著者
森 友則 朝香 卓也 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.286, pp.87-92, 2008-11-06
被引用文献数
3

近年,インターネット上においてユーザがユーザ自身が作成した動画を投稿し,任意の時間に視聴することができる動画共有型VoDサービスが人気を博している.これらのサービスでは,ユーザ数の増加やコンテンツリクエスト数の急増にともない配信サーバへの負荷が非常に高くなる.そこで,動画共有サービスにおけるコンテンツのリクエストパターンの特性を分析することにより,動画共有サービスのシステム設計を適切に行うことが期待できる.本稿では実際の動画共有サイトの実測データを利用して,単位時間あたりの新規発生コンテンツ数,人気度の時系列推移について分析,評価を行った.また,本稿では分析に基づいた人気度変動モデルの構築についての議論を行った.
著者
中田 高 高橋 達郎 木庭 元晴
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.87-108, 1978-02-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
61
被引用文献数
25 29

琉球列島の完新世離水サンゴ礁の地形とその年代から,地震性地殻変動地域におけるサンゴ礁形成過程と完新世後半の海水準変動曲線の復元を試みた.このため,離水サンゴ礁の地形断面を簡易測量によって作成し,異なった層準面から得られた58個のサンゴ化石試料の14C年代からサンゴの礁発達過程を明らかにしようとした.小宝島,宝島および喜界島において復元された相対的海水準変動曲線から,間歇的地震性隆起によってサンゴ礁の離水段化が進んだことがわかった.地殻変動は長期的には等速的であり,間歇的地震性隆起により段化は進むが,地震間の地殻変動が比較的静穏な時期には海水準変動は氷河性海水準変動そのものであるという考えから,喜界島の相対的海水準変動曲線から間歓的隆起量を除去し,海水準変動曲線を復元した.この海水準変動曲線は,日本で一般的に受け入れられているFairbridge curveにみられる,いわゆる後氷期の高位海水準は認められず, Shepard curveに代表されるゆるやかに上昇し現海水準に達する海水準変動曲線に近い.
著者
上田 哲郎 宮城島 拓人 高野 眞寿 仲屋 裕樹 小田 寿 依田 有生 能登 俊 小笠原 和宏 高橋 達郎
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.986-992, 2005-04-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
18

症例は85歳女性.主訴は心窩部不快感と体重減少.上部消化管内視鏡検査では幽門狭窄を認めるが,潰瘍や腫瘍性病変は無く,狭窄部の生検で悪性所見を認めなかった.上部消化管造影検査にて幽門の狭小化と延長(string sign)を認め,腹部超音波検査と超音波内視鏡検査では,幽門筋が肥厚していた.上部消化管造影検査で特徴的なstring signを認め,超音波検査で幽門筋の肥厚を認めた事から,成人肥厚性幽門狭窄症と診断した.保存的治療は奏効せず,幽門側胃切除を施行した.自覚症状は改善し,体重減少も停止した.病理組織所見では,幽門筋,特に内輪筋が著明に肥厚していた.
著者
菅 浩伸 高橋 達郎 木庭 元晴
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.114-131, 1991-12-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
37
被引用文献数
11 12

本研究の目的は,琉球列島・久米島西銘崎の完新世離水サンゴ礁で行った9本の掘削試料をもとに,完新世の各時相における礁原の形成過程の時空間関係を明らかにし,それに関わった地形形成環境を明らかにすることである。試料の解析は,礁の地形構成における掘削地点の水平的な位置関係と掘削試料の放射性炭素年代とその試料の垂直的な位置関係にとくに留意して行い,次のような結果を得た。 7500-2000年前の期間における相対的海水準変化は,海面上昇速度から以下の3っの時相に区分される。 1. 約7500-6500年前:約10m/1000年と急速な海水準の上昇期 2. 6500-5000年前: 3m/1000年以下の海水準の上昇期 3. 5000-2000年前:海面安定期現礁原にあたる部分の礁地形の形成過程は, 3つの形成段階に分けられる。 1. 初期成長期:礁形成の開始は約7500年前である。初期成長段階における礁形成は,完新世サンゴ礁の基盤地形における波の進入方向と斜面の方向との関係と,水深の違いを反映した成長構造の差異が認められる。 2. 礁嶺成長期: 6500-6000年前の海水準面の上昇速度の低下に対応して原地性卓状サンゴによる活発な造礁活動が認められ,礁嶺が海面に達する。この段階において礁嶺頂部がもっとも速く海面に達したのは,前段階までに形成された礁地形の深度が浅く,波の影響を強く受ける位置にあった部分である。 3. 礁原形成期:海面上昇速度の低下とそれに続く海面安定期に対応して,約6000年前に礁原の形成が始まる。まず,礁嶺中央部が海面に達し,続いて礁嶺の外洋側と礁湖側が海面に達して礁原が形成される。礁湖側の上方成長速度にっいては礁嶺中央部の上方成長が遅く,かっ水平的な連続性が悪いところほど速い。 完新世サンゴ礁形成に関わる諸要因については,主に海面上昇速度と波の進入方向がサンゴ礁形成過程に作用している。サンゴ礁形成の結果つくられた地形は,次の礁形成に作用する要因となっている。
著者
大林 功実 朝香 卓也 高橋 達郎 佐々木 純 品川 準輝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.720-733, 2007-08-01
被引用文献数
9

