに,心拍数および心拍数変動を比較検討 した. 結果:RF-PVI 群,CB-PVI 群,HB-PVI 群で GP 刺激 による VR が 72%,73%,78%で消失した.術後の心 拍数は CB-PVI,HB-PVI 群で有意に増加したが,RFPVI 群では差を認めなかった.心拍数変動の高周波成分 (HF),低周波成分 (LF)/HF には各群とも PVI 前後で差を 認めなかった. 結語:PVI 後早期の心拍数変動は RF, CB, HB の3群 間で同等であったが,心拍数は CB, HB 群において有意 に増加した.PVI 後早期の心臓自律神経活動評価におい て,心拍数増加がバルーンを使用したアブレーションと カテーテルアブレーションとの違いであった.
著者
小船 雅義 渡辺 一郎 芦野 園子 奥村 恭男 高木 康博 山田 健史 小船 達也 大久保 公恵 進藤 敦史 中井 俊子 國本 聡 平山 篤志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SUPPL.3, pp.S3_114-S3_117, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
4

植込み型除細動器 (ICD) は心室頻拍/細動 (VT/VF) に基づく突然死の1次/2次予防に有効な治療法であることが示されている. しかしながら, ICDの植え込みを施行したにもかかわらず救命困難な症例も存在する. 今回, VFに対しICDが作動したにもかかわらず死亡した2症例を経験したので報告する.  症例1 : 56歳, 男性. 陳旧性心筋梗塞後の低心機能症例で, VTに対しICD植え込みを施行したが, 約1年後, 心肺停止 (CPA) にて搬送され死亡した. ICDの記録にてVFによる作動が確認された.  症例2 : 69歳, 男性. 2004年4月にCPAで当院搬送され救命され, 冠攣縮性狭心症に伴うVFに対しICD植え込みを施行した. 心機能は良好であり狭心症治療薬の服用も励行していたが, 再びCPAとなり死亡した. ICDの記録にてVFによる作動が確認された.  結語 : 冠動脈攣縮に伴うVF症例および虚血性心疾患に基づく重度の低心機能例ではICDが作動してもVT/VFが停止しない場合もあり, 冠攣縮の薬物コントロール, あるいはアブレーションなどの心室性不整脈に対する対策が望まれる.
著者
小船 雅義 渡辺 一郎 芦野 園子 奥村 恭男 小船 達也 大久保 公恵 中井 俊子 國本 聡 平山 篤志
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.290-296, 2009-10-01 (Released:2010-04-20)
参考文献数
36

要旨 背景:致死的な心室性不整脈は Brugada 症候群の特徴であるが,その不整脈発生基盤は心室のみにとどまらず,心房においても同様の変化がみられ,上室性不整脈の基盤を形成していると考えられている.しかしながら,上室性不整脈の電気生理学的背景はあまり知られていない.そこで我々は Brugada 症候群と対照群での心房筋の脱分極と再分極の電気生理学的指標について比較検討した.対象:全例 pilsicainide 負荷試験陽性であったBrugada 症候群 18 症例で,心房細動 (AF) の既往は認めなかった.対照群として,房室結節回帰性頻拍,WPW症候群,右室流出路起源心室頻拍にて心臓電気生理学的検査,カテーテルアブレーションを施行した 11 症例で比較検討した.方法:右心耳よりプログラム刺激を基本刺激周期 600 ms および 400 ms で 2 連早期刺激まで施行した.次に単相性活動電位 (MAP) を高位右房側壁より記録した.心房内伝導時間 (IACT) は刺激スパイクから遠位冠静脈洞内電位で計測した. 結果:対照群では全例 AF は誘発されず,Brugada 症候群では全例 AF が誘発された.対照群と Brugada 症候群間で,基本刺激時における MAP 持続時間 (MAPD) および IACT に有意差はなく,また右房有効不応期にも有意差は認めなかった.最短拡張期における MAPD は,Brugada 症候群で短縮しており,IACT 延長率は Brugada 症候群で有意に延長していた.Brugada 症候群間で MAPD の回復曲線における最大スロープは有意に大きかった.結語:我々の検討では,BS において,最短拡張期における MAPD の短縮,MAPD の回復曲線の最大スロープの増大および,IACTの延長が AF の易誘発性に関与していると考えられた.