著者
橋本 賢一 笠巻 祐二 芦野 園子 奥村 恭男 久保 公恵 杉村 秀三 中井 俊子 渡辺 一郎 斎藤 穎
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.16-21, 2006

背景: 両心室ペーシング( B V ) 療法は薬剤抵抗性心不全患者に有効な治療法であるが,必ずしも心臓突然死を減少させるとは限らない.一方μVレベル T-wave alternans(TWA)は心臓突然死の予知に対する有用性が示されているが,BV療法がTWAに及ぼす影響に関する検討は少ない.目的: 今回われわれは, 両室 pacing(BiP) , 右室 pacing(RVP),左室 pacing(LVP)を施行し, TWAに及ぼす影響について検討した.対象と方法: 連続7 例( 男性5 ) , 陳旧性心筋梗塞1 例, 拡張型心筋症6 例( EF31±7% ) を対象として行い, TWAの検出は,各ペーシングモードにおいて HR70~120bpmまでペーシングレートを漸増させTWAの測定を行った.結果: 平均 Valt は BVP,RVP および LVP で 193±0.6, 0.92±0.5および 1.45±0.8(p<0.01vs RV). alternanas ratioはBVP, RVPおよびLVPで 11.9±4.83, 4.83±2.9および 6.5±2.2. TWA陽性率は BVP,RVPおよびLVPで 71%(5/7), 67%(4/6)および 50%(2/4)であった.結語:BVPによる高いTWA陽性率は再分極の不均一性の増大をもたらす可能性が示唆された.
著者
小船 雅義 渡辺 一郎 芦野 園子 奥村 恭男 高木 康博 山田 健史 小船 達也 大久保 公恵 進藤 敦史 中井 俊子 國本 聡 平山 篤志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SUPPL.3, pp.S3_114-S3_117, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
4

植込み型除細動器 (ICD) は心室頻拍/細動 (VT/VF) に基づく突然死の1次/2次予防に有効な治療法であることが示されている. しかしながら, ICDの植え込みを施行したにもかかわらず救命困難な症例も存在する. 今回, VFに対しICDが作動したにもかかわらず死亡した2症例を経験したので報告する.  症例1 : 56歳, 男性. 陳旧性心筋梗塞後の低心機能症例で, VTに対しICD植え込みを施行したが, 約1年後, 心肺停止 (CPA) にて搬送され死亡した. ICDの記録にてVFによる作動が確認された.  症例2 : 69歳, 男性. 2004年4月にCPAで当院搬送され救命され, 冠攣縮性狭心症に伴うVFに対しICD植え込みを施行した. 心機能は良好であり狭心症治療薬の服用も励行していたが, 再びCPAとなり死亡した. ICDの記録にてVFによる作動が確認された.  結語 : 冠動脈攣縮に伴うVF症例および虚血性心疾患に基づく重度の低心機能例ではICDが作動してもVT/VFが停止しない場合もあり, 冠攣縮の薬物コントロール, あるいはアブレーションなどの心室性不整脈に対する対策が望まれる.
著者
芦野 園子 渡辺 一郎 小船 雅義 奥村 恭男 大久保 公恵 中井 俊子 平山 篤志
出版者
NIHON UNIVERSITY MEDICAL ASSOCIATION
雑誌
日大醫學雜誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.293-298, 2008-10-01

ブルガダ症候群 (BS) における心室細動 (VF) の発生機序として,右室流出路心筋活動電位波形の第 1 相の増強とそれに続く活動電位ドームの減高,消失に基 づく phase 2 reentry が注目されている.我々は BS と対照群に対し右室流出路 (RVOT) で単相性活動電位を記 録し,有効不応期 (ERP) および心筋活動電位持続時間 (MAPD) の回復特性について検討を行った.対象は電気生理学的検査で 3 連早期刺激までで VF が誘発された BS 9 例および対照群 8 例.基本周期刺激時における MAPDは 2 群間で有意差がなかった.しかし ERP および最短拡張期間隔における MAPD は BS で有意に短縮していた.また MAPD 回復曲線より算出された最大の傾き (slope max) は BS の方が急峻の傾向を示した.以上より,RVOT における心室早期刺激時の MAPD の短縮および slope max の急峻化が BS の VF 発生に関与していると考えられた.
著者
小船 雅義 渡辺 一郎 芦野 園子 奥村 恭男 小船 達也 大久保 公恵 中井 俊子 國本 聡 平山 篤志
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.290-296, 2009-10-01 (Released:2010-04-20)
参考文献数
36

要旨 背景:致死的な心室性不整脈は Brugada 症候群の特徴であるが,その不整脈発生基盤は心室のみにとどまらず,心房においても同様の変化がみられ,上室性不整脈の基盤を形成していると考えられている.しかしながら,上室性不整脈の電気生理学的背景はあまり知られていない.そこで我々は Brugada 症候群と対照群での心房筋の脱分極と再分極の電気生理学的指標について比較検討した.対象:全例 pilsicainide 負荷試験陽性であったBrugada 症候群 18 症例で,心房細動 (AF) の既往は認めなかった.対照群として,房室結節回帰性頻拍,WPW症候群,右室流出路起源心室頻拍にて心臓電気生理学的検査,カテーテルアブレーションを施行した 11 症例で比較検討した.方法:右心耳よりプログラム刺激を基本刺激周期 600 ms および 400 ms で 2 連早期刺激まで施行した.次に単相性活動電位 (MAP) を高位右房側壁より記録した.心房内伝導時間 (IACT) は刺激スパイクから遠位冠静脈洞内電位で計測した. 結果:対照群では全例 AF は誘発されず,Brugada 症候群では全例 AF が誘発された.対照群と Brugada 症候群間で,基本刺激時における MAP 持続時間 (MAPD) および IACT に有意差はなく,また右房有効不応期にも有意差は認めなかった.最短拡張期における MAPD は,Brugada 症候群で短縮しており,IACT 延長率は Brugada 症候群で有意に延長していた.Brugada 症候群間で MAPD の回復曲線における最大スロープは有意に大きかった.結語:我々の検討では,BS において,最短拡張期における MAPD の短縮,MAPD の回復曲線の最大スロープの増大および,IACTの延長が AF の易誘発性に関与していると考えられた.
著者
芦野 園子 渡辺 一郎 小船 雅義 奥村 恭男 大久保 公恵 中井 俊子 平山 篤志
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.299-303, 2008-10-01 (Released:2011-11-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

症候性ブルガダ症候群 (BS) に対する突然死の予防に関しては現時点では植え込み型除細動器 (ICD) が唯一の有効な治療法とされている.しかし近年 BS のICD 頻回作動例においてキニジンの内服により心室細動 (VF) 発作が抑制されたなど,キニジンの有用性がいくつか報告されている.そこで我々は BS の右室流出路心筋の有効不応期,活動電位持続時間およびその回復特性に対するキニジン静脈内投与の効果について検討を行った.対象は男性の無症候性ブルガダ症候群 5 症例.ST 上昇のタイプは Brugada-type-1 が 1 症例,type-2 が 3 症例,type-3 が 1 症例であった.電気生理学的検査ではコントロール時,全例で VF が誘発された.キニジン投与後 4 例で VF が誘発不能となった.その理由として,キニジン投与後右室流出路の有効不応期は延長し,また活動電位持続時間の回復曲線の最大の傾きが減少したことが VF 発生を抑制したことに関連していると考えられた.