ファイル共有などで主に利用されているUnstructured型P2Pネットワークでは,べき乗別に従うトポロジーが形成される傾向がある.またコンテンツの人気度の分布にも同様の性質が見られる.そのため隣接ピア数の多いピアにかかる負荷が著しく大きくなり,更に稀少コンテンツを発見できないことによるネットワーク全体のヒット率が不十分であるという問題がある.そこで本論文ではこれら二つの問題を同時に解決する各ピアによる自律分散的なキャッシュ置換え方式を提案する.本論文で提案する方式は各ピアの隣接ピア数に応じたキャッシュ置換えを行うことで,隣接ピア数の多いピアへの過負荷を低減し,同時にネットワーク全体のヒット率を向上させる.またシミュレーションによる評価を行い,提案方式の有効性を示す.
著者
田仲 理恵 新熊 亮一 板谷 聡子 小西 琢 吉永 直生 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.1549-1558, 2015-07-15

商業活動や社会活動においては,人々に情報を伝達して行動を促進する試みがしばしば行われる.社会活動では商業活動に比べて,情報受信者の情報や行動そのものへの興味が薄いことがあり,同じ情報伝達の枠組みでも行動に結び付きにくいという問題がある.そこで本論文では,商業活動において行動促進効果があるといわれているクチコミを用いた情報伝達に着目し,ソーシャルネットワーク上のクチコミによって社会行動を促進する手法について検討を行う.具体的には,ソーシャルネットワーク上での情報送信に対してインセンティブ報酬を与えるモデルを想定して,情報送信そのものに報酬を付与する送信基準方式と,情報送信後に相手が行動を起こした場合に情報送信者に報酬を付与する行動基準方式の2通りを比較した.114名の参加した社会実験結果から,行動基準方式の方が素早い行動が起きること,情報送信時に依頼的なクチコミを付加する方が素早い行動が起きること,行動基準方式は送信基準方式に比べて依頼的なクチコミを付加する割合が高いことが明らかになった.これより,行動基準方式を用いることで情報送信者は依頼的な内容のクチコミを作成する傾向が強まり,それにより行動促進効果があることが確かめられた.
著者
橋井 新治郎 新熊 亮一 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.339, pp.133-136, 2010-12-09

多数のモバイル端末が様々な情報のセンシング機能を有し,それらのセンシング情報を共有することで,人々に局所的,瞬間的に有用な情報を提供するサービスが期待されている.センシングを行うモバイル端末が情報の交換を行うことができるのはモバイル端末同士がエンカウントする(出会う)時のみに限られている.このため,モバイル端末が情報を共有する際に問題となるのが,サービス品質(例えば情報収集量や所要時間)がモバイル端末同士のエンカウント率に依存することである.エンカウント率が低い環境においてはセンシングされた情報の収集性能が低くなり,サービスの品質が低下してしまう.本稿では,ランダムネットワークコーディング(RNC:Random Network Coding)を用いることによる情報収集性能の向上について検討する.特に,バッファ容量の制限とバッファ制御アルゴリズムに対するRNCの特性に着目する.RNCを用いる場合に有効なバッファ制御アルゴリズムの提案を行い,様々なバッファ制御アルゴリズムに対するRNCの性能を計算機シミュレーションにより比較評価する.
著者
中河 隆仁 森 友則 朝香 卓也 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.457, pp.411-416, 2009-02-24
被引用文献数
3

