著者
戸田 雅裕 森本 兼曩
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.592-596, 2000-01-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
24
被引用文献数
14 20

The fasting month of Ramadan is the ninth lunar month of the Islamic calendar. It is the most important month for Muslims because in which the Qur'an was revealed, and they abstain from food and drink from dawn to sunset to express their gratitude to God. Eating and drinking is permitted only at night, and Muslims typically eat two meals each day, after sunset and just before dawn. People tend to stay up late watching TV with the family, praying or reading the Qur'an.Ramadan teaches Muslims self-restraint and reminds them of the feelings of the impoverished. On the other hand, the biological effects of changes in lifestyle during Ramadan may also be expected.Some studies have reported substantial weight loss, signs of dehydration, raised serum concentrations of uric acid and cholesterol, etc. during Ramadan. However, these changes are unlikely to have much effect on healthy individuals, because generations of Muslims have undertaken fasting year after year. In conclusion, the observance of the Ramadan fast may produce some ill-effects in patients with some disease, e. g. hypertension, hypercholesterolaemia, hyperuricaemia, hyperglycaemia, and heart, liver and kidney disease.
著者
大平 雅子 戸田 雅裕 田 麗 森本 兼曩
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.500-505, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

Recently, Tai Chi, which is one of the Chinese traditional martial arts, has been receiving attention. The main feature of Tai Chi is its flowing movements including loosening up, relaxing, and practicing meditation with slow abdominal respiration. Tai Chi is widely taken as part of health-promotion activities or rehabilitation training, and significant mental and physical effects have been reported so far. In this review report, Tai Chi was confirmed to be beneficial not only as a rehabilitation training for old people or patients with various diseases but also as an exercise for healthy people. These findings suggest the potential of Tai Chi as a complementary and alternative therapy.
著者
森本 兼曩
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.141-149, 2003-05-01 (Released:2011-03-18)
被引用文献数
1 1
著者
牧野 博明 戸田 雅裕 小林 英俊 森本 兼曩
出版者
日本観光研究学会
雑誌
観光研究 (ISSN:13420208)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.9-18, 2008-03-31 (Released:2017-04-01)

The purpose of this study is to measure and to analyze the effect of the stress relief which is caused by traveling through the experiment by the easy measurement method. We analyzed stress marker which are obtained from saliva. We collected saliva from the participants, women, on a short-term trip, three times a day, and five days total including a day before the trip and a day after the trip. As a result, it was assured that the effect of the stress relief is caused by travel and suggested the possibility of the disease prevention and the health promotion of the travel. In addition, the effectiveness of the group analysis based on subject's mental health status was confirmed, and there is possibility to propose the travel type according to the characteristics of subjects.
著者
森本 兼曩 丸山 総一郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.241-251, 2001-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
26

情報化社会, 高齢化社会の到来といった社会経済構造の変革, 疾病構造の変化などにより, われわれのライフスタイルは大きく変わろうとしている.このような現代社会において, 国民の健康意識は高く, 病気になって考えるのではなく, 健康な時期に将来発生するかもしれない疾病に対する一次予防の方法を積極的かつ科学的に考え, さらにQuality of Life(QOL)を高める具体的方策を追求していくことが, 緊急かつ重要な課題となっている.こうした問題に対するアプローチとして, われわれが必要と考えているのはストレスに強いライフスタイル, より健康的なライフスタイルへの変容に個々人が自主的, 自発的に取り組むことである.喫煙, 飲酒, 運動などのライフスタイルが, 心身の健康と関連性のあることをこれまでに報告してきた.われわれは, 勤労者, 地域住民, 高齢者, 阪神・淡路大震災被災者を対象に, 一般的健康質問票, 健診データ, 染色体変異, NK細胞活性, IgE, コルチゾールなどを調べた.われわれは, これまでの研究やBreslowの報告に基づき, 8つの健康習慣として, (1)喫煙しない, (2)適量飲酒, (3)定期的な運動, (4)7〜8時間の睡眠, (5)栄養バランスを考える, (6)労働時間10時間未満, (7)毎日朝食を食べる, (8)ストレスを適正に保つ, を抽出した.同時に, この8つの健康習慣をいくつ守るかによって健康習慣指数(HPI)を算出した.2, 148人の勤労者における6年間の追跡調査の結果からは, 不健康なライフスタイルの人は, 慢性疾患の発症の割合が有意に高いことを示した.一方, 癌免疫力の指標の一つであるNK細胞活性は, 良好なライフスタイルの人で有意に高いことも明らかにした.遺伝的健康度は, リンパ球染色体変異の頻度(姉妹染色分体;SCE, 小核;MN)で測定した.その結果, 良好なライフスタイルを多くもつ人ほど, 染色体変異の頻度が有意に低かった.また, 不健康なライフスタイルの人で異常にIgEが高くなっていることも明らかにした.震災の被災者を対象にした調査では, 不良なライフスタイルの人ほど, また心的外傷後ストレス傷害(PTSD)傾向の強い人ほど, NK細胞活性が有意に低く, コルチゾールは有意に高くなっていることを示した.勤労者や高齢者のデータからは, 良いライフスタイルの人やヒューマンサポートの多い人ほど, 高い職場ストレスや身体的健康状態が良くないにもかかわらず, 高いQOLを示していたことを報告した.以上の結果から, われわれがライフスタイルをより健康的なものに変容させようとするのも, 個々人のいわば短い生涯のうちで, なるたけ大きな自己実現に向けての活動が, 健康であればあるほど容易になるからである.そのような意味からは, より健康的なライフスタイルは, 将来のさまざまな健康破綻への負荷に対する防御力, 耐性力, 抵抗力を示す資料でもある.
著者
関 明彦 瀧川 智子 岸 玲子 坂部 貢 鳥居 新平 田中 正敏 吉村 健清 森本 兼曩 加藤 貴彦 吉良 尚平 相澤 好治
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.939-948, 2007-09-15 (Released:2008-05-16)
参考文献数
130
被引用文献数
14 22

