- 著者
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垂水 公男
萩原 明人
森本 兼曩
- 出版者
- 公益社団法人日本産業衛生学会
- 雑誌
- 産業医学 (ISSN:00471879)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.4, pp.269-276, 1993-07-20
- 被引用文献数
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9
4
都市部の企業に勤務する21〜60歳のホワイトカラー(男子)を対象に,労働に起因する精神心理的負担と血圧との関連性についての横断調査を行った.高血圧を招来しうる可能性がある疾患を有するものを除外した570名について検討した.このうち,健康診断時の血圧値の変動が大きい109名を除いた461名を対象に,血圧区分を目的変数(正常血圧群: 386名,高血圧群: 75名)に,従来から指摘されている血圧変動要因である年齢,肥満,飲酒,喫煙,運動習慣,客観的な労働負担要因として労働時間,通勤時間,年次有給休暇取得,家族との同居,また主観的な労働負担要因としてKarasekのjob strainの10変数を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った.その結果,job strainは,従来からの血圧の変動要因や客観的な労働負担要因を調整した上で,統計的に有意なodds比を示した.しかし,その関連性は,job strainが低い場合に高血圧の頻度が高くなる方向で関連していた.その理由として,高血圧の家族歴に代表される個人特性が介在していることが推測された.一般的な理解とは逆に,Theorellは,高血圧の家族歴を有するものでは,外界の刺激に対する反応性が低い傾向があることを指摘しており,こうした個人特性が今回の結果にも関連していると考えられた.労働に起因する精神心理的負担は,最近問題になっている作業関連疾患の概念とも関連して重要であり,さらにこうした個人特性や客観的な労働負担を勘案した追跡調査によってその影響が検討される必要がある.