Unstructured型P2Pネットワークにおいて,コンテンツごとに人気度が異なり,コンテンツのリクエスト数分布やコンテンツのネットワーク上の存在数分布がべき乗側に近い性質を持っていることが報告されている.これにより,フラッディングを用いてコンテンツの検索を行うと,人気度の高いコンテンツは発見しやすいが,人気度の低いコンテンツは発見しにくいという問題がある.さらに,人気度の高いコンテンツを検索する際に無駄なメッセージが多く発生するという問題が生じる.そこで,本稿では,コンテンツの人気度に応じて検索時のTTL(Time To Live)を制御する方式を提案する.本方式では,コンテンツの人気度を過去にそのコンテンツを検索したメッセージが通過した回数で計算し,人気度の高いコンテンツを検索する際には,TTLを小さく設定し,人気度の低いコンテンツを検索する際には,TTLを大きく設定する.これにより,人気度の高いコンテンツを検索する際に,高いヒット率を維持しながら無駄なメッセージが減少し,かつ人気度の低いコンテンツのヒット率が向上する.結果として,P2Pネットワーク全体で高いヒット率を維持させながら,メッセージ数を減少させる効果が期待できる.また,本稿では,シミュレーションによる評価を行い,提案方式の有効性を示す.
著者
丹波 健 横田 健治 朝香 卓也 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.126, pp.47-52, 2010-07-08
参考文献数
16

近年,UGC(User Generated Content)が人気を獲得しており,様々なUGCを配信するサービスが提供されている.その一つとして,ニコニコ動画というサービスが挙げられる.ニコニコ動画では,利用者が動画を見ながらコメントを投稿することができ,他の利用者がその動画を視聴したときにそれが動画上に表示される.本サービスで,コメントは動画への付加情報と位置づけることができる.ユーザから付与される付加情報は,将来的に大容量化する可能性がある.その際に問題となるのは,クライアント-サーバ方式を用いた通信では,トラヒック量の増大に伴い,配信ウェブサーバの負荷が高くなることである.したがって,P2P(Peer to Peer)ネットワークを利用して,大容量化した付加情報をピア間で共有し,ウェブサーバ負荷を減少させるシステムの構築が必要である.本稿では,情報追加型UGCにおける付加情報をP2Pネットワークを利用してピア間で共有するECTI(Effectively Collect with Time Information)方式を提案する.ECTI方式は,クエリに時刻情報を記録してフラッディングさせることで,記録された時刻よりも後に投稿された付加情報だけを選択的に発見し,収集の際のトラヒック量を削減する.本稿では,計算機シミュレーションによって,ECTI方式の評価を行い,その有効性を示す.
著者
與語 一史 新熊 亮一 小西 琢 板谷 聡子 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.372, pp.85-90, 2011-01-13
参考文献数
13

コンテンツアップロードとリンク形成の2つの要素で構成される,SNS(Social Networking Services)でのユーザ行動を活性化させるインセンティブ付与メカニズムを提案している.ユーザが異なるプライバシー設定(「全体に公開」と「友人に限定して公開」)でコンテンツをアップロードする際に感じるリスクの違いに注目し,その違いに基づき報酬の配分を行う.報酬配分により,コンテンツ閲覧数によって測られるSNSの活性度がどのように変化するのかを調査するため,SNSをモデル化し,学習ベースのシミュレーション行う.これにより,報酬配分比率によってSNSの活性度が制御できることを示す.また,活性度を最大化させる配分比率は報酬源の総和に依存することを示した.本稿では,アップロードコンテンツ数ならびに形成されたリンク数の増加が活性度にどのように寄与するか,調査した結果を報告する.
著者
與語 一史 新熊 亮一 小西 琢 田仲 理恵 板谷 聡子 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.228, pp.145-150, 2009-10-08
参考文献数
9

SNSをはじめとするソーシャルグラフを形成するサービスは,新たな情報流通プラットフォームとして注目されている.しかし,そのようなサービスにおいて,現在,積極的な情報提供が得られていないという問題がある.その理由として,多くのユーザにとって,情報提供のリスクなどの心理的コストが,提供した情報に対するフィードバックなどから得られる心理的効用より大きいことが挙げられる.そこで,本稿では,ユーザの貢献行動にインセンティブを与えることによって情報提供を促進する方法を提案する.我々の知る限り,SNS上でのインセンティブ付与に関する議論は学術的にはまだなされていないため,本稿では,まず,ユーザの行動・心理的要因のモデル化と成長するソーシャルグラフのモデル化を行う.そして,ユーザの貢献に基づく報酬付与方法を提案し,構築したモデル上でシミュレーション評価を行い,その有効性を示す.
著者
橋本 遼 高田 善規 新熊 亮一 田仲 理恵 板谷 聡子 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.40, pp.81-86, 2010-05-13
被引用文献数
1

