著者
牛見 悠奈 宮武 優太 筒井 直昭 坂本 竜哉 中田 和義
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.79-86, 2015-12-28 (Released:2016-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
8 5

北米産外来種のアメリカザリガニは,在来生物の捕食などを通じて,在来生態系に深刻な影響を及ぼしている。 また,本種が掘る巣穴が水田漏水の原因になるなど水田管理上の問題も引き起こしている。このため,本種は緊急対策外来種と日本の侵略的外来種ワースト 100 に指定され,効率的な駆除手法の開発が求められている。 そこで本研究では,水田水域や河川・湖沼等に定着したアメリカザリガニの駆除に用いる人工巣穴の適したサイズを明らかにすることを目的として,本種による人工巣穴サイズ選好性実験を実施した。灰色の直管型の塩ビ管を人工巣穴とし,内径と長さの異なる人工巣穴をアメリカザリガニに室内水槽内で選択させた。その結果,人工巣穴の内径については,全長(X, mm)と好んで選択された内径(Y, mm)の間に Y=0.58X+4.26 という有意な回帰式が得られた。人工巣穴の長さについては,全長の 4 倍の長さの巣穴が好んで選択された。以上の結果をもとに,アメリカザリガニの駆除に用いる体サイズ別の人工巣穴サイズを提案した。
著者
竹井 祥郎 安藤 正昭 坂本 竜哉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究において、グアニリン、アドレノメデュリン、リラキシンなどのイオン排出・降圧ホルモンが魚類で多様化しており、それらが魚類の浸透圧調節に重要であることを明らかにした。また、飲水を抑制するナトリウム利尿ペプチドと促進するアンジオテンシンが、延髄の最後野に作用して嚥下による反射的な飲水を調節していることを明らかにした。この結果は、前脳に作用して「渇き」という動機づけにより飲水する陸上動物と異なる。
著者
坂本 竜哉
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アユモドキの河川本流と産卵場所である氾濫原の間での回遊を見出した。これは淡水域に限られ、数kmと小規模である。野外調査から遡上と産卵を制御する環境-内分泌要因を示唆し、それを基に飼育下での行動の再現に成功した。現在、水没した陸地から生じる"におい"や、テストステロン、甲状腺ホルモンに絞りつつある。サケ科魚類等との比較から、これらは普遍的な回遊の制御要因である可能性がある。このシンプルかつコンパクトな「非通し回遊」は、回遊研究の魅力的なモデルであると思われる。
著者
坂本 竜哉
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、魚類の浸透圧調節ホルモン、特に昨年初めて鉱質コルチコイドの存在が示唆された副腎皮質ホルモンの作用を世界に先がけアップデートすることを目的としている。広塩性魚類の浸透圧調節器官の一つである消化管を用いる。消化管は海水中では上皮透過性が高まり水の吸収能が増大する。食道の分化におけるコルチゾルの作用機序を検討するため、器官培養系を確立した。分子レベルの解析のため遺伝子基盤の最も整った広塩性魚のメダカを選定した。アポトーシスはヌクレオソーム単位に断片化したDNAの酵素免疫法による測定から定量した。また、細胞増殖は代謝活性測定により定量した。血中濃度を反映した1〜1000nMのコルチゾルの効果を調べた。アポトーシスは10nMコルチゾル添加8日後に有意に誘導された。しかし、高濃度の100、1000nMでは効果が消えた。一方、細胞増殖はコルチゾルの濃度に依存して誘導され、1000nMの添加8日後で有意であった。これらの作用はいずれもGRのアンタゴニストによりブロックされた。また、DOCの効果は見られなかった。すなわち、コルチゾルは食道においてGRを介して、低濃度でアポトーシスを、高濃度で細胞増殖を誘導している。一方、DOC-MRの関与は少ない。従って、魚類ではミネラルコルチコイド系が同定されているが、グルココルチコイドが浸透圧調節の重役を担っていると思われ、副腎皮質ホルモン作用の進化の上で極めて興味深い。GRを介した双方向の作用は、コルチゾル-GRの標的遺伝子がコルチゾルの濃度により違うことによると思われる。現在メダカのオリゴヌクレオチドアレイによりその遺伝子の同定を進めている。