著者
田仲 理恵 新熊 亮一 板谷 聡子 小西 琢 吉永 直生 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.1549-1558, 2015-07-15

商業活動や社会活動においては,人々に情報を伝達して行動を促進する試みがしばしば行われる.社会活動では商業活動に比べて,情報受信者の情報や行動そのものへの興味が薄いことがあり,同じ情報伝達の枠組みでも行動に結び付きにくいという問題がある.そこで本論文では,商業活動において行動促進効果があるといわれているクチコミを用いた情報伝達に着目し,ソーシャルネットワーク上のクチコミによって社会行動を促進する手法について検討を行う.具体的には,ソーシャルネットワーク上での情報送信に対してインセンティブ報酬を与えるモデルを想定して,情報送信そのものに報酬を付与する送信基準方式と,情報送信後に相手が行動を起こした場合に情報送信者に報酬を付与する行動基準方式の2通りを比較した.114名の参加した社会実験結果から,行動基準方式の方が素早い行動が起きること,情報送信時に依頼的なクチコミを付加する方が素早い行動が起きること,行動基準方式は送信基準方式に比べて依頼的なクチコミを付加する割合が高いことが明らかになった.これより,行動基準方式を用いることで情報送信者は依頼的な内容のクチコミを作成する傾向が強まり,それにより行動促進効果があることが確かめられた.
著者
與語 一史 新熊 亮一 小西 琢 板谷 聡子 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.372, pp.85-90, 2011-01-13
参考文献数
13

コンテンツアップロードとリンク形成の2つの要素で構成される,SNS(Social Networking Services)でのユーザ行動を活性化させるインセンティブ付与メカニズムを提案している.ユーザが異なるプライバシー設定(「全体に公開」と「友人に限定して公開」)でコンテンツをアップロードする際に感じるリスクの違いに注目し,その違いに基づき報酬の配分を行う.報酬配分により,コンテンツ閲覧数によって測られるSNSの活性度がどのように変化するのかを調査するため,SNSをモデル化し,学習ベースのシミュレーション行う.これにより,報酬配分比率によってSNSの活性度が制御できることを示す.また,活性度を最大化させる配分比率は報酬源の総和に依存することを示した.本稿では,アップロードコンテンツ数ならびに形成されたリンク数の増加が活性度にどのように寄与するか,調査した結果を報告する.
著者
與語 一史 新熊 亮一 小西 琢 田仲 理恵 板谷 聡子 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.228, pp.145-150, 2009-10-08
参考文献数
9

SNSをはじめとするソーシャルグラフを形成するサービスは,新たな情報流通プラットフォームとして注目されている.しかし,そのようなサービスにおいて,現在,積極的な情報提供が得られていないという問題がある.その理由として,多くのユーザにとって,情報提供のリスクなどの心理的コストが,提供した情報に対するフィードバックなどから得られる心理的効用より大きいことが挙げられる.そこで,本稿では,ユーザの貢献行動にインセンティブを与えることによって情報提供を促進する方法を提案する.我々の知る限り,SNS上でのインセンティブ付与に関する議論は学術的にはまだなされていないため,本稿では,まず,ユーザの行動・心理的要因のモデル化と成長するソーシャルグラフのモデル化を行う.そして,ユーザの貢献に基づく報酬付与方法を提案し,構築したモデル上でシミュレーション評価を行い,その有効性を示す.
著者
吉永 直生 板谷 聡子 デイビス ピーター 田仲 理恵 小西 琢 土井 伸一 山田 敬嗣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.34, pp.1-6, 2010-05-06

近年、組織内のコミュニケーション解析・促進のため、ソーシャルネットワーク上でコンテンツの伝播特性を解析する研究が進んでいるが、コンテンツの種類に応じた特性変化への適応という観点では課題が残されている。実世界においては、ソーシャル0ネットワークは同一であっても、コンテンツの種類によって異なる伝播ネットワークが存在すると考えられる。そこで本研究では、コンテンツの種類に応じた戦略的な情報伝播手法を構築することを目的とし、コンテンツの解析と伝播特性の解析を融合した手法を提案する。具体的には、Enron社の電子メールを対象として解析を行い、コンテンツの六つのカテゴリと三種類の情報伝播特性との対応を明らかにした。
著者
橋本 遼 高田 善規 新熊 亮一 田仲 理恵 板谷 聡子 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.40, pp.81-86, 2010-05-13
被引用文献数
1

