- 著者
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坂本 恭章
- 出版者
- 京都大学東南アジア研究センター
- 雑誌
- 東南アジア研究 (ISSN:05638682)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, no.2, pp.290-320, 1968
以上, STとPPとで語形の異なるものについての対応法則と, その実例をあげたが, ここにその要点をまとめるとともに, STとPPとの主な相違点であるところのPPには, a) 低昇り声調があるb)/r/が稀にしか現われないc)/eə/があるd)/ie/がないe) /N (/m/ を除く) C/の形の子音音素結合があるf) /mC/, /IC/, /kη/の形の子音音素結合がないg) 2音節語の第1音節の構造が簡単で, 短母音で終わる音節がある等の諸点との関係を明らかにしよう。 1. STの2音節の第1音節とPP 表の左欄にSTの音節型, 上にその音節頭音を示し, 表中にそれに対応するPPを示した。〔・〕で音節の切れ目を示し, これが左についているものは, PPでは単音節語が対応することを示す。空欄は対応例のないものである。この図から明らかなように, STの第1音節に対しては,PPでは /Ca/の形の短母音音節か, または /NC-/ という形の単音節語頭の /N/ が対応している。この短母音で終わる音節も, /NC/ という子音音素結合も, STには現われないものである。2. STの子音音素結合[table]この結果, PPでは/kη/, /mC/, /IC/ の形の子音音素結合がなくなる。 3.単音節語および2音節語の第2音節で[table]という対応がありこの結果, STで /ie/ と /ia/ との対立で示された語が, PPではシノニムとなっている。