‘Sick house syndrome’ (SHS) is a health issue that closely resembles sick building syndrome (SBS) that had occurred in European countries. The aim of this review is to clarify the characteristics of SHS by reviewing previous reports rigorously. We propose the definition of SHS as “health impairments caused by indoor air pollution, regardless of the place, causative substance, or pathogenesis”. Cases of SBS are reported to occur predominantly in offices and sometimes schools, whereas those of SHS are usually found in general dwellings. In many cases, SHS is caused by biologically and/or chemically polluted indoor air. Physical factors might affect the impairments of SHS in some cases. It is considered that symptoms of SHS develop through toxic, allergic and/or some unknown mechanisms. Psychological mechanisms might also affect the development of SHS. It is still unclear whether SBS and SHS are very close or identical clinical entities, mostly because a general agreement on a diagnostic standard for SHS has not been established. Previous research gradually clarified the etiology of SHS. Further advances in research, diagnosis, and treatment of SHS are warranted with the following measures. Firstly, a clinical diagnostic standard including both subjective and objective findings must be established. Secondly, a standard procedure for assessing indoor air contamination should be established. Lastly, as previous research indicated multiple causative factors for SHS, an interdisciplinary approach is needed to obtain the grand picture of the syndrome.
著者
江副 智子 森本 兼曩
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.397-405, 1994-11-20
被引用文献数
3

Selyeによってストレス学説が唱えられて以来,さまざまな角度からストレス研究が行われてきた.ストレスは,身体疾患および精神疾患の重要な危険因子であるとともに,免疫能などの生体の防御力にも深く関連し,さらに転勤率などの社会行動面にも影響を及ぼす.衛生学,公衆衛生学の分野でも,近年ストレスは重要課題となっており,特に職域を中心としてさまざまな調査が実施されてきた.本論文では,従来行われてきたストレス評価法を,国内外の文献を整理し,ストレッサー評価とストレス反応評価に分けて概説する.まず,ストレッサー評価の質問票のうち,信頼性および妥当性が検討されているものについて概説し,さらに,障害者の家族や入院患者,看護学生などの特定の集団を対象とした質問票を紹介した.次に,職場におけるストレス要因を,1)仕事に固有の要因,2)組織における役割,3)昇進・降格,4)職場の人間関係,5)組織の構造と風土,および6)その他,に分類して概説した.ストレス反応については,1)ホルモンの反応,2)免疫学的反応,3)その他の生理的反応,4)心理的反応,および5)行動的反応に分類し,ストレスと血液生化学的指標との関係に関する研究結果やストレス反応の測定方法を紹介した.ホルモンの反応については,ストレスと血漿および尿中アドレナリン,血漿ノルアドレナリン,血漿および尿中コルチゾール,血漿ヒスタミン,サイロキシン,プロラクチンおよびテストステロンなどとの関係が調べられている.免疫学的反応については,急性および慢性のストレスとTリンパ球数,NK細胞活性,PHAやCon-Aに対するTリンパ球の反応,EBウイルスに対する抗体価,IgAやIgGなどの免疫グロブリン,補体などとの関係を調べた研究結果を紹介した.その他の生理的反応としては,冠血流量,血圧などの血行動態的指標,リンパ球のDNA修復,ヘモグロビンA_<1c>などとストレスとの関係に関する研究を紹介した.心理的反応に関しては,代表的な質問紙票を列挙するとともに,声の録音によりストレス,特に不安と敵意を評価する方法を紹介した.行動的反応については,その指標となるものについて簡単に触れた.最後に,われわれが行った,単一の質問によるストレスの包括的評価方法を紹介し,勤労者を対象に,その質問による自覚的ストレスと,精神健康調査票28項目版(GHQ-28)による精神的健康度,喫煙・飲酒・睡眠・運動・生活規則性などのライフスタイル,および交流分析のエゴグラムから抽出した性格要因との関係を調べ,その結果について述べた.それにより,自覚的ストレスが多いほど,精神的健康度が悪く,ライフスタイルの中では,特に多忙感,体調悪化,長時間労働,生活への不満,生活および食事の不規則,短時間睡眠を訴える者の割合が,ストレスの多い群で有意に高いことがわかった.また,性格要因の中では,完全主義と神経質の者が,ストレスを多く感じていることが明らかになった.以上のことから,人々のストレス度を把握し,メンタルヘルスの保持・増進を図るためには,血液生化学的検査値などの客観的な指標を目安にすることに加えて,本人の主観をもとらえて,多元的にアプローチする必要があると思われる.
著者
森本 兼曩 丸山 総一郎
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.241-251, 2001-04-01
被引用文献数
2

