著者
夏目 淳 大野 敦子 山本 啓之 城所 博之 沼口 敦
出版者
一般社団法人 日本神経救急学会
雑誌
Journal of Japan Society of Neurological Emergencies & Critical Care (ISSN:24330485)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.22-26, 2019-08-23 (Released:2019-08-24)
参考文献数
5

救急・ICU管理において脳波モニタリングが有用な疾患として,感染などを契機に発症する急性脳症がある。「二相性発作と遅発性拡散能低下を示す急性脳症(AESD)」と呼ばれる急性脳症は,発症時は熱性けいれん重積と鑑別が困難で,数日後に二相目の発作群発が起こるとともに高度の大脳白質の浮腫が出現する。発症時のMRIでは異常がみられないため,早期の熱性けいれんとの鑑別のために脳波が重要である。またICUで鎮静下に治療を行うため臨床観察のみでは発作の診断が困難で,脳波モニタリングが治療の指標になる。近年は急性脳症に対して低体温療法を試みることが増えており,低体温療法中の脳波所見も知っておく必要がある。これらのICU脳波モニタリングにはamplitude-integrated EEGやdense spectral arrayなどのトレンドグラムが有用である。
著者
小川 昭正 度會 正人 中村 麗亜 大江 英之 服部 哲夫 城所 博之 久保田 哲夫 加藤 有一 宮島 雄二 久野 邦義
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.55, 2007

〈緒言〉小児における上室性頻拍はしばしば経験するが、乳児期に発症するものは急激にうっ血性心不全が進行し、重篤な状態となる。また年長児では、ときに再発が多く日常生活のQOLが障害される。近年小児でもカテーテルアブレーション治療が行われるようになり年長児の生活のQOLが改善され福音となっている。<BR>そこで、最近7年間に当科で経験した上室性頻拍症の15症例について臨床像、短期治療、長期治療につき検討した。<BR>〈結果〉乳児期発症は9例(男児4例、女児5例)、幼児期以降の発症は6例(男児4例、女児2例)であった。乳児期発症例はすべてが生後3ヵ月以内に発症していた。3例は初診時に著明なうっ血性心不全を呈していたが、残りの6例は、偶然に発見されていた。うち1例は胎内で一時頻拍を指摘されたが出生時は不整脈は認めず生後4日から上室性頻拍発作を発症した。急性期の治療は、1例は治療開始前に自然軽快したが、他の8例は digoxinの急速飽和とATP急速静注をおこない発作は治まった。 幼児期以降発症の6例の年齢は4歳から13歳で、発作時心拍数は毎分160から270であった。症状も腹痛や胸部不快感・動悸で、循環呼吸状態への大きな影響は認められなかった。薬物治療は、ATPの急速静注、又はATPとDigoxinの併用であった。乳児期発症の9例のうち非発作時の心電図から副伝導路の存在が示唆されるものは3例であった。発作予防薬は、digoxinが5例、digoxinとpropranololの併用が3例 頻回に再発した1例はdigoxin,propranolol,disopyramide の併用をおこなった。digoxinは血中濃度に注意して全員が内服した。予防内服の期間は 全例で8ヶ月~1歳までで、内服中止後 発作が再発した例は、なかった。幼児期以降発症例では、1例がmanifest WPWであった。発作予防薬は原則的には無しとしていたが、経過中発作が頻回になった2-3ヶ月間のみ、やむをえず予防内服を行った。2例では、薬物が必要な発作の頻度が高く、年齢が高くなるにつれて生活に支障を来たすようになった。そのため高周波カテーテルアフ゛レーションの適応と考え、施行したが、その後は上室性頻拍発作はなく良好な経過をたどっている。<BR>(結語)□乳児期早期の発症例では重症の心不全に陥る前の発見が重要でその後数ヶ月を良好な発作予防をすることが重要であり、年長児では頻回発作する例ではカテーテルアブレーション治療にもちこむことがQOL改善のため重要であることを再確認した。
著者
城所 博之
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.118-123, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
24

過去20年で新生児医療は超低出生体重児の生存率を80~90%にまで上昇させた. 一方で, 脳性麻痺や精神発達遅滞などの後障害は減少したとはいえない. また, 長期追跡することで, 就学後に学習上の, 行動上の, あるいは心理的な問題も高率に発生することが分かってきた. 最近のMRIを用いた研究により, このような高次脳機能障害はすでに新生児期MRIの微細な画像異常と関連し, 青年期のMRIでは海馬や前頭葉の容量減少と関連することが明らかにされた. 新生児期に受ける低栄養や低酸素, 感染・炎症といったストレスが未熟脳の正常発達を阻害し, 将来の構造的ならびに機能的異常をもたらすことが推察される. この点を具体的に明らかにすることが当面の課題である.