著者
仲里 猛留 坊農 秀雅
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.873-877, 2016-11-20 (Released:2017-11-20)
参考文献数
13

次世代シークエンサー(NGS: next generation sequencer)の活躍によって,さまざまな生命科学の謎が解き明かされている.マイクロアレイ同様,NGSから得られるデータも公共データベースに収めることが論文投稿の条件となってきており,そのデータ量は約3.2ペタバイトにもなっている(ペタは10の15乗).これまでよく用いられてきたBLASTなどの配列類似性による検索手段ではもはや歯がたたず,それぞれのデータの付帯情報であるメタデータをたよりに必要な情報を探し出すことになる.膨大なNGSのデータベースから効率よくデータを取り出し,自らの研究に活用する方策を紹介する.
著者
藤岡 周助 岡 香織 河村 佳見 菰原 義弘 中條 岳志 山村 祐紀 大岩 祐基 須藤 洋一 小巻 翔平 大豆生田 夏子 櫻井 智子 清水 厚志 坊農 秀雅 富澤 一仁 山本 拓也 山田 泰広 押海 裕之 三浦 恭子
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【背景と目的】ハダカデバネズミ (Naked mole rat、 NMR) は、発がん率が非常に低い、最長寿の齧歯類である。これまでに長期の観察研究から自然発生腫瘍をほとんど形成しないことが報告されている一方、人為的な発がん誘導による腫瘍形成に抵抗性を持つかは明らかになっていない。これまでにNMRの細胞自律的な発がん耐性を示唆する機構が複数提唱されてきた。しかし、最近それとは矛盾した結果も報告されるなど、本当にNMRが強い細胞自律的な発がん耐性を持つのかは議論の的となっている。さらに腫瘍形成は、生体内で生じる炎症などの複雑な細胞間相互作用によって制御されるにも関わらず、これまでNMRの生体内におけるがん耐性機構については全く解析が行われていない。そこで、新規のNMRのがん耐性機構を明らかにするため、個体に発がん促進的な刺激を加えることで、生体内の微小環境の動態を含めたNMR特異的ながん抑制性の応答を同定し、その機構を解明することとした。【結果・考察】NMRが実験的な発がん誘導に抵抗性を持つかを明らかにするため、個体に対して発がん剤を投与した結果、NMRは132週の観察の間に1個体も腫瘍形成を認めておらず、NMRが特に並外れた発がん耐性を持つことを実験的に証明することができた。NMRの発がん耐性機構を解明するために、発がん促進的な炎症の指標の一つである免疫細胞の浸潤を評価した結果、マウスでは発がん促進的な刺激により強い免疫細胞の浸潤が引き起こされたが、NMRでは免疫細胞が有意に増加するものの絶対数の変化は微小であった。炎症経路に関与する遺伝子発現変化に着目し網羅的な遺伝子解析を行なった結果、NMRがNecroptosis経路に必須な遺伝子であるRIPK3とMLKLの機能喪失型変異により、Necroptosis誘導能を欠損していることを明らかにした。【結論】本研究では、NMRが化学発がん物質を用いた2種類の実験的な発がん誘導に並外れた耐性を持つこと、その耐性メカニズムの一端としてがん促進的な炎症応答の減弱が寄与すること、またその一因としてNecroptosis経路のマスターレギュレーターであるRIPK3とMLKLの機能喪失型変異によるNecrotpsosis誘導能の喪失を明らかにした。
著者
三浦 恭子 坊農 秀雅 清水 厚志 大岩 祐基
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

ハダカデバネズミ(Naked mole rat, NMR)は、マウスと同等の大きさ(平均体重35 g)ながら異例の長寿動物(平均寿命28年)であり、これまで自発的な腫瘍形成が一切認められていないというがん化耐性の特徴をもつ。本研究では、NMR個体のがん化耐性を制御すると考えられる、「NMR特異的がん化抑制バリア ASIS(ARF抑制時細胞老化)」の形成機構・役割を詳細に明らかにすることを目的とした。mRNA-seqによる解析の結果、発現変動する遺伝子群、また、ASISにおけるNMR種特異的なシグナル伝達制御が明らかになった。
著者
坊農 秀雅
出版者
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

前年度から引き続きグノム上の物理的な位置に対して付与されたアノテーションデータを利用するシステムの開発を行った。実際にデータ解析している研究者に広く使ってもらえるよう,インターネット上のウェブページ上から気軽にアクセス可能となる仕組みを検討したが,ゲノム配列の全領域を対象とすることから計算量が多く,また現状では研究テーマ別にプログラムを一部改変する必要があり,ウェブページ上から一般公開して広く使ってもらうには難があるため共同研究者を対象にその利用を図った。それぞれの研究テーマに合ったゲノムアノテーションを組み合わせることで,BiomartやUCSC Table Browserなどのウェブインタフェースで利用可能なデータマイニングツールでは利用不可能なゲノムアノテーションの組み合わせでin silicoな候補領域を検索しその結果を精査してもらった。現在のところデータ解釈の途中であるが,今回の検索によってベンチでの実験回数を減らすことができたばかりでなくこれまで事実上不可能だった候補の領域の選定が実現した。現在in vitro/in vivoでそれらの確認実験が進行中となっている。論文発表とともに,参考にされた候補領域の情報はSupplemental dataとしてインターネット上で公開される予定である。昨年度から課題とされてきたシステムの使い方の文書化に関しては,DAS(Distributed Annotation System)の枠組みを利用して既存のゲノムブラウザー(Ensembl Genome Browserなど)に見たいゲノムアノテーションを表示する方法をこれまでの(Power Pointなどによる)静的なプレゼンテーションから一歩進めて動画としてその使い方を説明する形で作成した。その動画はSaya Matcherのホームページ(http://Saya Matcher.sourceforge.jp/)からアクセス可能となっている。