情報発信者が人々に情報を受信させるための手法として,人をノード,友人関係のつながりをリンクとしたソーシャルグラフを経路とするクチコミ情報伝播が注目されている.クチコミ情報伝播では,人に必要な情報や信頼できる情報が届きやすいことが報告されている.しかし,人の送信行動に関わる心理的負担(コスト)が問題となり,情報の伝播が止まったり,情報の広がりが遅くなることがある.この問題を解決するために,送信行動に伴うコストを補償するためのインセンティブ報酬付与が提案されている.本稿では,送信者に対して付与する報酬に条件を与え,受信者が情報に対して反応行動を起こしたときのみ報酬付与を行う方式を提案する.この方式は,支払う報酬の総和を増やすことなく,受信者の反応行動を促進させることができる.これを示すために行った社会実験について報告する.
著者
中河 隆仁 森 友則 朝香 卓也 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.230-241, 2010-02-01

Unstructured型P2Pネットワークにおいて,ユーザの嗜好性を考慮し,嗜好の近いピアをオーバレイネットワーク上で近くに配置するセマンティックP2Pネットワークの研究が盛んに行われている.しかし,従来のセマンティックP2Pネットワークでは,同じ内容のクエリを何度も同じピアに転送するクリッピング現象が生じるため,ヒット率の点において課題が残されている.そこで,本論文では,クリッピングの影響を抑える新たなセマンティックP2Pネットワークの構築法を提案する.本方式では,各ピアが保持しているコンテンツのジャンルの比率とピアが保持しているコンテンツ数を用いて,他ピアとの嗜好の近さを計算し,検索の際に嗜好の近いピアだけでなく嗜好の異なるピアにもクエリを転送することにより,クリッピングの影響を抑える.これにより,検索範囲を広くできヒット率を高めることができる.また,本論文では,シミュレーションによる評価を行い,提案方式の有効性を示す.更に,より実際のネットワークに近い条件下での評価を行うためにmixiの解析を行い,これにより得られたデータをシミュレーションモデルに組み込んで提案方式の評価を行う.
著者
橋本 遼 新熊 亮一 小西 琢 田仲 理恵 板谷 聡子 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.122, pp.77-82, 2009-07-02
被引用文献数
2

情報通信技術の発達により,情報発信のコストは小さくなった一方で,受信者には多くの不要な情報も届くようになり,発信者側が情報をそれを必要とする人に到達させ,かつ,活用されるようにすることは非常に難しくなった.従来,情報受信者側の嗜好情報を取得し,それにあわせて情報を発信する方法が提案されてきたが,この方法は情報フィルタリングのために多大なコストを要する.そこで本稿では,知人や友人をHop-by-Hopに経由する口コミでの情報伝播に着目する.このように伝播された情報の魅力や信憑性は,一方的に届けられた情報と比べ高いと考えられる.また,情報は伝播させる人の嗜好に基づいてフィルタリングされるため,その情報を必要とする人のみに伝播させられる可能性がある.しかし,Hop-by-Hopの情報伝播には,情報を積極的に伝えない・受け取らない参加者が存在する,ある情報を必要とする参加者が必ずしも単一の(切れ目の無い)ネットワークを構成しているとは限らないといった問題がある.そこで,インセンティブ報酬付与による情報伝播の促進を提案する.モバイル端末を用いたFace-to-Face(F2F)での実証実験を行い,報酬付与による情報伝播制御の可能性を検証する.
著者
森 友則 朝香 卓也 高橋 達郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J92-B, no.1, pp.54-68, 2009-01-01

Unstructured型P2Pネットワークでは,オーバレイネットワークの隣接ピア数(次数)分布やコンテンツのリクエスト数分布がべき乗則に近い性質をもつことが報告されている.このUnstructured型P2Pネットワークでは,高次数ピアに負荷が著しくかかってしまうこと,低人気コンテンツがネットワーク上から消滅してしまうため,ネットワーク全体のヒット率が低下してしまうといった問題がある.これらの問題に対し,キャッシュ置換えや複製配置の観点から解決を図った方式等が提案されている.しかし,キャッシュ置換えでは素早くコンテンツを広めることができない,複製配置では高負荷がかかるといった問題がある.本論文では,このような問題点を解決するためキャッシュ置換えと複製配置を組み合わせた,新たな複製配置の方式を提案する.本方式では隣接ピア数に応じて各ピアがそれぞれ異なる複製配置を行うことで,P2Pネットワーク全体としてヒット率を向上させながら隣接ピア数の多いピアにかかる過剰な負荷を隣接ピア数の少ないピアへ分散させることができる.また,本論文ではシミュレーションによる評価を行い,提案方式の有効性を示す.