- 著者
-
垣花 京子
- 出版者
- 筑波学院大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
数学教育の中でIT活用が始まり20年以上になる.最近は誰でもどこでも,同じような環境でITの活用ができ,研究者の間では,数学教育で利用することで動機付けになり,その学習効果が示されている.しかし,あまり多くの人々に利用されていない.一方,関数に対して苦手意識が強い人も多く,関数と聞いただけで敬遠し,関数を利用して現象を表現したり,判断したりする機会に直面したとき,考えようともしない.この原因として,中学,高校では,1次関数,2次関数とばらばらに教えられ,面白さがなく,式操作中心になりがちで,難しいという印象だけが残っていることが考えられる(Steen, 1990, p.4).本研究では,このような原因を克服するために,人々が比較的使い慣れている表計算ソフトとソフト本体がなくても動的に図形の操作ができる環境を使い,いろいろな関数を動的に見たり,数値を操作したりしながら,グラフや図,式,数値を道具として使いこなし,関数に関する探求,問題解決ができるようにし,"関数センス"を育てるための統合的なアプローチを構築した.今までの学校教育とは,違った方向で,ITの活用により拡張できるところは拡張するよう試みた.成果物としてCD-Rに焼いた電子テキストとWebサイト(http://www.tsukuba-g.ac.jp/t/kakihana/kansu/)がある.これらは,それぞれの場面で,表計算ソフトExcelと無料でPlug inするだけで動的環境を実現できる図形学習ソフトCabri GeometryとCabri 3Dを使って関数の探求ができる.本研究で扱った教材は,ケーススタディやワークショップでの実施を繰り返しながら,改良を加えた.できるだけいろいろな形の関数に接することができるような場面を作り,数値を操作し,視覚的に変化を観察しながら関数の特性をつかみ,問題解決できる.