著者
斎藤 博久
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.2, pp.64-67, 2009 (Released:2009-08-12)
参考文献数
21

気道リモデリングには気道平滑筋の増生,杯細胞過形成,コラーゲンなどの細胞外基質成分の組織への沈着,気道上皮網状基底層の肥厚,血管新生などの要素が存在し,それらの多くは喘息治療標準薬であるステロイド薬により抑制されない.マスト細胞は気道平滑筋の増生や杯細胞過形成に非常に重要な役割を演じている.マスト細胞はIgE受容体を介して活性化されると脱顆粒のほか,非常に多くの遺伝子が転写されサイトカインなどの分子が産生される.このマスト細胞の活性化は試験管内におけるステロイド薬やタクロリムス前処理により部分的に抑制される.そして,この両者の薬剤を同時添加することにより,ほぼ完全に遮断される.気道リモデリングの進行に対する有効で安全な治療方法を確立するために今後のマスト細胞研究のさらなる進展が期待される.
著者
斎藤 博久
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.326-330, 2010-05-01 (Released:2011-09-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1

花粉症,喘息,アトピー性皮膚炎,食物アレルギーなどのアレルギー疾患が増加している.その原因は,アレルゲンの増加とともに,免疫システムの完成する前の乳幼児期の衛生環境の改善が指摘されている.ここでは,アレルギー疾患発症に関する免疫学的な機序について解説するとともに,その予防方法開発の鍵となる研究の動きを展望する.
著者
松原 優里 阿江 竜介 大矢 幸弘 穐山 浩 今井 孝成 松本 健治 福家 辰樹 青山 泰子 牧野 伸子 中村 好一 斎藤 博久
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.767-773, 2018 (Released:2018-07-18)
参考文献数
24

【背景・目的】日本における食物アレルギー患者数は年々増加しているが,食物アレルギー患者数の頻度分布(有病率)は,未だ明らかではない.本研究では,それらを明らかにし,新たな調査方法を検討する.【方法】政府統計等利用可能な資料を用いて,食物アレルギー患者数を推計する.【結果】乳幼児期では「自己申告」で約80万人,「医師の診断」で約30万~50万人,学齢期では「自己申告」で約60万人,「医師の診断」で約35万人と推計された.成人では,消費者庁が即時型症状の受診者数を調査しているが,対象が限定されており,患者数の推計は困難であった.【結語】乳幼児はエコチル調査に症状や診断の有無・血液検査を追加することで,年次変化を把握でき,学齢期では文部科学省の調査が有効である.成人期では大規模調査は少なく,国民健康・栄養調査や国民生活基礎調査などに付随した調査が有効である.一方で個々の情報源の抱える問題点も明らかにした.
著者
斎藤 博久
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.729-736, 2005-12-31 (Released:2010-08-05)
参考文献数
34

遺伝子が転写されるためには転写因子の存在のほか, 転写因子と結合する部位がクロマチンとして結合可能な立体構造をとる必要がある. このクロマチンの構造はエピジェネティックなメカニズムつまりDNAメチル化とヒストン修飾により調節されている. 従来, 遺伝子解析研究といえばDNA配列の個人差を研究する遺伝子配列解析と組織や細胞のmRNAを定量する遺伝子発現解析の2通りの研究手法が主流であった. エピジェネティック研究はこの2つの研究手法の中間に位置づけられる研究分野である. 従来の遺伝子解析手法では得られなかったアレルギー性炎症や組織リモデリングに関わる機序解明が期待できる.