情報化社会, 高齢化社会の到来といった社会経済構造の変革, 疾病構造の変化などにより, われわれのライフスタイルは大きく変わろうとしている.このような現代社会において, 国民の健康意識は高く, 病気になって考えるのではなく, 健康な時期に将来発生するかもしれない疾病に対する一次予防の方法を積極的かつ科学的に考え, さらにQuality of Life(QOL)を高める具体的方策を追求していくことが, 緊急かつ重要な課題となっている.こうした問題に対するアプローチとして, われわれが必要と考えているのはストレスに強いライフスタイル, より健康的なライフスタイルへの変容に個々人が自主的, 自発的に取り組むことである.喫煙, 飲酒, 運動などのライフスタイルが, 心身の健康と関連性のあることをこれまでに報告してきた.われわれは, 勤労者, 地域住民, 高齢者, 阪神・淡路大震災被災者を対象に, 一般的健康質問票, 健診データ, 染色体変異, NK細胞活性, IgE, コルチゾールなどを調べた.われわれは, これまでの研究やBreslowの報告に基づき, 8つの健康習慣として, (1)喫煙しない, (2)適量飲酒, (3)定期的な運動, (4)7〜8時間の睡眠, (5)栄養バランスを考える, (6)労働時間10時間未満, (7)毎日朝食を食べる, (8)ストレスを適正に保つ, を抽出した.同時に, この8つの健康習慣をいくつ守るかによって健康習慣指数(HPI)を算出した.2, 148人の勤労者における6年間の追跡調査の結果からは, 不健康なライフスタイルの人は, 慢性疾患の発症の割合が有意に高いことを示した.一方, 癌免疫力の指標の一つであるNK細胞活性は, 良好なライフスタイルの人で有意に高いことも明らかにした.遺伝的健康度は, リンパ球染色体変異の頻度(姉妹染色分体;SCE, 小核;MN)で測定した.その結果, 良好なライフスタイルを多くもつ人ほど, 染色体変異の頻度が有意に低かった.また, 不健康なライフスタイルの人で異常にIgEが高くなっていることも明らかにした.震災の被災者を対象にした調査では, 不良なライフスタイルの人ほど, また心的外傷後ストレス傷害(PTSD)傾向の強い人ほど, NK細胞活性が有意に低く, コルチゾールは有意に高くなっていることを示した.勤労者や高齢者のデータからは, 良いライフスタイルの人やヒューマンサポートの多い人ほど, 高い職場ストレスや身体的健康状態が良くないにもかかわらず, 高いQOLを示していたことを報告した.以上の結果から, われわれがライフスタイルをより健康的なものに変容させようとするのも, 個々人のいわば短い生涯のうちで, なるたけ大きな自己実現に向けての活動が, 健康であればあるほど容易になるからである.そのような意味からは, より健康的なライフスタイルは, 将来のさまざまな健康破綻への負荷に対する防御力, 耐性力, 抵抗力を示す資料でもある.
著者
上り口 晃成 井上 宏 森本 兼曩
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.48-54, 2003-03-25
参考文献数
27
被引用文献数
7

