著者
堀向 健太
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.87-92, 2023-03-20 (Released:2023-03-20)
参考文献数
35

日本において1~6歳に即時型症状で発症することが多い魚卵アレルギーは,重要なアレルゲンである.イクラアレルギーが全体の約95%を占め,タラコアレルギー,シシャモの魚卵アレルギーの報告が少数あるにとどまる.魚卵は卵黄タンパクの前駆体であるビテロジェニンを構成するβ'-コンポーネントが主要アレルゲンと考えられている.イクラアレルギーは特異的IgE抗体価により食物経口負荷試験の陽性を予測可能と報告されている.一方で,タラコアレルギーの陽性予測には,イクラ特異的IgE抗体価とタラコ特異的IgE抗体価の比率が有用であるという報告がある.イクラ・タラコ以外の魚卵アレルギー以外の魚卵アレルギーに対する研究は極めて限られており,学校給食でしばしば提供されるシシャモの卵に関する検討も少ない.海外からは,最近,キャビアアレルギーの報告が散見されており,摂取状況による地域差があると考えられる.概して魚卵アレルギーの検討は不十分であり,今後さらなる研究の進展が期待される.

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著者
堀向 健太
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.749-757, 2019 (Released:2019-12-31)
参考文献数
36

アレルゲンとしての花粉を飛散させる植物は木本類, 草本類に大別され, 草本類としてイネ科のオオアワガエリやカモガヤ, キク科のブタクサ・ヨモギなどが知られている. アトピー性皮膚炎や食物アレルギーのある児は草本類花粉に対する感作率が高く, スギやヒノキ花粉に比較し飛散距離は短い草本類花粉に対する感作は, 周囲の植生の影響を強く受けることがわかっている. イネ科植物は共通抗原性が強く, 主要アレルゲンはPhl p 1やPhl p 5と考えられている. 一方, キク科花粉は属により抗原性は大きく異なり, それぞれを区別して考える必要性がある. そしてブタクサ花粉はAmb a 1とAmb a 11, ヨモギ花粉はArt v 1が主要なアレルゲンである. これらの花粉は花粉−食物アレルギー症候群 (PFAS) の原因となり, イネ科花粉は, Phl p 12, ブタクサではAmb a 8, ヨモギではArt v 3やArt v 4が交差抗原となると考えられている.
著者
堀向 健太
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.316-325, 2019

<p> アトピー性皮膚炎 (AD) が他のアレルギー疾患の発症リスクを上げることが明らかになってきたため, その発症予防と増悪予防が注目されている. そして皮膚バリア保護により経皮感作を防ぐという観点から, 新生児期からの保湿剤定期塗布によりAD発症リスクを低下させるという報告が増えてきている. しかし, 保湿剤の定期塗布のみでAD以外のアレルギー疾患も防ぐことができるかに関しては, 大規模介入試験の結果を待つ必要がある. 一方, 経皮感作は 「経湿疹感作」 ともとらえることができ, 皮膚の炎症病変に対する早期介入試験が感作を予防するかを検討するために現在進行中である. さらに積極的に経口免疫寛容を誘導する目的で, 離乳食早期導入による食物アレルギー発症予防の検討が報告されるようになった. しかしそこでも, 皮膚の治療を並行して行う必要性があることが判明してきている. 最近, アレルギー疾患発症予防に対し衛生仮説やビタミンD仮説に関しても知見が増えてきており, 多面的に考えていく必要性が出てきている. </p>
著者
堀向 健太 津村 由紀 山本 貴和子 正田 哲雄 二村 昌樹 野村 伊知郎 成田 雅美 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1543-1549, 2011-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
5

【背景と目的】重症アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis;AD)の治療を行っている最中,特にステロイド外用剤(以下ス剤)の連日塗布から間欠塗布へと移行する寛解導入期の終わりから寛解維持期の始めに相当する時期に,全身の皮疹や掻痒は改善しているにも関わらず,患者の掌蹠に汗疱様の水疱・丘疹が出現することがある.我々はこの病態を「AD寛解前汗疱様発疹」と称している.AD寛解前汗疱様発疹はス剤抵抗性の皮疹やアトピー性皮膚炎の再燃と誤解し治療が頓挫する危険性がある.そこで,発症率や患者の特徴について,後方視的に検討し,重症患者の治療上留意すべき現象として本邦初の症例集積研究として報告する.【対象と方法】2007年4月から2009年3月までに当科にADの治療目的に入院した89例を対象とし,発症年齢,AD治療開始後の発症病日,治療後の寛解までの日数,季節性,治療経過,AD重症度との関連,検査所見との関連を後方視的に調査した.【結果】AD寛解前汗疱様発疹は13例(14.6%)に発症しており,治療後の発症病日は16.7±10.4日(4〜32日),平均年齢は6.2±6.1歳(3カ月〜23歳)だった.入院時のSCORADは平均50.8±17.9(16〜91)であり,1歳未満を除いてSCORADを検討すると発症者が無発症者に比べ有意に高値であり,重症患者がより発症しやすいと考えられた.ス剤の局所的な強化により全例が軽快したが,治療後の軽快まで18.5±12.0日(4〜50日)を要し,概して難治であった.なお,汗疱は一般に夏に悪化するといわれているが,季節性は認められなかった.【結論】AD寛解前汗疱様発疹の病態に関しては不明な点が多く,皮疹が改善してきている時期に発症するために,患者が不安に感じる.標準治療の普及の障害になりうるため,その周知と検討が必要と考えられた.