情報発信者が人々に情報を受信させるための手法として,人をノード,友人関係のつながりをリンクとしたソーシャルグラフを経路とするクチコミ情報伝播が注目されている.クチコミ情報伝播では,人に必要な情報や信頼できる情報が届きやすいことが報告されている.しかし,人の送信行動に関わる心理的負担(コスト)が問題となり,情報の伝播が止まったり,情報の広がりが遅くなることがある.この問題を解決するために,送信行動に伴うコストを補償するためのインセンティブ報酬付与が提案されている.本稿では,送信者に対して付与する報酬に条件を与え,受信者が情報に対して反応行動を起こしたときのみ報酬付与を行う方式を提案する.この方式は,支払う報酬の総和を増やすことなく,受信者の反応行動を促進させることができる.これを示すために行った社会実験について報告する.
著者
橋本 遼 新熊 亮一 小西 琢 田仲 理恵 板谷 聡子 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.122, pp.77-82, 2009-07-02
被引用文献数
2

情報通信技術の発達により,情報発信のコストは小さくなった一方で,受信者には多くの不要な情報も届くようになり,発信者側が情報をそれを必要とする人に到達させ,かつ,活用されるようにすることは非常に難しくなった.従来,情報受信者側の嗜好情報を取得し,それにあわせて情報を発信する方法が提案されてきたが,この方法は情報フィルタリングのために多大なコストを要する.そこで本稿では,知人や友人をHop-by-Hopに経由する口コミでの情報伝播に着目する.このように伝播された情報の魅力や信憑性は,一方的に届けられた情報と比べ高いと考えられる.また,情報は伝播させる人の嗜好に基づいてフィルタリングされるため,その情報を必要とする人のみに伝播させられる可能性がある.しかし,Hop-by-Hopの情報伝播には,情報を積極的に伝えない・受け取らない参加者が存在する,ある情報を必要とする参加者が必ずしも単一の(切れ目の無い)ネットワークを構成しているとは限らないといった問題がある.そこで,インセンティブ報酬付与による情報伝播の促進を提案する.モバイル端末を用いたFace-to-Face(F2F)での実証実験を行い,報酬付与による情報伝播制御の可能性を検証する.
著者
安藤 真一 土井 伸一 村木 一至
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.83-84, 1993-09-27
被引用文献数
2

近年、大量の電子化テキストが利用できるようになり、これらから有用な情報を得るための支援技術として要約や情報抽出が研究されている。要約技術には頻出するキーワード、文末表現、接続表現などを利用する手法がある。通常要約すべき主題はユーザの視点によって異なり、ユーザがこれを選べることが必要である。しかし、現在の要約技術では固定した視点からの情報しか提示することができない。一方、情報抽出技術は取り出すべき情報を予め詳細に定義し、これを正確に取り出す技術である。ここでは文章内容に対する視点を明確に定めているため、限られた空間内で情報を扱うことができる。このため情報抽出技術は一般的な意味解析やモデル化を必要とする要約技術に比べて実現性が高い。さらに、抽出すべき情報の種類を複数用意することにより、複数の明確な視点を提供できる要約技術として考えることができる。以上の観点から、我々は要約の基礎技術として、ある1つの視点からの情報を新聞記事から抽出する情報抽出システムVENIEXを試作した。本システムは抽出すべき分野に依存した語彙(以後、キーワードと呼ぶ)の知識を構文構造に応じて組み合わせることによって情報を抽出している。
著者
隅田 英一郎 土井 伸一 飯田 仁水 山端 潔
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.137-138, 1993-03-01

自然言語処理における最も困難な問題の一つに、構造的曖昧性の解消がある。例えば、前置詞句の係り先は典型的な構造的曖昧性を引き起こす。(1)I present a paper at the conference.例文(1)の前置詞句「at the conference」は、動詞「present」、名詞「paper」の両方を修飾しうる。一般に前置詞句の係り先は構文規則による解析だけでは一意に決定することが困難である。この例では前者の方が自然であるとしてよいだろう。例文(1)の翻訳を考えてみる。二つの係り先の相違は、それぞれ「会議で論文を発表する」、「会議での論文を発表する」と異なった日本語訳になるが、やはり前者の方が尤もらしい。このように前置詞を含む文を正しく翻訳するためには前置詞句の係り先の暖味性を解消する必要がある。既に、構文的な情報、統計的な情報などを利用して複数の係り先候補から尤もらしいものに絞り込む手法が数多く提案されている。筆者らは対訳コ-パスから用例(原言語表現とその対訳の対)を抽出し、入力表現と用例との間の意味的距離をシソーラスに従って計算し、最小距離の用例に基づいて訳語選択を行なう手法(Exampl-Based Machine Tralation EBMT)を提案している。