本研究の目的は,唾液を非侵襲的に採取し,そのコルチゾール濃度を分析することで,歯科処置によるストレス反応に治療内容の詳細な説明と来院の繰り返しが与える影響を検討することにある.被検者は,専門的な医学的知識をもたない者を対象に本研究の主旨を説明し,実験協力の同意を得たボランティア18名(男性16名,女性2名,平均年齢20.3歳)を用いた.実験手順として,まず被検者を診療室に入室させ,実験の説明を行い,同意を再確認した.説明群には実験器具をすべて見せながら詳細な手順を説日し,非説明には実験の概略のみを説明した.次に,SpielbergerのSTATE-TRAIT ANXIETY INVENTORY(以後STAIとする)および不安に関するVisual Analogue Scale(以後VASとする)を記入させた.そして水平位にて歯科処置を行い,唾液を採取し,再度VAS、STAIを記録した.歯科処置として,□腔内診査,上顎中切歯部歯肉への浸潤麻酔,下顎歯列の超音波スケーリング,上顎のアルジネートによる印象採得を順に行った.統計解析の結果,コルチゾール濃度のCV値は,非説明群が説明群と比べて有意に高い値を示した.また,非説明群において第1日目のCV値が高<,第2日目にかけて減少する傾向がみられた.STAIの状態不安スコアに関しては開始時が終了時よリ,また第1日目が第2日目より有意に高い値を示した.不安に開するVAS値は説明の有無と来院回数間に交互作用がみられ,非説明群において第1日目が第2日目よリも有意に高い不安VAS値を示した.さらに,不安に関するVAS値と疼痛に関するVAS値はともに同一処置への来院の繰り返しによって低下することが示された.以上の結果から、歯科処置によって生じるストレス反応は,来院回数によって慣れが生じて減少するとともに,ストレスの軽減には詳細な処置内容の説明が有効であることが明らかとなった.
著者
戸田 雅裕 門田 和之 久保 和毅 森本 兼曩
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.383-386, 2004-11-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
7
被引用文献数
18 57

Objective: To assess the reliability and validity of a cellular phone dependence questionnaire (CPDQ) we designed.Methods: The CPDQ, a 20-item self-rated scale, was given to 168 healthy female university students (mean age, 21.7 years). Each question uses a 0 to 3 response scale; a higher score indicates greater dependence. The reliability and validity of the CPDQ were assessed by an internal consistency estimate and a factor analysis, respectively. Question scores were then summed to provide a cellular phone dependence score ranging from 0 to 60.Results: The reliability coefficient (Cronbach's alpha) for the CPDQ was 0.86. In addition, six significant factors were extracted by factor analysis for the 20 items of the CPDQ. The cellular phone dependence score showed a normal distribution (Kolmogorov-Smirnov's test), and the average (±SD) was 33.2±8.7.Conclusion: These findings suggest that the CPDQ is a useful scale for rating cellular phone dependence.
著者
垂水 公男 萩原 明人 森本 兼曩
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.269-276, 1993-07-20
被引用文献数
9 4

都市部の企業に勤務する21〜60歳のホワイトカラー(男子)を対象に,労働に起因する精神心理的負担と血圧との関連性についての横断調査を行った.高血圧を招来しうる可能性がある疾患を有するものを除外した570名について検討した.このうち,健康診断時の血圧値の変動が大きい109名を除いた461名を対象に,血圧区分を目的変数(正常血圧群: 386名,高血圧群: 75名)に,従来から指摘されている血圧変動要因である年齢,肥満,飲酒,喫煙,運動習慣,客観的な労働負担要因として労働時間,通勤時間,年次有給休暇取得,家族との同居,また主観的な労働負担要因としてKarasekのjob strainの10変数を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った.その結果,job strainは,従来からの血圧の変動要因や客観的な労働負担要因を調整した上で,統計的に有意なodds比を示した.しかし,その関連性は,job strainが低い場合に高血圧の頻度が高くなる方向で関連していた.その理由として,高血圧の家族歴に代表される個人特性が介在していることが推測された.一般的な理解とは逆に,Theorellは,高血圧の家族歴を有するものでは,外界の刺激に対する反応性が低い傾向があることを指摘しており,こうした個人特性が今回の結果にも関連していると考えられた.労働に起因する精神心理的負担は,最近問題になっている作業関連疾患の概念とも関連して重要であり,さらにこうした個人特性や客観的な労働負担を勘案した追跡調査によってその影響が検討される必要がある.