- 著者
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堀向 健太
津村 由紀
山本 貴和子
正田 哲雄
二村 昌樹
野村 伊知郎
成田 雅美
大矢 幸弘
- 出版者
- 一般社団法人 日本アレルギー学会
- 雑誌
- アレルギー (ISSN:00214884)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.11, pp.1543-1549, 2011-11-30 (Released:2017-02-10)
- 参考文献数
- 5
【背景と目的】重症アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis;AD)の治療を行っている最中,特にステロイド外用剤(以下ス剤)の連日塗布から間欠塗布へと移行する寛解導入期の終わりから寛解維持期の始めに相当する時期に,全身の皮疹や掻痒は改善しているにも関わらず,患者の掌蹠に汗疱様の水疱・丘疹が出現することがある.我々はこの病態を「AD寛解前汗疱様発疹」と称している.AD寛解前汗疱様発疹はス剤抵抗性の皮疹やアトピー性皮膚炎の再燃と誤解し治療が頓挫する危険性がある.そこで,発症率や患者の特徴について,後方視的に検討し,重症患者の治療上留意すべき現象として本邦初の症例集積研究として報告する.【対象と方法】2007年4月から2009年3月までに当科にADの治療目的に入院した89例を対象とし,発症年齢,AD治療開始後の発症病日,治療後の寛解までの日数,季節性,治療経過,AD重症度との関連,検査所見との関連を後方視的に調査した.【結果】AD寛解前汗疱様発疹は13例(14.6%)に発症しており,治療後の発症病日は16.7±10.4日(4〜32日),平均年齢は6.2±6.1歳(3カ月〜23歳)だった.入院時のSCORADは平均50.8±17.9(16〜91)であり,1歳未満を除いてSCORADを検討すると発症者が無発症者に比べ有意に高値であり,重症患者がより発症しやすいと考えられた.ス剤の局所的な強化により全例が軽快したが,治療後の軽快まで18.5±12.0日(4〜50日)を要し,概して難治であった.なお,汗疱は一般に夏に悪化するといわれているが,季節性は認められなかった.【結論】AD寛解前汗疱様発疹の病態に関しては不明な点が多く,皮疹が改善してきている時期に発症するために,患者が不安に感じる.標準治療の普及の障害になりうるため,その周知と検討が必要と考えられた.